テイルズ オブ デスティニー2

対応機種・周辺機器
PS2 (PSP)
ジャンル
運命を解き放つRPG
著作・制作
(c)ナムコ/いのまたむつみ 1997,2002

基本情報

 アニメ風味のJRPG(日本産のドラクエタイプのRPG)のど真ん中という感じのビジュアルだが、多くのJRPGと異なり、戦闘システムが対戦格闘的なアクションゲームとなっているのが大きな特徴だ。

 テイルズオブシリーズはテイルズ オブ デスティニー以外にも多くのタイトルが発売されていて、シリーズ(本編)的には第4作であり、前作はテイルズ オブ エターニアとなる。
 本作は、1997年プレイステーションで発売されたシリーズ第2弾テイルズ オブ デスティニー(以下TOD1)の、シリーズ初の直接の続編かつ初のPS2版として2002年に発売されたものである。

 2006年にTOD1のPS2版リメイクが発売されてるが、PS2本体でPS1のTOD1がプレイできることもあって、本作の時点ではPS2版は企画もされていないかと思う。
 TOD1のPS1版とPS2版は結構違うのだが、私個人はPS2版はやったがPS1版をやっていないので、少々チグハグなレビューとなってしまうのを、ご了承いただきたい。
 あんまりTOD1との比較はやらないことにしておく。

 主題歌は倉木麻衣key to my heart
 キャラクタデザインはTOD1に引き続きいのまたむつみ。
 アニメーションにプロダクションI.G
 シナリオをルナ -シルバースターストーリー-シリーズのシナリオ工房 月光が手がけている。

グラフィック

 グラフィックはフィールドは3D表示で、町とダンジョンは2Dという構成。
 フィールドはテクスチャが変わるだけで、モデル的にはほとんど地表があるだけという寂しい作り。
 地表は勿論立体で構成されているのでドラッケン並の地味さとは言わないが、地味なのは否めない。
 確かポリゴンについては、シリーズでは始めて取り入れたので、おっかなびっくり感がある使い方と言えるだろう。
 その地味で先の見通しの悪い(密度の薄い)フィールドを、妙に遠回りしないと目的地にたどり着けないマップデザインも退屈だ。

 18年後の世界の主人公のキャラデザインはTOD1のキャラクタの息子ということで、わりと細部のデザインは異なっていながら、ほとんど一発で誰と誰の息子か分かる象徴として分かりやすいデザインだ。
 背景・キャラ・ムービーと、グラフィックはポリゴン部分以外はレベルが高い。フォントやメニューはスーパーファミコンよりの絵で、PS2らしさはないが。

 あ、他にもひとつ、デフォルトのメニューやセリフの背景が妙にセンス悪い。無地にしときゃいいのに。
 漫符(エモティコン)の使い方など漫画・アニメ的表現には一歩抜きん出ているのに、肝心なフキダシでコレはないだろう。

戦闘システム

 シリーズの目玉の戦闘シーンはSPというゲージ(要するにスタミナ)を消費して行動する。
 このためやみくもな攻撃でなく、適切な戦術的行動をとる必要がある。
 これがゲーム的にはよく働いているが、インタラクティブおもちゃ的にはストレスともなっている。

 敵のガードがかなり硬く、直接攻撃系が前線で盾となって後衛への攻撃を防いでいるうちに後衛が魔法攻撃、敵のガードが魔法で崩れたところで、他のキャラと連携しタイミング良くコンポを繋ぐ、というパターンに(特に敵の強い後半は)なりがち。
 集団戦としては理にかなってはいるが、耐えること前提の前衛を操作キャラとして選んで楽しいのかという疑問もある。

 全体としては、爽快感よりも戦術的駆け引きの面白さを優先した調整と言えるだろう。
 SPによる制限はまだしも、敵のガードはもっとユルい方が本作の色には合っているように思う。

 難易度がゲーム中のオプションで選べるのは調整不足が露呈している。レベルアップとか装備で難易度は調整されるべきだろう。
 あと、敵の裏に回るとSPなどが下がって不利になるシステムは、面白さより理不尽さが大きい。単純に味方が分断されただけでもリスクは十分かと思う。

ゲームシステム

 チャット(他の作品ではスキットとも呼ばれる)システムは、バストアップ(いわゆる立ち絵)と音声で表現されるパーティキャラのおしゃべりを覗く、という感じの機能で、SELECTボタンで表示できる。
 これがとにかく多い。必然的に、次の行動の指針ではなくパーティ内のじゃれあいも多くなり、「次どこに行くんだったか確認したいのに、漫才見せられる」というパターンも多くなってしまっている。
 キャラクタの魅力を見せるゲームなので、基本方針としては間違っていないが。

