ジョジョの奇妙な冒険

対応機種・周辺機器
プレイステーション ポケットステーション対応
ジャンル
対戦格闘 + アクション
著作・制作
(c)カプコン 荒木飛呂彦&LUCKYLAND COMMUNICATIONS/集英社1998,1999

基本情報ッ!

 週刊少年ジャンプに長期連載され熱狂的なファンを多く持つジョジョの奇妙な冒険を、対戦格闘にした原作付きゲーム。
 レビュアーの私も好きなジョジョを、カプコンはどのように料理したのか。

 カプコンはストリートファイターZEROでリサリサもどきを出しヴァンパイアハンターでスタープラチナもどきを出し、サイバーボッツ フルメタルマッドネスでアヴドゥルもどきを出すと言う、会社挙げてのジョジョ好きである。
 私でなくとも「そんなに好きならジョジョのゲーム作れよー」と思っていたのではないだろうか。

 さて、そんな「荒木漫画は世界一ィィィ」と思っている人たちが、ついにジョジョの中でも特に人気の高い第三部のゲーム化に着手した。
 実はこのジョジョの奇妙な冒険 第三部は1993年にアニメ化もされており、スーパーファミコンでゲーム化(この時はコブラチーム)もされているタイトルである。
 ちなみにスーパーファミコン版は、第三部のゲーム化と言っていいんだかなんだか分からないっちゅーか、ジョジョですらねーだろ、もっと言えばゲームですら無いんじゃないか?みたいな正しく「奇妙な」ゲームになってたんだが…まぁそこはそれ(Google 検索: コブラチーム ジョジョの奇妙な冒険)
 ともかく、1998年にリリースされた本作は、原作ものとしてみると明らかにタイミングを逸している。

移植度はッ!?

 さてこのゲームは、荒木先生が書き下ろした新たなキャラクターも登場する事でも話題になった、アーケードゲームのジョジョの奇妙な冒険と、その続編であるジョジョの奇妙な冒険 未来への遺産をベースとしているが、その単純な移植ではない。
 そもそもストリートファイターⅢシリーズと同じCP-システムⅢで稼働しているアーケードゲームを、特にRAMサイズ的にスペックの劣るPSに完全移植できる訳も無く、移植と思って見ると特にパターンの粗さが目立つ。

 スタンドに至っては色が少ない上にパターンを拡大して使っているものもあり、粗さも際立つ。
 1キャラクターに人間とスタンドの2人分のパターンの容量が必要なので取られた苦肉の策だが、我慢できる程度にはなっている。気にならない人は全く気にならないだろう。
 そもそもアーケード版が、攻撃ボタンが3つということもあり、CP-システムⅢの割にはパターンが少なめなのが幸いして、スペックほどのグレードダウンを感じずに済んでいる(というか、移植を視野に入れて少なくした感もある)。

 操作感等は問題ないが、ジョジョの奇妙な冒険 未来への遺産で新しく出たキャラもいるのに、キャラクターの性能はジョジョの奇妙な冒険に近く作られており、なんだかヘンな感じである。
 色々と頑張っていはいるものの、正直な所、移植としてみると首を傾げる面も少なくない。
 対戦を楽しみたいならば、移植度としてはほぼ完璧なドリームキャスト版をお勧めしたい。

スーパーストーリーモードッ!

 しかしッ!そんな事は、このゲームにとって重要な事ではないィィッ!
 何とこのゲームは、第三部に登場する全てのスタンドが、このゲームにも登場するのだッ!!!!
ストリートファイターZERO3に、様々な条件をクリアしていくモードを付けて好評を博したカプコンだが、それを大幅にパワーアップ。
 対戦格闘も勿論あるが、ミニゲームを沢山用意し、セガシェンムーのQTEのようなタイミング入力アクション、コナミスナッチャーのようなガンシューティング風アクション、横スクロールシューティングゲーム等々てんこ盛り。
 ポケットステーション用のゲームも入って、満腹感十分。

 ただこのスーパーストーリーモードのインタフェースや、オプションやギャラリー等のメニューの作りがチグハグで、ごった煮の状態。
 これだけ作り込んだにも関わらず、おまけの雰囲気を漂わせているのは、実に残念。本作の内容としては、スーパーストーリーモードの方が本編なのに…

 贅沢を言えば、チュートリアル的なモードも欲しかった所だが、進化の袋小路に達してしまった格闘ゲームをストーリーと合わせるこのスタイルは、格闘ゲームの進むべき方向の一つを示していると言える。

ジョジョアビリティーッ!

