龍が如く3

対応機種・周辺機器
PlayStation3(1人)
ジャンル
アクションアドベンチャー
著作・制作
(c)SEGA

基本情報

 任侠ファンタジー龍が如くシリーズ、待望のメインシリーズ3作目!
 スピンオフである龍が如く 見参!(以下、見参)から1年だが、龍が如く2(以下、前作)からは3年ぶりの新作となる。

 今度の舞台は沖縄が加わり、都会とは一味違う任侠の世界も味わえる。
 渡哲也、藤原竜也、中村獅童、泉谷しげる、宮迫博之、宮川大輔、高橋ジョージ、という豪華キャスト。加えて矢沢永吉をOP・ED・挿入歌に起用した万全の体制。
 見参に続けて2008年日本ゲーム大賞フューチャー部門を受賞(…に若干政治力の高さを感じないでもないが)した本作、その内容はいかに。

システム

 シリーズお馴染みのQTEは、受付時間表示ゲージが割と見やすくなっている上に受付時間自体も長めなので、成功しやすくストレス少なめ。
 まだボタン位置を間違えての誤爆が発生しやすいが、かなりこなれて来ていると感じる。

戦闘

 見参から武器の錬成システムが導入され、それに伴い武器を持ち歩けるようになっている。
 全ての武器には使用回数制限があるので、基本は素手+そこらに落ちてるものを使うことには変わりない。
 また、拾った武器を次の戦闘へ持ち越すこともできない。
 とは言え、対ボス用に拳銃(チャカ)を沢山持っていくという最終手段が使えるという事でもある。
 セガも優しくなったものだが、ユーザが難易度落としたいと思った時に落とせるのは、とても正しい判断である。
 回復アイテムも沢山持てることもあってか、割とボスは手強く設定されていて緊張感があっていい。

 闘技場ではパートナーに指示できるシステムがあるのに、通常戦闘ではパートナーと連携取れないのは残念。
 戦闘に参加できない遥は、応援してくれてヒートゲージがちょっと上がる、といったフレーバー程度でいいので欲しかった。
 見物人の加勢やツープラトン攻撃とかの、前作にあった要素がなくなったのも残念。

 ゲージ技のヒートアクションも含め、割と沢山の技を使い分けて戦える。
 たまに入るQTEも、通常戦闘との地続き感があり好感度高い。
 沢山発生する街のチンピラとの戦闘も、次はあれやってみよう、と考えながらやれるので作業感は少ない。

 通常移動と戦闘でゲームモードが切り替わっているものの、本作はローディング画面を挟まずに戦闘に突入するので没入を妨げない。
 そこらを歩いている人々が戦闘開始までに野次馬となって人垣を作るのがリアルタイムに行われるのも面白い。
 完全にシームレスと思わせて、敵と接触し会話が始まった瞬間にカットを切り替え、戦闘用の場所にしれっと移動しているのがまた上手い。
 それに、たまにビル全体といったかなり広い空間が戦闘フィールドになる場合があり、その場合はほぼ完全に戦闘と移動がシームレスとなる。

 本作ではチェイスという鬼ごっこ要素が加わり、これがレースゲームみたいで結構楽しい。
 チェイスを競技化した感じのミニゲームをこなしたりしてある程度はキャラ強化できるが、不得意な人には若干厳しい難易度かもしれない。
 個人的にも唯一コンティニュー使ったのがバトルではなくチェイスだった。

ミニゲーム

 本作のミニゲームは定番のカジノゲームや賭博をはじめ、ビリヤードやダーツ、将棋・麻雀、バッティングセンターやカラオケ(リズムゲーム)・ボウリング・釣り・ゴルフといったレジャーまで大量に取り揃えてあり、それらを集めて一本のバラエティゲームパッケージとして成立するレベル。
 ゴルフなど普通にホールを回れるので、昔ならこれだけで十分商品になるレベルだ、怖い。
 パチンコ・パチスロが無いのは世界観的に若干残念だが、ゲームセンターにはUFOキャッチャー・シューティングゲーム・クイズゲームが取り揃えられている。

