サクラ大戦3 〜巴里は燃えているか〜

対応機種・周辺機器
ドリームキャスト GD-ROM3枚組 ぷるぷるパック モデム ビジュアルメモリ
ジャンル
ドラマチックアドベンチャー
著作・制作
(c)SEGA / OVERWORKS / RED 2001

基本情報

 舞台を花の都巴里に変え、巴里華撃団、出撃!
 キャラクタは引き続き藤島康介氏、音楽も田中公平氏で、布陣は万全。えーと、シナリオも引き続きあかほりさとる氏です。
 セガが総力を込めて送る、大正ラブロマン戦隊、華麗に開幕。

 大まかには、アドベンチャーパート+戦闘パート+次回予告で1話、パート毎にアイキャッチも挿入され、全体でほぼ1クールで完結すると言う、前作までの構成を踏襲している。
 区切りがはっきりしていてテンポが良く、引っかかり無く気持ちよく話が進む。

アニメ

 オープニングの出来が非常に良く、手描きテクスチャを使った3Dモデルによる背景アニメ、脅威の回り込み、光武の自然なレンダリングと、ゲームレビューでアニメ的な評価してもしょうがない気もするが…、まとにかく素晴らしい出来だ。
 曲も新作だが、相変わらずのダサかっこ良い感じだ。個人的には「御旗の下に」とかいう大仰な歌詞は嫌いなんだが、ついカラオケで歌っちゃうという、耳に残る曲である。
 これが、3枚のディスク毎に別バージョンで収録されていると言う念の入れよう。

 ゲーム中に挿入されるムービーも、出来が良く感心する。
 しかし、戦闘マップで登場する人物がポリゴンによる3Dで描かれているのが、特に主要人物がポリゴン化されているとかなり違和感がある。人物は全てセル調の2Dでやってほしかった。
 アドベンチャーパートもポリゴンで人物を作るという選択肢もあるが、それはちょっと危険な選択である。DCでもナムコ「ソウルキャリバー」のレベルが実現できているので、全く無茶とも言えないが、コナミ「ときめきメモリアル3」のような惨劇を招かないとも限らない。
 そんな訳で、2Dによるキャラクタを使うなら、そこに最後までこだわって欲しかった。

 光武のレンダリング方法が、金属的なテクスチャを付けたものと、セル風のものとあり、今イチ統一されてないのが気になるが、サターンから長足の進歩を遂げたのがこの部分でもある。
 特にリアルタイムポリゴンでのムービーの光武の動きが、ものすごい事になっている。よくボトムズのATを越える寸胴メカで、あんな派手なアクションを…偉い。
 ただ、前作前々作もそうだが、ゲーム的にあんまり意味がないんだなー、明貴 美加デザインでカッコいいけど、このメカ。
 特にカスタマイズとかできる訳でなく、ヒロインたちが生身で戦っても、ゲームとしては全然問題なかったりする。

ストーリーとキャラクタ

 前作では、敵キャラクタに厚みが出た、と評価したが、本作はびっくりするほど敵の描写がぺらぺらで、味方の引き立て役以上の役割は無い。
 ただ、これは視線がヒロインに集中したという意味では、評価できることと言える。どういう方向性のゲームかということを考えれば、敵がぺらぺらだからダメとは言えないだろう。

 ヒロインは5人で、1作目よりも少ないが、これは単純なボリュームダウンというより、ちょうどいい数に落ち着いた、と見るべきだろう。
 メインの5人は、前作からの引き継ぎは一人もいない、完全新キャラという大胆な刷新が図られている。
 声優陣はベテランヒロイン声優(…なんか矛盾ある気がするが事実だしな)を、このシリーズで使い切る勢いで揃えてあり、この点に関しては盤石。
 流石に、前作までにヒロインの典型的なパターンは使い切った所もあり、ちょっとひねりの利いたキャラクタとなっていて、面白みはある。

 メインのヒロインは、巴里華撃団の団員であるのは勿論、レビューに出演し、その上にシスターであり、町中を機関銃を振り回して歩いている。まず、プレイヤーは、この無茶な設定を受け入れなければならない。
 そんなわけねーだろとか、無理ありすぎとか、ツッコミを入れつつプレイするという、余裕のある態度が必要だ。戦隊TVヒーローを楽しむように。

 いったん、舞台を変えてやり直したのが、良い方向に働いたと言えるだろう。
 そこの読者っ、「まぁ…巴里だし、メイドがいっぱい出るしな…」とか冷めた目で見るなっ!!