 この格闘ゲームとミニゲームを混在させたスーパーストーリーモードには、ジョジョアビリティーポイントというものが設定されていて、見事なプレイをしたら高いポイントがつき、ポイントがたまるとギャラリー等の様々な隠しフィーチャーが出現する。
 何度も繰り返しチャレンジできるし、各評価項目は最高値が保存されるので、このポイントはある程度までは確実に上がるようになっている。そのため、経験値稼ぎ気分で挑戦欲を低下させる事無くプレイする事ができる。
 対戦の練習としてみても、練習の退屈さを感じさせる事無く実力を付けさせる仕掛けとして働いているのは、言うまでもない。

 さらに、スーパーストーリーモードで原作通りの事をやるとボーナスが入ると言うのも、光栄三国志の史実イベントのようで面白い。
 この条件は、原作を知っていればすぐ分かるのもあるが、原作を見ながらでも分からないものも多い。これは残念。
 それから、どういう条件でボーナスを獲得できたのかは、獲得時に表示される原作のセリフ等から類推するしか無いのも、ちょっといただけない。はっきり「時間切れで勝利」とか書いてほしい。

対戦格闘ゲームとしてはどうだッ!

 さて、本来のゲームモードである対戦格闘の部分も見てみよう。
 流石に多くの対戦格闘ゲームを送り出しているカプコンだけあって、ゲームとしての基本的なレベルが高い。
 原作付きのゲームが駄作決定だったのは、完全に昔の話となったといえるだろう。特に対戦格闘ゲームで、この頃から原作付きゲームのレベルが高くなったように思う。

 原作付きであるため、原作のキャラクターの能力を再現するという制限がある。このため、普通の格闘ゲームのキャラクターではバランス上やらないような能力を持ったものが多く、なかなか楽しめる。
 犬や鳥という人間に比べてかなり小さなキャラクターまでいるという、バラエティの豊富さだ。

 原作の能力の再現度も高く、ジョジョ好きのゲーム好きが対戦すると、原作の名台詞叫びまくりでプレイできること請け合い。

 ただコンピュータは、このトリッキーな能力に対処できず、特に設置型の攻撃方法を持つキャラクターに弱い。
 このあたり、サイバーボッツからの改善はそれほど見られない。

 ジョジョ第三部の目玉であるスタンドは、スタンドボタンで出したり引っ込めたりできる。
 スタンドラッシュ(チェーンコンボ)が使える上に攻撃力も上がり、削りも受けないため、スタンドを出していた方が強いが、回り込みができない、スタンドゲージが無くなるとフラフラになる、必殺技の隙が大きい等の欠点もある。
 原作の発明であり、以降の少年漫画に多大な影響を与えたアイディアであるスタンドを、なかなか巧みにゲームに組み込んでいる。

 ただ、コマンド入力後に続いて攻撃を入力してスタンドボタンを離すと発動するというプログラムタイプのタンデムアタックは、非常に使いづらい。
 スタンドボタンを押したまま他の操作をするというのに無理があるし、どうしても発動までに時間がかかり、的確に発動させるのは難しい。うまく決めると本体との同時攻撃でヒット数を稼ぐ事ができるのではあるが。
ストリートファイターZERO2のオリジナルコンボとの差別化や、スタンドの特徴を出そうとした結果ではあるが、ちょっと無理があるかと思う。

その他ッ!

 演出としては、原作の特徴である擬音を大胆に表示したりするのが非常に面白い。
 エンディングが音楽といい背景の月といい、なんだかヴァンパイアハンターとそっくりなのが、ちょっと気になる。まぁ細かい事だが。

 そこで結論。

「原作付き=クソゲーは常識、だがジョジョは逆にッ!!ゲームに新たなアイディアを生んだッ!!」

この結論のセリフ、第三部ネタじゃないじゃん。


2005-02-13