テイルズ オブ シンフォニア ラタトスクの騎士

対応機種・周辺機器
Wii(ヌンチャク必須/1(〜4)人) / PS3
ジャンル
響き合う心を信じるRPG
著作・制作
(c)バンダイナムコゲームス/ナムコ・テイルズスタジオ 2003-2008

基本情報

 テイルズオブシリーズはアニメ風味のJRPG(日本産のドラクエタイプのRPG)のど真ん中という感じのビジュアル。
 しかし多くのJRPGと異なり、戦闘システムが対戦格闘的なアクションゲームとなっているのが大きな特徴だ。

 本作はゲームキューブで発売されたテイルズ オブ シンフォニア(以後、これを"前作"と呼ぶ)の2年後を描いた後日譚にあたる。
 WiiはGCのソフトも動作するので、ブラットフォーム選択として間違いないところだろう。
 なお、後にPS3でテイルズ オブ シンフォニア ユニゾナントパックとして前作と本作をまとめたものが発売されている。

 前作のキャラクタデザインは藤島康介だったが、本作の新キャラはバンダイナムコの奥村大悟が担当している。
 できれば主要キャラのデザイナーは揃えて欲しかったが、以前から脇を固めていた人のデザインということもあり、それほど違和感はない。

グラフィック

 プリレンダや手描きアニメのムービーによるイベントはなく、オープニングのみ手描きアニメが付いている。
 ちなみにOPは前作の day after tomorrow ではないが、ボーカルは前作と同じ misono だ。

 イベントはマップ上で展開されるリアルタイムムービーで、本編との違和感がなくて良い。
 フキダシタイプと字幕タイプがあるが、分ける意味がわからないのでフキダシに統一して欲しかった。
 イベントは妙に会話の間が開いてテンポが悪いし、ほとんど会話劇でスペクタクルシーンがなく、なんとも地味。

 キャラは前作に比べ頭身が上がっているし動きも自然なので、イベントシーンでの人形遊び感が減っているのは良い。
 Wiiのゲームとしてはチープな感じを受けるが、前作の雰囲気を壊さないという意味では正しい絵だ。
 実際、町やダンジョンの構造が共通していることもあって懐かしさを感じる。あまりに絵を変えてしまっては、この感覚は得られなかったろう。
 プレイ開始直後からクリア後の世界を旅しているような(実際そうだが)、不思議な感じがある。

 スキットと言われる会話シーンは、バストアップのイラストが枠に入ったものが、掛け合いを行う。
 画像データも含めて前作のシステムの使い回しで、予算低減及び前作との統一感の意味があるのだろう。

シナリオ

 前作はゲーム全体のボリュームも大きく、登場人物も用語も多かった。
 そのため本作からの新規プレイヤーには意味不明な部分が多いと思うが、前作をプレイしていると逆に新たな概念(用語)との整合性がつかめず、置いてけぼりを食らった。
 テイルズオブの造語に造語を重ねるシナリオ作り、ホントやめてほしい。

 新キャラの少年少女の二人を中心として、前作のキャラがゲストキャラとして入れ替わり立ち替わりパーティーに入る展開で、前作の多すぎるキャラを持て余すことがないように作られている。
 装備やレベルが固定なのは、パーティーに加わった時に装備を整える手間がなくて良いし、せっかく育てたキャラが抜けて損した気分になることもない。
 ただ、作戦などの設定は抜けるたびに初期値に戻ってしまうのはめんどくさいし、入れ替わりがなくなる終盤はレベルアップするようにして欲しかった。

 新キャラは前作のキャラを(誤解から)悪人扱いする。前作のファン的には納得いかないシナリオだ。
 後に誤解は解けるものの、何で最初から弁明しないのか理解できなかった。
 クリアに不要なサブイベントで割と重要な事情を語っちゃうのも、シナリオ全体の理解しづらさに拍車をかけているように思える。

 ヒロインの声は釘宮理恵で、(勘違い気味だが)しょっぱなから主人公にベタボレなので、甘々なことこの上ない。
 それ自体は好き好きだが、ゲーム全体の印象が釘宮ボイスに支配されているのは間違いない。
 あらすじは日記形式で、主役の二人が入れ替わりで書く形式だ…愛の交換日記か!! それはともかく、ちょっと二人とも緻密に書きすぎで食傷する。

 ボリュームに関しては感覚的には前作の半分以下だが、前作のボリュームは過剰だと感じていたので、量的にはむしろ好感触。
 しかし、前作の設定も新たな設定も使いきれておらず「えっ、これで終わり?」と思うのも確か。

ゲームシステム

戦闘システム

 前作と同様に、ターゲットとなる敵とプレイヤーを結んだ線上を移動するシステムを基本としている。
 その後このシステムはシリーズを重ね改良されているが、本作にはあまりフィードバックされてない感じだ。
 3年近く前に出たテイルズ オブ ジ アビスの完成度の方が高い。
 さらに言うと、平面を自由に移動できるフリーランが取り入れられていることを除けば、前作の方が完成度高いように思う。
 フリーランはガードと同じZボタンなので、ガードしようと思ったらレバーが入っててダメージ→即気絶となりがちなのは、ちょっとひどい。