アドベンチャーパート

 リアルタイムに選択肢を選んで行くLIPSシステムは、さらにバリエーションを加え、アナログLISPという強弱を入力するものが追加された。
 バリエーションが多すぎる感もあるが、ヒロイン毎のエンディングを選択する好感度パラメータの調節も容易なので、気分で選択してOK。
 本作でLISPは、ゲーム的にどうこうというより、選択肢で気分を盛り上げようという方向に、強く振られたような気がする。
 例えば、「ぶっ壊しに行くぜ!」が盛り上がる人もあれば「みんなを助けるんだ!」が盛り上がる人もいるだろうが、これを選択肢にして、どの選択でも悪い結果は出ないなら、好きな方を選んだ方が気分が盛り上がると言う寸法である。
 これが、選択するたびに、とにかくゲームが先に進むというシステムと相まって、疾走感とも言える状態を作っている。

 町や建物の中の移動途中に別のキャラクタに遭遇する事がある。移動終点以外にもこのようなポイントを作る事で、アドベンチャーパートで色々なキャラクタに遭遇しやすくしてあり、ほとんど誰とも会わずにアドベンチャーパートが終わっちゃう、という事を避けている。
 また、ビジュアルメモリの方にポケベルのような通信が届き、確実にメインストーリーに復帰できるようにもしてある。
 そういう工夫が随所にあり、上手いなーと感心。
 アドベンチャーパートのシステムとしては、かなりの完成度に達したと言えるだろう。

戦闘パート

 戦闘パートは、移動がアナログ的になり、コマンドがボタン一つ一つに割り当てられ、アクションゲームに近い操作性を実現している。
 特に通常攻撃はテンポよく入力することで連続攻撃になり、気持ちいい。
 またこれらの操作には、ほとんど手先の器用さは必要とされない。
 思考ゲームとしての面白さはほとんど捨てて、操作の快適さで面白さを演出している。
 シミュレーションの戦闘から、RPGの戦闘に近づいた、とも言える。

 流石にそれではすぐに飽きてしまうが、勝利条件を毎回新しくする事で、作業とはならず新鮮な気持ちでプレイする事ができる。
 ただ、根本的な戦闘の面白さがある訳ではないので、2回目の新鮮味の無さは拭えない。

 とはいえ、そもそもシミュレーション的な戦闘パートが必要かどうか疑問。
 この戦闘パートを遊びたい(遊ばせたい)ゲームではないだろう、戦闘パートもLISPでやって良いと思うんだが。
 そっちの方が、派手な演出が可能だし、ドラマも盛り込みやすい。

その他

 ミニゲームは妙に出来がよいが、これが必要だったかは相変わらず疑問。
 単なる「おまけ」で、あるならそれも良いが、本編に挿入されるのは、赤信号につかまったような嫌な感じを受ける。本編にある以上、プレイヤーは「やらない」と言う選択はできない。
 商売的にも最初からキャラクター商品として、「サクラ大戦 オンライン〜巴里の優雅な日々〜」のような、別のタイトルで展開したほうが良いんではなかろうか。
 クイズなんかは、LISPの使い方の原型として意味もあるだろうが。

 インターネット接続機能を利用し、後から配布されるシナリオをダウンロードして楽しむ事もできる。
 それなりに面白い試みだが、最初から入れといてくれよ、って気もする。
 これもまた、商売的にも「ときめきメモリアル ドラマシリーズ」のように、別商品展開した方が良いだろうと思う。ファンとしても、むしろそっちが嬉しい気もする。
 ただ、DCとTVを付けっぱなしにして目覚ましに使うってのは、すごい使い方だな、と思った。これを家庭用ゲーム機でやっちゃうのは、新しい。

 DCで発売された1・2のデータがあれば、少し展開が変わるというのは、サターン版とDC版を二重に売ろうというあざとさを感じるが、許容範囲であろうか。

 インタフェースは、なかなか熟れていて、特に不満な所も見つからない。
 他の部分も含めて、とにかく快適なのが、本作の特徴である。

関連:サクラ大戦ドットコム

 そこで結論。

「ゲームにこだわらず楽しませよう、という姿勢は正しい、傑作だ」


2005-04-21