ジョジョの奇妙な冒険 黄金の旋風

対応機種・周辺機器
プレイステーション2
ジャンル
黄金体験アドベンチャー
著作・制作
(c)2002 カプコン/荒木飛呂彦&LUCKYLAND COMMUNICATIONS/集英社

基本情報

 週刊少年ジャンプに長期連載され熱狂的なファンを多く持つジョジョの奇妙な冒険の第五部をアクションゲーム化した原作付きゲーム。
 絵を見て「おおっ」と思ったものの、店頭デモの出来がどうにも悪く、全然思ったように操作できずに…というか操作方法が全く分からずにゲームオーバーとなって、膨らんだ期待が一気にしぼんだ記憶がある。

 ストーリーデモとゲームシーンが交互に繰り返されて、原作を辿るという一本道な作り。
 アーケードゲームだったらともかく、家庭用ゲームとしては安直と言える作り。

ストーリー

 ストーリーは戦闘の前後に、漫画風にコマ割りされた絵がコマ毎にズームされ、フキダシ風の台詞付きの音声で紹介される。
 漫画としてもアニメーションとしても、どうにも中途半端、劇メーション並のがっかり感がある。いや、劇メーション良いところもあるけどね。

 ダイジェストになるのはしょうがないにしても、ナレーションに頼り過ぎ。
 正直、このゲームだけやっても、ストーリーは把握できないだろう。
 原作を既に読んでいる私でも、話の流れがよく分からなくなったりした。

 原作に熱狂的なファンが多い作品ではあるが、もっと大胆に省略やアレンジを加えて分かりやすいシナリオに仕立てて欲しかった。
 結構バッサバッサと切ってはあるが、切るだけ切って、切り口を上手く繋ぐところまではできていない、という感じ。
 漫画をゲーム化するにも、漫画を映画化するような「改変」が必要だったろう。
 そもそもメディアの特性が違うのだ、それ無しに傑作は作れない。

 もちろん、カプコンがゲームを分かっていないはずがなく、本作は単純に原作の筋を追ったものではない。
 ちゃんとゲームになるように、戦闘シーンは組み直してある。
 それでも、原作を再現しようという意識が強すぎて、ゲームとしては微妙なできになってしまっている上に、ストーリー部分との接続もあまり良くない。

 原作を再現しようという情熱は、削除したエピソードを音声ドラマという形でくっ付けていることからも伺える。
 単にゲームとして見ると、本編に出ていないキャラクタが突然出てくる、意味不明なオマケと化している。

ゲームシーン

 戦闘シーンは同社のビューティフルジョー(の方が後だけど)のように、アニメっぽいけど漫画に近い黒インクの手描きっぽいテクスチャを使った、漫画とアニメの中間的なグラフィックを3Dで作ってある。
 これはなかなか雰囲気がいいが、個人的には色がちょっと原色より過ぎて、チープに感じた。
 ちなみに、本作では「アーティストゥーン」と呼称している。…ネーミングがダサい。「マンガディメンション」の方はダサさはあっても格好良さもあるのに…SEGAの勝ち!! (なんのこっちゃ)

 システムは同社のパワーストーンのようにカメラ方向が固定の対戦アクション、といった雰囲気だが、対コンピュータ戦しかない。
 さらに本作はジャンプのアクションがないので(ジャンプの漫画なのに!!)、アクションゲームとしては多少淡白な印象。
 加えて、折角色々なアクションが用意されているのに、それらを駆使するよりパターンにはめて勝つ方が楽な作りで、勢い作業ゲームになりがち。
 舞台毎に登場するキャラクタが敵味方ともに変わり、クリア条件も変わるので、単調というほどではない。
 ただ、ミニゲーム的な割切りのあるステージが少なかった。PS版第三部は、ゲーム機としての機能制限があった分、思い切りもよかったが、本作では結局のところ対戦アクションというステージがほとんど。

 全体に、操作性をあえて高くせず、多少遊びにくくする事で難易度を出しているような調整で、カプコンバイオハザードを思い出した。
 例えば、ステージの端は特に説明もなく透明の壁があるので、自分の行動範囲が掴み辛い。
 スタンドモードへの切り換えが瞬時でないので多少テンポが悪く、敵の攻撃で割り込まれやすい。
 また、スタンドと本体の間に割り込まれて、一方的にダメージを受ける事もしばしば。などなど。
 操作の制限が面白いゲームを産むのも確かなのだが、本作の場合「単にイライラする」方向に流れてしまったようだ。

 原作に沿った行動を取る事で得られる「シークレットファクター」というポイントがあるのだが、これがどうにもどうやれば取れるのか分からないものが多すぎる。原作読んでるのに!!
 どーも、タイミングがシビアなようだ。
 シークレットファクターの発見を簡単にして、決定的なシークレットファクターを発見しないとステージをクリアできない、という方向に舵を切っておけば、別のゲーム性が出て、面白かったと思うのだが。

 どーも、原作にない事をする事を恐れ過ぎているような雰囲気が、全体にある。
 例えば経験値要素を加えて成長するとかしてもよかったのに。

まとめ

 ざっくり言って、PS版の第三部のスーパーストーリーモードが大好評であったのを素直に受けて、第五部をスーパーストーリーモードだけで作り上げたのが本作だ。
 その方向性は悪くない、しかし根本のゲーム部分の作りが甘く、全体としても締まりのない出来上がりとなってしまった。
 ゲームジャンルを「黄金体験アドベンチャー」と名乗っているが、それほどアドベンチャー的な謎解きはなく、細切れのアクションゲームという印象で終わってしまった。
 スーパーストーリーモードのオマケとして対戦モードが付いていれば、そこで練りこむ事で、本編のアクションシーンの練度はかなり上がっただろうと予測されるのに残念。

 ゲームとしてやるべき事は分かっているが、閃きで壁を破ることができずにマスターアップの日が来てしまった。という雰囲気。
「足りないのは分かっているが、時間がないッ!! まさか…ディアボロが時間をスッ飛ばしたのかっ!!」という感じだろうか。

 例えば、無駄無駄…やアリアリ…の「想像以上に想像通り」なところなど、実に良くできている。それだけに、これだけの素材があればもっと良い料理にできたろうに、と思わずにはいられない。

 そこで結論。

「頑張ったけど、成功はできなかった。ファンアイテムとしては合格(ベネ)

今思うと、店頭デモが全然思うように動かせなかったのは「鏡の世界」のステージで操作方向が左右反転していた所為…カプコン、ステージチョイスがおかしい!!!


2012-07-13