ロングレビュー アニメーション編
祝え! 新たなるアニメーションエディタの誕生を!
と、仮面ライダージオウのウォズ風味ではじまったRPGツクールMV(以下MV)ロングレビュー。
今回はアニメーション機能を取り上げる…のだが、ほぼ愚痴みたいなのしか書いてないから読まなくていいよ(笑)
で、冒頭で何を祝っていたかというと、どうやらツクール次回作RPGツクールMZではアニメーション機能がオープンソースのエフェクト作成ツールEffekseerを基本に刷新されるということ。
つまり「いくらなんでもこれより酷いのは作りようがないだろう」というMVのアニメーション機能が全面的に捨てられることを意味している。
最悪ツクール側のUIがMVより悪くなっても、外部ツール(無料)で作ったデータを取り入れ可能なようだ!
これを寿がずにいられようか!
というわけで、今回のレビューはほぼ愚痴なのだっ!!
いや、今までのもそうだろって意見も分かる。確かに前回も「最悪だ最悪だ」って言ってた。
しかし最悪を突き抜けた先に見えたのは、さらなる惨劇の現場だったのだ! ででーん!!
見よ! この凝縮されたダメUIの数々!!
MVには、キャラや背景のアニメーションとかではなく、主に戦闘中や(ゲーム的な意味での)イベントの際の画像効果として使うためのアニメーションを作成する機能がついてくる。
そして、MVにありがちなダメUIパターンもほぼ漏れなくついてくる。
そのため図らずも、アニメーション部分のレビューをすることで、最初に行った全体のレビューのおさらいをすることになっている。
アンドゥがない
アニメーション機能は本当に褒めるところがない。
無理に褒めようとすると「アニメーションが作れる」みたいな言葉しか出てこない。
そんな料理食べて「お腹減ってたのが治った」みたいな感想は流石に必要ないだろう。
一つ褒められるのはカンダタが蜘蛛を助けたレベルだが「たぶんMVで唯一アンドゥだけでなくやり直しがある」のだ、偉い!!
でもできるのはセルの編集だけで、フレームの編集など他の箇所はアンドゥすらできない…はっはっはー(乾いた笑い)
ヘルプに記述なし
ヘルプに「パターン画像が[パターンパレット]に表示されます」って書いてあるけど、パターンパレットってどこのことだ?
説明してない単語いきなり出して、公式のヘルプが僕を挫折に誘うよ。
一通りヘルプを読めば、たぶん下の方にアニメーションパターン画像が並ぶやつのことだとは思う。
しかし、パターンパレットの説明はあっても、どれがパターンパレットなのか説明してないので、非常にもやっとした理解のままヘルプを読み進めなければならない。
重要な[セル]とか[フレームビュー]の説明も特にないようだ。酷い。
KADOKAWAは大手出版会社なのに、校閲部にヘルプの文章通してないのは間違いない。
説明なしに独自用語使うなどということを、校閲を職業とする人間が通すとは思えないからだ。
ヘルプが分かりづらい
例えば、補完機能の説明を引用してみよう。
指定したふたつのフレームをもとに、その間のフレームのセルを自動で設定します。[フレーム][セル]に補完対象のフレームとセルの範囲、[補完項目]で補完する項目にチェックを付けて[OK]をクリックします。たとえば同じセルをフレーム1番には左端、10番には右端に置いた状態で、位置を対象に1~10番のフレームの補完を行なうと、2~9番のフレームに左から右に向けて位置をずらしたセルが自動で設定されます。
やべぇ、全く分からん!
ガルザカートのブラグスパリオをジェミニ誘導。みたいな!!
パルスのファルシのルシがパージでコクーン。みたいな!!!
