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手塚治虫の漫画を原作とした、剣劇アクション。
魔神に48の体の部位を奪われた百鬼丸は、からくり仕掛けの体を駆使し、魔神を倒して体を取り戻していく。
タイトルのどろろは、その百鬼丸を兄貴と慕っている大盗賊を目指す子供のこと。
キャラクタデザインに「無限の住人」の沙村広明、妖怪デザインに「平成ガメラシリーズ」の前田真宏、美術設定・題字に「ゼイラム」の雨宮慶太という豪華布陣。
声優も、杉田智和、大谷育江、大塚明夫、草尾毅、関智一、鶴ひろみ、青野武、小林清志などと、超豪華。これほど豪華なのは、アニメでもなかなかない。
強力な敵と戦って体の部位を取り戻していくという設定が、そもそもゲーム向きと言える。
同様な設定というか漫画「どろろ」を元にした、コナミ「魍魎戦記MADARA」(ファミコンRPG)も、なかなかゲームとして良くできていた。
目を取り戻すと画面がカラーに、足を手に入れるとダッシュができる等、単に数値が上がるだけでなく、ゲームシステムと連動した部位も有り、なかなか面白い。
ただ、肝心のボス戦は、攻撃のバリエーションに使い回しが多く、やや単調。48体もいるから、無理もないとも言える。
面白い攻撃をするボスもそれなりに存在するし、特に巨大な敵と戦うのは「仮面ライダー響鬼」を彷彿とさせ、手に汗握る。
基本は、KOEI「真・三国無双」のような3Dフィールドを走り回って出現する敵を切りまくるというもので、実に原作の雰囲気に合い、ハマっている。
フィールドは無駄に広い感もあるが、ダッシュによってそこそこ快適に移動できる。
さらに、攻撃力に劣るどろろパートが適宜挿入され、探索アクションとしても楽しめるようになっていて、展開が単調になることを防いでいる。
スラッシュという、画面に表示された順番にボタンを押す事で連撃が可能になるシステムが用意されているのだが、コレがもう間違える間違える。
プレイステーションの△×□○と位置の相関が記憶し辛い上に、○と□の表示が似通っているのが間違える原因の主なところで、×と○は通常は斬るボタンではないので、ここだけ役割が変わってとっさに対応できないのも問題。
斬るボタンを押すタイミングだけで判定するとかにして欲しかった。
ストーリーを進めていくと同時に、一度クリアした章にいる「隠れ魔神」を探して倒す事により、パワーアップする事もできる。
コレにより、プレイヤーの腕に合わせた難易度を自然に選択できるようになっている。
敵が強力すぎてストーリーが進まなくなったら、「隠れ魔神」を探して倒せばキャラクタが強化され、難易度が下がるという寸法である。
更に、ザコ敵をは章をやり直さない限り復活しないため、フィールドの移動はかなり楽。
と、SEGAとは思えないユーザーフレンドリーなシステムだ。
ただし最後の魔神は、もう他に魔神がいないので、ザコを切りまくって刀のレベルを上げる位しか強化方法がなく、かなりの難易度を持っているあたり、やっぱりSEGAだなと、妙に安心したりした。
また、なにげにサポートキャラのどろろが、地味に攻撃を当てて助けてくれる。どろろは倒れても何度も復活するので、極端な話、どろろにまかせて逃げ回っていても勝てる。…えらい時間かかるが。
他にも、どろろは怪しげな場所を教えてくれたり、周囲のアイテムを集めてくれたりする。特に3Dでは空中にあるアイテムは取り辛いのでかなり重宝。
なお、1人だとオートで動くどろろだが、2Pコントローラで動かす事もできる。これはSEGA「輝水晶伝説アスタル」を思い出した。ゲームとして成立しているかどうかよりも、2人いる時に1人が退屈しなくて済むという仕掛けと捉えた方がいいだろう。サポートキャラを人間がコントロールをする事もできるのは、わりと好きなシステムだ。
CGというのは、「綺麗で無機的」なものを描くのは得意だ。当然逆の「汚くて有機的」なものは不得意である。
本作では荒廃した戦国日本の風景が、非常に上手く描かれていて、雨宮慶太がテクスチャまで描いたんじゃないか、とか思っちゃう位。
ゲーム中のキャラクタも、沙村広明の味がそれなりに再現されていて格好良い。
どろろは一発で少女だと分かるようなモデリングで、妙にエロい。2007年公開の映画の柴咲コウは無いと思ったが、コレは有りだ。
イベントムービーは、ゲーム中と同じモデルが使用されていて、違和感なく進行する。
ただ、イベントシーンは、ほとんどストーリーを語るのに終始していて、ゲームのヒントを出すといった役割が殆どないのが残念。
基本はフリーに視点が変更できるが、場所によってカメラが固定されていて、百鬼丸が移動すると急にカメラ位置が変わる、これはSEGA「プルースティンガー」と同じ雰囲気で、正直アクション向きじゃない(ちなみに本作はワウ エンターテイメントが作ったらしく、「ブルースティンガー」を作ったクライマックスとは開発が別)
ただ、障子の向こうにシルエットで表示されるシーンは、 ゲームのルール的には酷いが、ビジュアルとして非常に格好良い。
ジャンプアクション的な操作が必要なところなんかは、コナミ「悪魔城ドラキュラ黙示録」みたいにサイドビュー固定にしたりした方が良さそうだが、そういうところに限ってフリーカメラだったりして、チグハグな感じがある。
右アナログスティックでの視点変更は、百鬼丸の首の向きと関係なく現在画面に表示されている方向の左右90度ぐらいしか見れないのは、なんともストレスがたまる。
3Dのゲームだとフィールドの端が分かりにくいので、柵を描くなどして区切りを付けるのが常法なのだが、なんの理由づけもなく突然進めなくなる「透明な壁」がなんとも遠慮なく登場する。
これをやられると画面の信用度が一気に低下するので本当にやめていただきたい。自然な区切りを描くのが大変なのは分かるが、目に見えるものが信用できなくなってしまって、ゲームが崩壊してしまいかねない。
個人的に手塚先生が生きてたら、続きを描いて欲しいタイトルNo.1の「どろろ」の物語が完結しているというのが、本作の売りのひとつかと思う。
わりと序盤は原作的に進むが、途中から原作から離れていっちゃうので、漫画原作の完結編というわけではないが、けっこう納得できるシナリオとなっている。プレイ途中でほったらかしている人は、ぜひ頑張ってエンディングを迎えて欲しい。
ただ、百鬼丸が「セーブできる」とか言っちゃうのは、雰囲気ぶち壊しだ。他にもセリフ回しが善人過ぎて、どうにも陳腐で偽物感が強い。REDのシナリオセンスは、ちょっと微妙だと再確認。
対して、どろろが「どろろアッパー!」とか言うのは胡散臭さが逆にアリだな、と思った。また、CGアニメーションの演技のぎこちなくて大げさなところが、特撮の子役(例えば「仮面の忍者赤影」の青影)っぽくて、好感度高い。
「期待以上のでき。こんなに豪華に作って資金を回収できたか不安になる」
2012-04-22