コミュニケーションアドベンチャーという新機軸に挑戦する、エニックスの渾身の力作。従来のゲームにくらべ、よりキャラクターとのふれあいを感じることのできるゲームシステムと、暖かいグラフィックはプレイヤーを画面に釘付けにするる。
(コミュニケーションアドベンチャーというジャンルについては、次回作のワンダープロジェクトJ2のレビューを見ていただきたい。簡単に言ってしまえば、育成ゲームとアドベンチャーゲームを足したものだ)
新しい試みと言うものは、なかなかに勇気がいるもので、ついつい、すでにあるジャンルに走ってしまいがちである。
ゲーム機用RPGの金字塔であるドラゴンクエストを発売したエニックスは、ドラゴンクエストそのものもそうであったように、新しいゲームを作ることを積極的にやる会社であり、本作ワンダープロジェクトJもかなり新しい試みのゲームと言える。
つまりは、このゲームはドラゴンクエストになる可能性があるゲームと言い換えてもいいかもしれない。世の中、こんなゲームが多いと、もっと面白くなるはずなのだが。
さて、ゲームはプレイヤーがギジン(ロボット)の少年に色々な行動を指示し、成長させていくのだが、成長させると言うよりは、イベントをクリアするためにパラメータを調節していくと言った趣が強い。
その調節したパラメータに従ってギジンは行動するのだが、それがあまりにロボット(プログラム)っぽすぎる。そういうキャラクターに、やさしさだとか、勇気だとかのメッセージを託されても、もう一つ有り難みがない。そういう人として大事なこともパラメータでどうにでもなっちゃうことに貶めてしまっているわけだ。
キャラクターの行動で、パラメーターの状態を想像することができるようになっているのだから、無くてもゲームを成り立たせることができる筈だ。
結局はパラメータをプレイヤーに提示すると言う、従来のゲームの方法論から抜け出ることが出来なかったということ。プレーヤーの方に準備ができないのではないかと言う不安もあったとは思うのだが、思いきってパラメータ表示を廃止していれば、このゲームの輝きも増したことだろう。
もう一つ問題なのは、操作性がもう一つよくないということだ。
これはマウスを使えば解決するかと言うと、そういうものではなく、ボタンを押すタイミングの取り方に問題がある。
特にほめる・しかるのボタンを押す場合のタイミングが、会話をスキップするボタンと重なる部分の処理が甘い。これは、ゲーム全編を通じて行う操作なので、とくに慎重に作って欲しかった。
ある程度大きなキャラクターが、良く動くし、背景の絵も良くかけている。
グラフィックは、スーパーファミコン全体でも、かなり上位に位置するのではないだろうか。
舞台風の画面構成であることもあって、生活感もあり、ゲームなりのリアリティを持たせることに成功している。
ただ、時々出る顔のアップのウィンドウは、通常のキャラクターで十分魅力的なのだから、蛇足であったと言えるかもしれない。
プレイ時間やストーリーは、割合あっさりしているし、隠し要素もあまり多く無い。個人的には、もう少し濃くしてもよかったと思う。
一度クリアした後は、評価モードが付くのだが、これはパラメータとは逆に、最初からあった方が、プレイが引き締まって良かったような気がする。
いろいろと苦言をのべたが、手先の器用さを全く必要とせずに、良く動くキャラクターを操作することができると言うだけで、けっこう素晴らしいゲームであるかもしれない。
動きが豊富なので、動かしたり眺めたりしているだけで、面白いというのは、このゲームの強みであろう。しかも格闘ゲームのように複雑な操作を要求しないので、ゆったりとプレイができるのは有り難い。
そこで結論。
「新しい試みのわりには良くまとまっている」
1999-07-05