ダークセイバー

対応機種・周辺機器
Saturn マルチコントローラー対応
ジャンル
アクションロールプレイングゲーム
著作・制作
(c)CLIMAX 1996

 クオーターピューのゲームに人一倍こだわりを持つクライマックスが、ポリゴンを使ってさらに立体的ジオラマ空間を構築。
 パラレルシナリオでストーリーまでも立体的な意欲作。

 このゲームのウリの一つに、雑魚との戦闘を廃した全てボスレベルの戦闘、というのがある(コウモリがフィールドに出るが、あれは雑魚じゃないんかいな)
 この戦闘は対戦格闘ゲームと似た、一次元移動+ジャンプ、体力制・二本先取のシステムなのだが、ガードの上段下段の使い分け、投げ、コマンド入力必殺技等の対戦格闘では重要な要素が無く、キャラクターパターンが少ない事、クォータービューであるため距離感が掴みにくい事、攻撃ボタンが一つしか無い事と合わせて、相当に見劣りする出来であると言わざるをえない。
 その上、相手の起き上がりに遠距離攻撃を重ねておけば、殆どの場合永久パターンを作れるので、つまらないことこのうえない。
 だいたい、戦闘シーンが移動シーンと別に用意してあるのならば、移動シーンで攻撃ボタンがあるのがかなり意味不明である。
 どーも、対戦格闘ゲームは好きじゃ無いけど流行りだから入れてみました、って雰囲気。
 また、キャプチャーシステムという、戦った相手の能力(というより相手そのもの)を後の戦闘で使えるようになるシステムを持っているが、このシステム自体は面白いものの戦闘がつまらないので、戦闘システムと一緒に廃止したほうがスッキリしたと思う。

 パラレルシナリオは「弟切草」のようにガンガン分岐する訳では無く、大きく3本の(マニュアルには5本とあるが事実上3本)話を順番にやって行くと思って良い。
 1本のシナリオは2〜5時間程度であるが、何度もプレイさせて多角的に事件を見せる事により、シナリオに深みを持たせる事に成功している上に、ゲームシステムと融合してお互いの良さを高めている、多少粗さがあるもののかなり良い出来と言って良い。
 ゲームの冒頭の船のシーンのクリアタイムでシナリオが分岐する、というアイディアも実に秀逸である。

 パラレルシナリオという、同一舞台を別シナリオで何度もプレイするシステムとなっているので、ショートカット(近道)を探すのが重要になっている。この作業はマップがショートカットできるように上手く作られていることもあり非常に楽しい。

 ポリゴンで構成されたフィールドはかなり広く、奥の方まで作ってあり、特に終盤の城の空間の広がり具合は、ニンテンドウ64の「スーパーマリオ64」もかくやという程である。サターンで良くぞここまでやってくれた。
 しかし、重ね合わせの順番が狂ってしまう事が多く、後述の視点移動の不自由さと合わせて、何がなんだか良く判らなくなったりするし、特にズームアウトした時のポリゴン欠けが激しい。
 というわけで、画面表示プログラムは凄いんだか凄く無いんだか良く判らない感じになっている。

 画面構成は従来のクライマックスと同じクォータービューを基本とした、ブロック単位の記号化の進んだ作りをしているのだが、今回はポリゴンを使っているので無段階視点移動ができるようになっていて、位置関係を把握しやすくなっている。
 ただ、視点を動かさない場合、位置を掴めないのは以前の作品と同じなので、頻繁に視点を動かす必要がある。この時アナログコントローラーがあるとかなり快適である。
 また、視点移動範囲が自由自在とはいかず、基本的には一方向からしか見れないし、視点を動かしたまま移動することも(基本的には)できないので、いらいらする。
 これを逆手にとって、見えにくい(見えない)ところに入り口やアイテムを隠す手を多く使ってあったり、錯覚を利用したトラップも多く非常にいやらしいが、これを善しとするかどうかでこのゲームの評価は180度変わってしまうだろう。

 グラフィックは以前の「ランドストーカー」等と同じノリで描かれてしまっているので、見易くはあるもののポリゴンとの融和度は高く無い。オブジェクトの作りも悪く、特にポリゴンで作られた生物の出来はかなり悪い。
 ただ、後半になると急にこなれて良くなっているのが惜しい。

 アクションRPGとしては割合難易度が高いが、何度もプレイさせるシステムもあり、どんどん自分が上手くなるのを実感でき、そのあたりが気持ち良い。

 このゲームは商店が存在せず、アイテムの重要性が低く実際あまり種類も無いので、アイテム集め等の面白さがあまり無いのが残念。

 物凄くゲームゲームしたシステムに、監獄島での犯罪者どもを相手にするというハードな世界感が乗っかっているので、違和感が大きい。
 具体的にいうならば、ものを拾うと頭上にかがげ持ったり、テーブルやベッドは勿論人の頭にも飛び乗れてしまったりするし、腰の高さの段差を超える事もできない。そして、その男は友人を殺してしまった事に苦悩している。

 さて、このゲームはアン・ルイスが主題歌を歌っていてタイアップものになっている、他にもドラマCDを出したりラジオドラマをやったりメディアミックス的展開を積極的にやっているが、アン・ルイスのファンがこのゲームをやるとも思えないし、大体難しくってアン・ルイスは勿論ミュージ君だってクリアできねーと思う。
 ハッキリ言って失敗(アン・ルイスは好きだし歌もいいけどね)
 また、レンダリングCGによるムービーやパッケージは、このゲームの中身との遊離が激しいが、異様に良くできているのが惜しいというか悲しいというか。

 そこで結論。

「人を選ぶし色々やり過ぎて散漫だが、ゲームとしての出来は良い」


1998-10-03