これはヘルプの書き方が悪いと言い切れないところがあって、そもそもの補完機能のUIが分かりづらいことが問題ではある。
おそらく僕が説明書いても似たような文になるだろうし、さらにわかりやすくしようと思ったら図を3枚ぐらいつける必要があるだろう。
ヘルプが嘘つき
ヘルプに「リストの上下にある[Back][Next]ボタンをクリックすると編集フレームを前後に移動できます。」とあるけど、ないよなそんなボタン。
どんどんヘルプへの信頼がなくなっていく! というかもうマイナスだよ!! 不審ばかりが募っていくよ!!!
突然の一貫性のないキー割り当て
実は、フレームを前後に移動するのはBキーとNキーだ……はぁァァぁ??
コンテクストメニューにもないし、ヘルプにもない。どこに記述があるのって思うでしょう。ここです。
マウスオーバーしてしばらく待つと出るツールチップに書いてあるのだ。
いや、他のところではショートカットキー書いてないじゃん(書けよ! とは思う)
何という一貫性のなさ。
加えてもう皆さん気づいたと思うんだけど、ツールチップ。
[N] 次の項目を選択します。 [B] 次の項目を選択します。
いっしょやんけ!!
そして、ご丁寧にも上下逆やんけ!!
そもそも↑・↓キーでフレーム動かせるのになにこれ、というのが大抵の人の感想だと思う。
N・Bは、セルを操作している時もフレームの方が動かせて便利なのだ。
が、それにしても、Shift+↑・Shift+↓とか、追加でscrollup・scrolldownじゃない?
唐突に出てきたN・Bってキー割り当て、他で一切使われてない(よね)
仕様を書いたのは誰だ!! (「両津のバカはどこだ!!」の気持ちで! ただこれ、仕様を書かずに実装したから仕様を書いた人はいない、というオチがありそうで怖い)
ちなみにN・B、全面的にキーボードを採用しているツールだと、そこまで悪い割り当てではない。
超有名テキストエディタ Emacs は、前と次が P(previous)と N(next)なので、それに合わせた方がいいのでは? という気はしなくもないが。
しかしユーザインタフェースで大切なのは統一感、一貫性。こんな行き当たりばったりにUIが作られてたら、絶対に他の箇所から類推してN・Bは出てこない!
[最大数の設定]
[フレーム数]に数値が入力できる…そうこれはそういうボタンがないだけで先に全体の数を設定する不思議UI[最大数の設定]方式なのだ。
他の[最大数の設定]はリストの下についていてリストと関係ある部品なんだと分かるが、たちが悪いことに[フレーム数]はフレームとは別のグループ枠に入ってて「関係ないですよー」って顔してるのに関係あるのだ。
他の箇所より多少マシなのは、新規項目を追加して増やす方法が用意されていることだ。
そして驚いたことにショートカットキーがCmd+Nなのだ。
いや新規項目がCmd+Nなのは割と常識的な割り当てなのだが、MVで他に使ってるところ、このアニメーションの[フレーム]と[セル]、あとは[プロジェクトの新規作成]しかないのだ(よね)
行き当たりばったりが過ぎる!!
あと数値入力だけのインタフェースなのに、いちいちダイアログ開いて入力させるの無駄。
もしかしたらマウスホイールで数値が変わってしまうという誤操作を防ぐ目的があるのかもしれない。
だとしても解決方法がスットコドッコイで、他の数値入力の箇所も誤操作するんだから、全面的に入力のマウスホイールを効かなくするべきでしょ。
最初に書いたように、そもそも[フレーム数]を入力させること自体必要ないけどね!
ドラッグできない
フレームはすごくドラッグで入れ替え操作できそうなのにドラッグできない。
[最大数の設定]方式のUIには漏れなく「ドラッグできない」がついてくる。
コンテクストメニュー依存
編集機能全般そうなのだが、メインメニューにある[切り取り]がグレーアウトしているのに、コンテクストメニューに[切り取り]が存在してて使える。
メインメニューからも使えないとダメでしょ。なんでグレーアウトしたの!!