 マップがあまり記号的でないため、どこに対して効果があるのか少々分かりづらい面もあり「無駄に」難易度を上げている傾向がある。
 例えば、動かせるかどうか一見して分からないとか。動かせるものは全部立方体にしようよ、と思う。
 仕掛け自体は比較的シンプルだし、マップ上で完結している。急に別ゲームが挿入されたりしないのは好感度高い。

 食材を調理してHP回復などの効果が得られる。戦闘後に自動調理もできるので回復の煩わしさが少ない。食材の組み合わせ新たな料理も作れる。
 術・技にはエンチャントという、性能をカスタマイズするシステムがあり、使った回数やキャラの成長度でカスタマイズの幅が広がる。
 武器・防具・兜にはスロットというものがあり、合成(リファイン)などで付加効果が付く。
 他にも、キャラ毎の称号によって成長パターンが変わるとか色々ある。

 これらのシステムを使ってパラメータをいじりながら、戦闘アクションに習熟しつつストーリーを追う事になる。
 もちろん、多くのRPGにあるような術・技・アイテム・敵に属性が存在し相性があるとかもある。
 かなり書いたつもりだが、まだ書いてないシステムが色々とある。
 これはもうシステム過多だ。システム多くて濃いというより、逆に全体としては「面倒で考えることをやめちゃう」とか、「どこを楽しむゲームかよく分からず」薄味に感じる。
 このシステムの詰め込み過ぎ傾向は、テイルズオブシリーズ全体にある問題と言えるだろう。

シナリオ

 シナリオを専門の外注へ任せたおかげか、他のシリーズに比べると日本語的におかしな言い回しは少なく、ストレスなくて良かった。
 全体としてはルナグランディアといったゲームアーツ系JRPGに近い雰囲気、と思ったら、シナリオがそちら系も手がけた人だった。

 ほぼ一直線に場所を移動して話が進むため、伝説の縦スクロールRPG里見の謎やってる気分に…。
 利点は迷いにくいことだが、欠点は冒険感が弱くなる(やらされてる感が強くなる)こと。
 やたら「冒険だ! 英雄になるんだ!」という主人公とのチグハグ感がある。

 ほぼ「自然が一番」みたいな保守的な理由で敵と対立するのは冒険とは正反対。
 できれば、主人公は若い(15)んだし「敵よりさらに冒険する」という形で対抗して欲しかったところだ。

 飛行による移動手段は増えるが、終盤も終盤になってからなので、自由に旅している感覚はほとんどない。
 つまり、世界を自在に行き来できるのは終盤になってからで、サブシナリオがそこで一気に発生し、いかにもバランスを欠く。

 主人公たちはTOD1では15人(ソーディアン含む)もいたのに対し、本作は6人に絞られており、それぞれの個性が上手く出せている。
 特に戦闘終了後の音声による短い掛け合いが、じつに良い感じ。戦闘に出せるのは4人だが、全体で6人なのでわりと満遍なく戦闘に出そうという気になる。

 TOD1の18年後なので、TOD1で登場した人物が登場したり同じ町が出たりするのはなかなか楽しい。
 TOD1のキャラクタが現役年齢なので「お前らが戦え! 世界の危機だぞ! そんな弱いわけねーだろ!」という疑問が常につきまとう。
 その他の矛盾など小さいものと言える。この年代の近さはなかなか危険だ。

 若本規夫ボイスの敵キャラが、声は勿論だが戦闘時の攻撃パターンや強さでも異様に存在感を発揮していて、ほとんど邪魔な感じもするが、ゲームのスパイスとしては割とよかった。
 このキャラがいなかったら、ちょっと印象の弱すぎるゲームになったろう。

その他

 このシリーズ、キャラデザインや声優は豪華だし、メニューなどの基本システムはしっかりしているし、PS2シリーズ初であるにもかかわらずアナログスティックへの対応もよいし、ローディングのストレスもなく、音楽も本作は特にサウンドモードがテンポまで変えられる充実ぶりで、豪華で手の込んだコンテンツであるのは間違いない。
 その豪華さに負けないように、プレイヤーが消化不良を起こしちゃう程のシステムを詰め込む、という方法論のようだ。
 さらに図鑑などのやり込み要素や隠し要素も豊富に用意されている。
 なんだかんだと苦言は書いたものの、まず「大外しはしない」というゲームと言えるだろう。

 そこで結論。

調整不足を感じるしシステム過剰だが、キャラ数まで過剰にならなくて、なんとか着地できている