2007-02

「マリア様がみてる いとしき歳月」今野緒雪

「マリア様がみてる いとしき歳月 前編」(Amazon | bk1)
「マリア様がみてる いとしき歳月 後編」(Amazon | bk1)読了。

 今月は(と言った方が、ふさわしい感じ)三月、卒業シーズン。という事で、三薔薇様にスポットを当てたという事以外、前後編にする意味もあんまりない位に、バラエティに富んだ内容。
 けっこう、無理矢理な感じが出てきた、ひと月=一タイトル。

 まず前編。「黄薔薇革命」でオマケのような扱いだった、黄薔薇様こと江利子のゲテモノ好き、もとい年上好みが判明する「黄薔薇まっしぐら」。
 援助交際疑惑とゆー、なんだか生々しい話で、ショージキ微妙な感じもするけど、最後に存在感出せてよかったね、というところ。ただ、白薔薇こと聖に比べると薄味。存在感を出そうとして、作者が奇策に流れてしまった感もある。
 もはや定番となった、序盤に謎、そして謎解き、という推理小説的展開。手慣れた感じで、ちょっとジェラシー。
「一寸一服」は、黄薔薇視点で、もう一度事件を見るという、あざとい一編。あざといのではあるが、読者が読みたいと思うところを、ちゃんと提供するそのサービス精神には感服。

「いと忙し日々」は、迂闊にも小説で吹き出す失態。今野ぉぉぉぉ!!…やるな!!
 主人公の祐巳ちゃんが、平凡の記号から、いとしい存在に変わった一編。「普通の女の子」の一線を越えたボケをかます。

 そして後編。「Will」は、卒業を前に妹たちに想いを伝えるというところ、じわじわと読者を盛り上げていく。
「いつしか年も」は、卒業式を中心としたエピソードに、薔薇たちの出会いが挿入されるが、慌ててくっつけたという感じもある。が、シリーズとして見るのではなく、「いとしき歳月」という単位で見ると効果的。さらに、卒業式で祥子が見せた態度で、いまいちキャラ的に弱かった赤薔薇の蓉子を、重要キャラとして読者に意識させる。そして、在校生姉妹たちの今後も思わせるという。いやー、見事な布石。
 そして「片手だけつないで」は、白薔薇の姉妹の出会いを描く一編。なんだよー、結局は白薔薇のキャラ立ちが一番だってことかよー。人気キャラ(と、勝手に思っている)の白薔薇の聖を描けば小説の人気が出るとか、安直に考えてるんじゃないだろーな、こら。とか思いつつ、極めて正しい選択でもある。たぶん、作者が気に入って書いたキャラだから人気が出て、人気が出たから作者も書く、といういいスパイラルになってるんだな。

2007-02-06

「マリア様がみてる チェリーブロッサム」今野緒雪

「マリア様がみてる チェリーブロッサム」(Amazon | bk1)読了。

 4月は出会いの季節、というわけで聖リリアン女学園にも新入生が、進級した薔薇の姉妹たちにも一波乱の予感。

 本書は二つの作品で構成されている。まず「銀杏の中の桜」は、コバルト1997年2月初出時「マリア様がみてる」のタイトルだった。つまり、このシリーズの最初の作品なんですね。
 基本は仏像愛好家でクリスチャンでもなんでもなく、リリアン新入生の乃梨子が、リリアンの姉妹(スール)とか三薔薇とかのヘンな文化に、突っ込みを入れるという構成。「やっぱリリアンってヘンなんだ」と読者に再認識させてます。学年が変わってシリーズ仕切り直し、という意味でいいタイミングですな。
 話は志摩子と乃梨子の出会いと交流を中心に展開します。んで同じく桜の下、聖と志摩子とが出会った、前巻の「片手だけつないで」のエピソードが効いてくるわけ。
 それから、ずーっと引っ張っていた「志摩子の秘密」が明かされる…と言っても、短編は既に発表されていたので、知っている人は知っている状態だったわけだけど、ある意味衝撃の秘密でした。
 話自体は、割と素直に進み、同じ秘密を共有する二人、という親密になる王道設定を用いつつ、クライマックスへ。

