グランディア エクストリーム

対応機種・周辺機器
PS2
ジャンル
RPG
著作・制作
(c)ゲームアーツ/エニックス/藤原カムイ 2002

基本情報

 ゲームアーツがドラクエ・FFに並ぶRPGを作ろうと全力で取り組んだシリーズ3作目。
 前2作はセガおよびESP(複数のゲーム会社からなる互助会的組織)の全面協力で作られていたが、本作では発売元をエニックスに変え、外伝的位置の作品を出すこととなった。

グラフィック

 …なんというか、マップのテクスチャもキャラのモデルも、なんともチープな雰囲気。

 ひたすらダンジョンに潜るタイプのゲームにもかかわらず、ダンジョンの作りがしょっぱい。
 画面中の情報量が少なく、本来欲しいマップを3倍ぐらいに薄めた印象。
 その上に暗すぎるとか側面と上面の区別がほとんどないとか、テクスチャの作りが悪く、位置や方角を見失いがち。
 結局、端に表示される平面マップを見て移動した方が快適。
 操作できるものにアイコンが表示されるのも、親切というより、それが出なかったら仕掛けに気付かないという、無理矢理なシステムに思えてくる。
 これらは前作までもあった問題だが、より悪化しているようだ。

 キャラのモデルが戦闘シーンの使い回し(これ自体は統一感があって良い)なので、アップに耐えきれない。
 ローポリならロングショットで押し切るか、構図・アングルの工夫で密度を出すかしないと場が持たない。
 本作はアップを多用しているのに口パクも無く表情の変化もほとんどない上に、凡庸なアングル…観てて辛い。

 キャラデザインが1980年代(古い)にはロリコン漫画ブームの一翼を担い、ドラクエの漫画化でも成功を飛ばした藤原カムイなのに、全然魅力的に感じない。
 何せ、ゲーム中の絵がメッセージウィンドウに表示される顔アップも、ポリゴンモデルも、まったく藤原カムイの絵に似てない。
 …なんのためのキャラデザインなのか? これでは46億年物語 はるかなるエデンへの使われかたの方がまだマシだ。
 既にできあがっていたデザインを、パッケージとマニュアル用に藤原カムイがリライトした、と言われると凄く納得するが、実際はどうなんだろう。

 町(村)に関しては、以前のシリーズから伝統のそばを通ると反応がある動く背景が楽しいが、調べるコマンドに反応しないので、結局ゲーム的には静止画と同じで寂しい。
 拠点の村はウィザードリィのように全部メニューで済ませてくれた方が嬉しかった。

シナリオ

 酷い。前作や前々作との繋がりがなくて、むしろホッとした。

 オープニングで延々チープな芝居で状況が語られるが、精霊暴走なるものがなんなんだかよく分からず…。
 特に主人公の言動が、ほとんどだだをこねてるようにしか思えず、敵役のクロイツ君(CV:子安武人)の方が説得力があり、なんともダンジョンに赴く気力が湧きづらい。

 キャラがそれぞれ背景を持ってそうなんだけど、主人公も含めてほとんど全く語られず。
 序盤の何回かは「オレを連れて行け」ってキャラが出てくるが、連れて行っても特にイベントもない。
 初期の3人から、いきなり2つめのダンジョンで大したイベントも無く7人に増える上に、前述のように特に後で語られることもないので、全くキャラが掴めず。
 最終的にはさらに1人増えて8人となるが、パーティーの最大人数である4人で構わないんじゃないか、という位キャラが薄い。

 ゲーム的に不思議のダンジョン的なRPGなのに変にシナリオを付けようとして盛大にコケた感じだ。
 そもそものシナリオはもう少し練られていたのだろうと思うが、カットの思い切りが悪く、なんだか分からない部分だけ残っちゃった感じ。
 シナリオ部分は、全部なかった方がいいゲームになったろうことは間違いない。
 豪華キャラデザインおよび声優陣の無駄遣い!!!