 協力技や秘奥義も今ひとつ格好よさやバリエーションがなく退屈。
 衝突・攻撃判定、ジャンプの軌道などの設定が荒く、戦闘フィールドの端もわかりづらい。
 属性の影響を表示するエレメントグリッドもわかりづらい。
 このように悪いところも多いが、スピード感があるしコンボもつなぎやすいので、やっぱり面白いは面白い。

 AIの挙動はそこそこだが指示コマンドに適切な選択肢があまりなく、後先も仲間のフォローも考えず、勝手に戦ってたまたま勝ってる感じだ。
 ゲストキャラは、町やダンジョンでの操作キャラに設定できなかったり、戦闘時に操作する為には毎回切り替えなきゃいけないので、使いたいと思っていても面倒で使いたくなくなる。
 そもそも操作できることに気づかない人が多いのではないだろうか。

 あと、シナリオの都合上の負け確定戦闘で、割と長く戦えてしまうのは困る。

仲間モンスター

 モンスターを仲間にできるシステムは、テイルズオブでは初ではあるものの、他では女神転生ポケットモンスターなどで散々使われているシステムである。
 もともと「テイルズオブと言ったらこのモンスター」というのが存在しないくらいモンスターの存在が薄いゲームなので、仲間になってもさほど嬉しくない。

 モンスターを仲間にする条件は前述のエレメントグリッドが関係しているので、やっぱりわかりづらい。
 モンスターは操作できないし、モンスターだけが生き残った状態になるとゲームオーバーになるのも辛い。
 あと、デカいモンスターは視界を遮って邪魔。

 シリーズでおなじみの料理はモンスターに与える専用になっていて、それなりの意味がつけられている。
 特定の場所(ねこにん)でしか作れないのは不自由すぎ、セーブできるところでは料理できるぐらいの制限で良かったろう。

移動シーン

 本作はいわゆるフィールドがなく、町とダンジョンをメニュー選択(あるいは全体マップ上のアイコンのポイント)で移動する方式だ。
 地形は前作と同じなわけだから新鮮味もないだろうし、ストーリーを追うテンポも良くなるし、悪くない選択かと思う。
 ただ、シナリオの進行度によって行ける場所が大きく変更されるのは、あまりにシナリオの都合で行動を制限されている感じが強い。

 反応しそうな看板・扉などが調べるコマンドを受け付けないし透明の壁も多いため、探索感が薄い。
 前作同様ソーサラーリングというアイテムを使って行うパズルは、まずまずの出来。
 リングは属性変更できるものの、特定の場所で特定の属性への変更のみ、その場限りの感覚が強いところは前作譲り。

 フィールドの代替的に依頼選択型のクエストが用意されている。
 クエストを受けると本編と切り離されて、専用のダンジョンや戦闘シーンに移行し、終了するまで本編に復帰できない。

 シンボルエンカウント方式であるので敵を避けられる。
 レベル上げしていなくてもゲストキャラが強いし、モンスターはアホみたいに育ちが早いので、入れ替えないで育てているとゲストキャラは勿論、主人公よりかなり強くなる。
 加えてアイテム合成システムにより、積極的に素材を集めていなくても、ちょっと先の町に置いてある武器を1〜2種類先取りすることもできる。
 ということで敵を避けながらガンガン進めるし、進みすぎても少しモンスターを鍛えれば、簡単に敵の強さに追いつける。

操作その他

 全体的には流石のテイルズオブで操作感は良いが、細かい部分の作り込みが甘く、チクチクと不快感が積み上がる。
 例えば、後ろから話しかけた場合の反応でも、①即フキダシが出て振り返る、②振り返ってフキダシが出る、③高速で振り返ってフキダシが出る、のパターンが存在するようだが①に統一すべき、おそらく作品全体のポリシーがなく、その場その場で実装しているものと思われる。

 戦闘シーン以外は一応Wiiリモコンだけの片手操作もできるのは良かった。
 ただ、画面のポイントやリモコンを降るといったWiiらしい操作は、いかにもとってつけた感じで、それならクラシックコントローラとGCコントローラに対応してほしかったな、とも思った。

まとめ

 もともとシステムのツギハギ感が強いテイルズシリーズだが、本作は特に融合度が弱く感じた。
 割とシステムの根幹っぽいクエスト・仲間モンスター・アイテム合成は、なくても成立するぐらいの後付け感。
 これらは多くのゲームで使われていて、初体験ならまず間違いなく面白く感じることが保証されている鉄板のシステムだ。
 それだけにすでに体験済みである場合、本作のチープさが目につく。

 とにかくWiiのRPGが出揃わない時期にリリースするために、色々と端折った部分が見受けられる。
 響き合う心を信じるとか置いといて、いかに開発期間を圧縮するかが一番のテーマだったのだろう。
 ならば、称号・料理・スキルなどテイルズオブだから無条件に入る感じのシステムこそカットしてほしかった。これらは他のシリーズでも面倒臭いだけのシステムになっている。

 個々のシステム同士やシナリオとの融合度は浅いが、全体としてのバランス自体はそれなりに取られている。
 というか、バランスを取るために後付けでシステム増やしたという雰囲気。
 文句ばっかり書いているようだが、それなりに面白いのも確か。
 おすすめセレクションに選ばれたことを見ても、WiiのRPG不足の需要を満たし一定の評価は得られたと言えるだろう。

参考

 そこで結論。

RPG(カレー)はどんな素材を組み合わせてもそれなりに面白い(おいしい)が、他のRPGと比べると微妙