「BGN(バックグラウンドノイズ)」は、「銀杏の中の桜」を他の主要キャラクタ側から描くもの。
 この手の同じ話を二回別視点で描くというのは、マリみてお得意の手法。
 舞台裏をのぞき見る面白さであり、また、短編「マリア様がみてる」をシリーズ「マリア様がみてる」に組み込むための仕掛けとして、上手く機能してます。

 新入生の瞳子は、祥子の(遠縁の)従姉妹ということで、祥子にじゃれついたりして、祐巳を引っ掻き回すためにいるキャラですなー。これからの活躍が期待されます。
 志摩子は、どうも乃梨子で決まりみたいですが、他の二年生の妹がどうなるか、ってのが物語を引っ張る軸となりそう。なにせ「梁山泊に集う英雄」や「村を救う7人の侍」の例を出すまでもなく、人が集まって仲間になっていくところこそ、物語の一番面白い部分、と言っても過言ではありません。

2007-02-10

「マリア様がみてる レイニーブルー」今野緒雪

「マリア様がみてる レイニーブルー」(Amazon | bk1)読了。

 五月病というのもありまして、精神が不安定になる季節。
 てなわけで、リリアンの姉妹たちにも波風ざわざわ。

「ロザリオの滴」は、前巻からの続きといった感じの(プレ)白薔薇姉妹のお話。まだまだ反抗的ではあるものの、乃梨子のツッコミキャラの印象は薄れ、リリアン色に染まってきているとゆー。あんまりシツコク外界との違いを描くのも、世界を壊すしね。そういや、前白薔薇の聖が、同じ敷地の大学に通っているってのは、実に都合のいい設定。ずるいよ今野先生。
 しかし、蔦子さんは眼鏡っ子としては珍しいキャラで、いい味出してますなー。少女のきらめく瞬間を文章で描写する作者、写真で切り取る蔦子。台詞も達観してて大人びたところもあるし、こやつ作者の分身ではなかろうか。

「黄薔薇注意報」は、由乃が剣道部に入部する、令は部の先輩とと姉としての立場で気持ちは千々に乱れて。とまぁ、これはオロオロ令ちゃんを微笑ましく見るのがよし。

 で、白と黄色はまぁそんなもんかな、という感じで落ち着くのですが、本編の主役姉妹であるところの赤薔薇が、大変なことになってます。
 表題作である「レイニーブルー」、デートの約束を何度もすっぽかすわ、理由は言わないわ、瞳子とばかり行動するわ。もーサッちゃん嫌い!!とか思う俺だよ。
 傘に登場人物を喩えて見せる手法に、祐巳の切なさがぐいぐい迫ってくるわけでございますよ。新聞部の三奈子は、嫌な思い出を引き合いに出すし。
 で、二人が決定的とも言える雨の中での別れをしたところで終わり…。うへぇぇ。恐ろしいことをするよ今野先生は。この時点で不慮の事故とかで自分(今野)が死んだらどうするんだよ、読者まで悶え死ぬよ。真相はお預けかー!!!って。
 まー、例によって、大したことじゃないんでしょうけど。
 それはそうと、聖ちゃん美味しすぎるよ。あんた、もはや主役だよ。

 この三編、ほぼ同じ時間軸上で描かれるという、なかなかの離れ業をやってて、少しずつかかわり合ってるんですなー。もう職人芸的ですわ。
 白薔薇が一段落ついたことで、乃梨子と志摩子の短編「マリア様がみてる」から、祥子と祐巳のシリーズ「マリア様がみてる」への橋渡しの一冊、という見方もできます。じゃあ黄薔薇は単なるクッションか…いや接着剤ですよね。ボンドも黄色いし。と、とりとめも無く感想終わり。

2007-02-12