メインメニュー軽視
[データベース]全般がそうだが、メインメニューから使える機能が一つもない。
メニューの名前とウィンドウのタイトルが揃ってない
コンテクストメニューの[編集]を選ぶと[セルの設定]ウィンドウが開く。
メニュー名を[セルの設定]にするか、ウィンドウ名を[セルの編集]にして揃えないとダメじゃね?
あるいは複数の編集ウィンドウが開く想定なら、ウィンドウ名にセルのIDや名前を表示するとか。
ショートカットキーの記述が嘘
上へ・下へってコンテクストメニューがあって↑・↓のショートカットキーの記述もあるんだけど、↑・↓押すとセルが上下に動く。
当たり前かと思ったかもしれないがさにあらず、キーを使わずにメニューを選ぶと重ね合わせの上下(手前と奥)が入れ替わるのだ。
やべぇ…このツールUIのテストしてねぇ。
そして例によって、Macだとdeleteキーが働かなくてreturnにバケる。
データの関連性がレイアウトに反映されてない
[SEとフラッシュのタイミング]は再生時間に深いかかわりのある値だ。
なのにフレームの属性とは独立してて、フレーム番号を別に設定しなきゃいけない。
同じ時間の流れに乗ってるのに、別の箇所のUIで他人行儀に設定しなきゃいけないのか。
関連が分かりづらすぎて、表計算ソフトでタイムラインの下書きが必要なレベル。
ちなみに、[SEとフラッシュのタイミング]は新規作成に対してダブルクリック以外の操作は用意されていない(よね)、とほほ。
そして珍しくドラッグで入れ替えが効く、しかしNo.で再生位置が決まるので、ドラッグして入れ替えても特に意味はない………わけがわからないよ。
[ターゲット変更]から[再生]に並ぶ編集関連ボタン、アニメーション全体に対するもの、範囲に対するもの、選択対象に対するものとが混在しててわかりづらいにも程がある。
配置で全体のもの、範囲のもの、個別のもの、って分かるようにして欲しい。
例えば[前フレーム転送]ボタンより[現在のフレームを複製]ってコンテクストメニュー(およびメインメニュー)を作った方がいいんじゃないの?
新規項目の追加方法がその場しのぎ
新規パターンを追加しようと思って、下の部分にパターンが並ぶ(件の[パターンパレット]だと思う)部分を、ダブルクリックしてもドラッグしても、右クリックしても何も起こらない。
ただ、クリックすると選択枠が動くだけ。
UIの意図が掴めなくて怖い。
正解は、中央の画面([フレームビュー]…だと思う)でコンテクストメニューを開いて[新規]で選択中のセルが配置される。
超絶分かりづらい。
あと中央の画面の何もないところのダブルクリックでも追加される。これもちょっとどうかという気はする。
ダブルクリックはだいたい[開く]に当てられる入力方法なので、ダブルクリック後にウィンドウなりディスクロージャなりが開かないと違和感を生ずる。
ダブルクリックで配置するなら、マップビューでのイベントモードのように設定ウィンドウを開くべき。
とはいえ、この場合は下にパレットが出てるんだから、それをドラッグして画面に配置するのが一番自然だ。
世間の常識の無視
今時フレームが縦に並ぶのも腹立たしい。
すでにUIとして慣れ親しんでいる動画再生のシークバーと同じように、時間を示すフレームは横に並ぶべきだ。
そして、フレームの操作も動画と近いものを採用するべきなのはほとんど明らかだと思うのに、再生ボタンが[▶]じゃなくて[再生]なの、びっくりだよ!
[▶]という強いアイコンがあれば、まずパッと見で動画を編集している画面に見えるから!
逆にいうと、今のUIは何する画面だか直感で分からない。
非常口の人がいない非常口サインってもう機能的に成立しないのは分かるかと思う。
直感的は共通性で作られる。世間の常識を無視しないで!