 そして本作の白眉たるキャバクラは、グラフィックもパワーアップし、完成の域に達しつつある雰囲気。
 またキャバクラ経営の通称「キャバつく」は、キャバ嬢の衣装・化粧・アクセサリなどを細かくプロデュースでき、キャラクタ作成の面白さがあるし、クオリティ高い自分好みの美人の顔が目の前にあるだけで、ちょっと幸せな気分になる。
 そろそろ、スピンオフで龍が如きキャバつくを出す気じゃないかという充実ぶりだ。
 なお、本作にホストクラブは出るものの、残念ながらプレイヤーはホストになれないし、ホスト遊びもできない。

 これだけ充実させておいて、ミニゲーム無視してもゲーム本編に特に影響はない、という割り切りが偉い。
 一応、金が手に入るとか、景品でちょっとしたアイテムが手に入るとかはある。

ストーリー

本筋

 前作までで「務所帰りで変わってしまった人や街」をはじめとした、任侠物の定番は割とやり切った感があった。
 そこで本作の主人公は、沖縄で養護施設(昔風に言うと孤児院)を経営する、顔は怖いけど優しい桐生さん、という役回りとなっている。
 ヤクザはヤクザでも仁義なき戦いではなくフーテンの寅さん、任侠ものではなく人情ものになった感じだ。

 ただし、従来の巨大組織の陰謀も養護施設の日常と並列に存在し、2本分の企画を無理に1本にまとめたような座りの悪さを感じる。
 もう陰謀とかの話は止めちゃうか、せめて日常系の話は全部サブストーリーにするかして、物語を整えて欲しかった。
 人死にが出そうな抗争を止めに行きたいのに、子供のいじめ問題の対処を済ませてからでないと行けないとか、気持ちの持って行きどころに困る。

 根本的には、すごいヤクザを倒して次にもっと凄い敵としてCIAを持ってくるんじゃなくて、「もっと凄いヤクザ」を持ってこないとダメだろう。
 風呂敷を広げた分だけ濃さが減って、薄味のチープな雰囲気になってしまった。荒唐無稽にしても、サイボーグヤクザとか出て来たほうが、嬉しかったんだが…。
 またシナリオ全体に説明ゼリフが多く、暴れるための言い訳を延々聞いてる感じで辛いし眠いし、ムービーの一時停止できない(一応PSボタンでできるが説明書に記述なし)のもマイナス点。

サブストーリー

 以前からそうだったが、呆れるほど大量にサブストーリーが発生する。
 切れ目なく次のストーリーが街のどこかに用意されているような感覚で、供給不足感は一切ない。

 本作からは宝箱の役割をするロッカーの鍵が高い場所に置いてある場合があり、視点変更で見つける必要がある。
 サブストーリーのイベントシーンに、いい感じにキラッと光る鍵が入るようなカメラアングルが用意してあるのがヒントの出し方として上手い。
 ひたすら視点変更して探さなくても、ある程度は別のことやってれば探し出せる訳で、面倒臭さをかなり軽減してある。
 先に見つけていれば、そこはもう取ってるんだよーん、と優越感も持てる。

 見参からの要素である天啓は、特定の場所で発生するQTEを成功させ、最後に選択肢から正解を選ぶと、新たな技が手に入るシステム。
 住人が繰り広げる面白行動のムービーと、それを写真ブログにアップした時の桐生のコメントの面白さで、探索および取得のモチベーションが上がった。
 何しろ、見参でのムービーは特に面白くもすごくも美しくもなかったので、やる気がいまいち起きなかった。
 贅沢を言えば、天啓だけではなく、普通に視点変更しているときにも写真を撮りたかった。

 それから、賞金稼ぎのシステムも見参から導入されている。
 気分転換的に積極的に強めの敵に挑戦できるし、逆に達成しなくても特にペナルティはないので、いいスパイスになっている。

キャラ

 渡哲也の獲得に成功したから無理やりハメ込んだ感じのキャラは、全体をチープに見せてしまった。
 無理に本筋に絡めるため、推理小説で「やってはいけないトリック」の筆頭みたいなやつで入れるより、回想で出せば良かったのでは?