戦闘システム

 この戦闘システムがグランディアシリーズのキモだ。
 行動可能となるまでゲージが時間で進行し、コマンド入力状態になりゲージの進行が停止、そして入力したコマンドに従ってキャラがリアルタイムに戦闘を行うという半リアルタイムバトルだ。
 コマンド入力時間に制限は無く、反射神経的能力は一切必要としないのに、画面上はアクションゲームのような映像が展開される。
 昔からのRPGファンからすると、夢のようなシステムと言える。

 だいたい攻撃力や防御力を上下させるステータス変化系の魔法・技が有効なRPGは名作の傾向がある。
 本作もその例に漏れず戦闘に関しては「名作と言って良い」
 特に行動ゲージに影響する系の魔法の有効度が高く、システムを活かし切っている。素晴らしい。
 これは敵にステータス変化系を使われると途端に厳しくなることを意味し、緊張感と作戦(特に行動をキャンセルさせること)の重要性が産まれている。

 イベントだと酷い絵や動きだが、戦闘シーンだとその荒さがテンポの良さキレの良さに繋がっている。
 また、エフェクトの絵もかなり格好いい。
 ダンジョンの移動シーンから戦闘への切り換えも一瞬だし、魔法や技能の演出も前2作の冗長にすぎる上に統一感もないものに対して、読み込み時間を感じさせないテンポの良さと、全て戦闘シーンとシームレスにリアルタイムで描画され統一感もあり、大改善されている。

 いくらコマンド選択時に時間が停止するといっても、そこで操作を手間取るようだと台無しだ。
 本作からゲージが円形になって全体の戦況を把握しやすくなっているし、コマンド選択も縦に並んだアイコンの左右に常に良く使うコマンドが配置されるなど、インタフェースも熟れていてストレスなく操作ができる。

 他にも沢山褒めたいところはあり、戦闘シーンのできの良さは、古今東西のRPGの中でもトップクラスといえる。

ゲームシステム

 基本システムは前作のグランディアⅡを踏襲しており、成長部分が付け替え可能なマナエッグとスキルブックに分散しているので、比較的キャラの入れ替えに強いとか、成長曲線が波打って飽きにくいとか、いろいろ素晴らしいシステムだ。

 マナエッグは全部で40種類程度と、合成で作られるアイテムとしては少ない部類だが、ボーナスポイントが付くなどの個別の違いがあってバリエーションの少なさを感じさせない。
 このくらいの種類が材料集めとしても合成パターンを覚えるにしても、ちょうど良い量かもしれない。

 その他、ダンジョン移動時に構えると移動が遅くなるが不意をつかれにくくなるシステムも、シンボルエンカウントと相性が良く、道中の退屈感を減らしている。

 ただ、ダンジョンに潜って帰ってくるまで1時間以上かかることも珍しくないのに、途中にセーブポイントがなく、中断して現状を保存するオプションもないのは、かなり酷い。
 積極的に強い敵と戦った方が面白いのに、全滅したときのペナルティが大きすぎるので安全策を取り、結果として戦闘の面白みが薄れるという面があるのは残念。

インタフェース

 拠点の村から出る際に、管理人のおじさんに話しかける必要があって、そこで[外へ出発する]を選ぶと「お休みください」とか言われて休息が入った後に外に出る。…遷移おかしいだろう。
 外に出る前に確実に回復させたいのだろうが、余計なお世話感が半端ない。
 万事この調子で、いちいち指摘してもつまらないレビューにしかならないので細かくは言わないが、戦闘シーンと全く感触が違う酷いインタフェースが戦闘以外にはあふれている。

 あ、セリフ表示についてだけ書かせてもらいたい。セリフ表示のスピード設定ができない上にセリフが表示が遅い。そして音声が付いているセリフはスキップできない上に、音声が終わったら勝手に次のセリフに切り替わる…酷い!

 そこで結論。

戦闘だけは名作、その他は駄作