数字で管理したがる
そもそもフレームに数字の表示いる?
5とか10の区切りの目盛りがあって、選択中のフレーム数の表示さえあればいいよね。
今の作りだと[SEとフラッシュのタイミング]から参照する都合上数字が必要なんだけど、すでに書いた通り同じフレームを扱う設定が複数箇所に分かれてるのがそもそもおかしい。
フレームの最後が「----」なのも怖い。MVの他の箇所では採用してないのに、唐突に出てきている。
ダブルクリックなどの操作に何の反応もない。
思わず「理解できない」からアンインストールを一節歌ってしまうところだ。
フレームを新規に追加すると、現在選択しているフレームに追加され以降のフレームは下にずれる。
この挙動自体は全く当たり前で、特に問題ない。
しかし数字が順に振ってあるので、追加後に視覚的な変化があるのは最後のフレームだけで、あたかも最後にフレームが追加されたように見えるのだ。
ひーどーいーぞー!!!(口からビーム)
数字で指定させたがる
特に顕著なのが[補完]や[一括設定]機能だ。
開始から終了までのフレームがそこに見えているのにもかかわらず、ドラッグで設定するんじゃなくて数値入力して設定するとかおかしい。
例えば、エクセルのSUMとかの関数、範囲指定ドラッグしてできるでしょ!
いっそコマンドライン入力にしてくれ! そっちがテキストエディタ使えて楽だ、という感じ(されたらされたで困るが)
編集画面が狭い
そもそも編集画面の大きさが固定で、今時の環境だと画面の1/10以下の面積で作業しなきゃいけない時点でもうね。
仕様書の時点でダメだってわかるじゃん!
実装しなくてもわかるじゃん!!
実装したらますますわかるじゃん!!!
奥さん! この人自分の悪いところ直す気ないよ!! 別れた方がいいよ!!!
というわけで僕はMVのアニメーションには触れないようにしている。
イライラして作業どころではない。
僕はMVに手を出す前は主にFlash使ってたんですよ。そのUIが気に入らなくて改善案の記事とか結構な量書いたんですよ。今思えばFlashのUIは天国でしたね。
MVのアニメーションUI嫌いすぎて、アニメーションの再生すら使わないぐらいだ(そこは使った方がいいよ)
アニメーション機能は独立して別アプリケーションになってた方が良かったと思う。
その他
MVのアニメーションには、始点と終点を指定して途中の座標は必要に応じて適宜生成されるデータ、という概念がない。
フレームごとに全オブジェクト(セル)の配置データがあって、愚直にそれに従って描画している。
故に再配置は1フレームずつ1セルずつ、ちまちま変えていくしかない。
また、イージングの設定がなく、ゆるく入って加速、高速で入って減速、って動きを設定したい場合は、これまた地道に一個一個手作業でパラメータを設定していかないといけない。
ボーン機能とかモーフィングとか、ましてLive2Dみたいな画像補完などは期待してなかったけど、前時代的にすぎる。
今は(というかMV発売時点でも)AIで画像そのものを自動生成するような時代ですよ。
1980年代から止まってる感じです! 下手したら半世紀前ですよ!! この流れの速いITの世界で!!!
作ったアニメーションを適用する際も問題があり、[アニメーションの表示]コマンドでプレビューができない。つらい。
BGMとかのサウンドにはプレビュー(再生)ついてるのに。
まとめ
UIの感覚が違いすぎて、本気で異星人とのファーストコンタクト気分が味わえる。
仕様書に「〇〇が可能であること」みたいに書いてあって、可能になった時点で開発やめた感じ。
仕様で使い勝手とか全然考えてないし、実装の時点での工夫もない、そんな空気を感じ取れる。
ここに挙げたものだけが問題なのではなく他にもいろいろあるが「次のツクールではなくなるし、いいだろ」ということで、このへんでレビューを終える。
ロングレビュー その他に、つづく!