 一見、釘宮理恵の演じる遥という少女が任侠の世界の癒し的存在として配置されているように見えるが、真の癒しキャラは藤原竜也演じる力也。
 アニキアニキと言って桐生の後ろを付いてくるの、最初に見たものを母親と信じるヒヨコ(インプリンティング)の趣があり、藤原のちょっと情けなさを感じさせる声が抜群のハーモニーだ。
 喧嘩になって大柄なチンピラを投げようとジタバタしてる力也を眺めたり、力也を連れて浜辺を走る(家の前に浜があるのでいつでもできる)だけでも小一時間過ごせるね!!
 要領を得ないメール、ドンキでの買い物、熱い沖縄LOVE、全てが愛おしい感じだ。

 遥もちょこちょこ付いてきて、すきあらば手をつなごうとするの可愛いが、若干あざとさの方が優っている感。
 なお、他には伊達さんを連れ歩けるシーンがちょっとだけある。
 立場としては荷が勝ちすぎた感はあるが、大吾先輩大好きインテリヤクザ峯くん(中村獅童)はいいキャラだった。
 贅沢を言えば連れて歩いて、時々ケータイで「その株は全売りだ!」とか連絡してるのを眺めたり、人を助けて「四代目、アンタは甘いんですよ」みたいな憎まれ口叩かれたかった(笑)

 人気キャラとして続投の真島のアニキの狂犬感が薄れてしまったのは残念。
 その他、キャラに限らず、前作までのお約束的なやつをとりあえず配置した、という雰囲気のものも多く、ファンサービス的に嬉しい面もあるが、自家中毒気味なのがちょっと心配。

 登場人物が多いので、人物相関図が付いているのはいい。
 シナリオが進行した時の記述内容の変更とか作るの面倒だとは思うが、人物が多いゲームでは必ず採用して欲しい。
 さらに、ゲーム内ゲーム的に推理アドベンチャー的なサブストーリーも用意されていて、それ専用の人物相関図もある。
 推理ゲームとしては単純だが、かなり面白かった。このシステムで神宮寺三郎とかJ.B.ハロルドみたいな探偵ゲームの新作作って欲しいぐらい。

グラフィック

 沖縄は眩しい南国の感じがよく出ているし、東京の空気感もよりリアルになった。
 松屋などの実際の店舗が再現されていることもあり、ここ実際に通ったことあるよな、みたいなデジャブ感がある。

 ただし、各所にあからさまに透明の壁があり、突然通行不可になっているのは腹立たしい。
 少々不自然でも柵の類を置いて欲しいし、せめて前作の通行不可マークの表示が欲しかった。

 人物もかなりリアルになっているが、不気味になることなく自然な感じだ。
 なお、見参で採用された俳優の顔に似せたモデルをゲーム内で使う手法は取られていない。

その他

 本作はシリーズとしては初のダウンロードコンテンツに対応しており、発売から毎週計8回に渡り、アイテムや衣装、ミニゲームの二人プレイ化などの新規データが無料で提供された。
 なお、のちに出た廉価版はダウンロードコンテンツとして提供された部分があらかじめ収録されている。

まとめ

 ミニゲーム・天啓・ロッカーの鍵・サブストーリー・賞金稼ぎ(ヒットマン)・飲食と極めてバランスよく配置されて退屈せず、作業感も少ない。
 戦闘もアイテムや技の選択肢が広がって面白く、血の表現を代表としてエフェクトも向上して本当に痛そう。
 タイアップの実店舗や実商品の扱いも多く、リアリティと親しみやすさを高めており、龍が如くブランドの信頼をシリーズを通して育てて来た成果がしっかり現れている。
 沖縄という舞台も加わり、養護施設の子供達もいて、殺伐一辺倒ではない心地よい空間も増えた。
 まだ細部に統一感がなかったり粗かったりするインタフェースだが、アイテム整理は普通レベルの作りになり遊びやすくなった。

 ただ、任侠ものとしては出がらし感もあり、メインのストーリーの安っぽさが鼻につく。
 メインストーリーは複雑な設定を使わず、キャラ人気を中心に任侠ものの定番を繰り返しやりつつ、システムの方で面白さを出していったほうがいいんじゃないかと思う。
 状況もキャラの行動も長々と説明されるけど理解できず、ボンヤリしたまま話が進んで、スッキリしないまま終わってしまった感じだ。

参考

 そこで結論。

さらにシステムが練り上げられた傑作。藤原竜也の演技とYazawaの歌に泣け!