ZWEI!!(ツヴァイ!!)
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基本情報
ファルコムがぽっぷるメイル以来のお気楽ファンタジーものとして作ったのが本作。
当時やたらとリメイクや続編が作られていたイースや英雄伝説などとの繋がりなどはない完全新作で、ファルコムも「このままじゃじり貧だ」と感じていたのではないかと思う。
今回のレビュー対象はそれをプレイステーション2へと移植し、タイトーから発売されたもの。
システム
極めてスタンダードなアクションRPGではあるが、特徴的なシステムが幾つかある。
ひとつはタイトルのツヴァイ(ドイツ語で2)の通り、男女2人の主人公をポタンひとつでいつでも切り替えられ、装備や経験値などのパラメータが共有されるシステム。
共有される要素が多いものの、キャラ切り換え自体はよく見るシステムである上に、もうひとつ活かせてなかった。
もうひとつは、経験値が回復の機能も持っている食べ物を消費することでしか手に入らないというところ。
多くのRPGで回復アイテムが余ると売るしかなくなって、正直邪魔で手に入れても嬉しくなくなることがある。
本作では体力回復と同時に経験値が手に入るため、多く手に入り過ぎたら経験値を手に入れるために消費、という選択肢ができている。
10個でよりグレードの高い食べ物に取り替えられるので、体力に余裕があっても溜め込む理由があるし、ちまちまひとつずつ消費しないですむのも良い。
お気軽RPG向けのシステムとして素晴らしく良い。幾つもの問題を一挙に解決している。
また、最初からマップの全域に足を伸ばすことができるので、プレイヤーに自由さを実感させてくれる。
ただホントにどこにでも行き放題だと途方に暮れてしまうので、ダンジョンの中はカギがかかっていたりする。
さらにダンジョンの入り口や分岐には推奨レベルが書かれたパネルが置いてあるので、その数値と場所をメモっておき、低い順から攻略していけば間違いない。
ここまで親切だと「攻略していなくてレベルが最も低いパネル」がある場所を教えてくれてもいいのに、ともう一段階の親切が欲しくなる。
なかなか自由と不自由のバランスは難しい。
後、個人的に好みなのはメッセージがフキダシで表示され、音声が付いていないこと。
フキダシの表示方法が工夫されているし、漫符(エモティコン)が使われることも多く、漫画感覚でスイスイ読める。
常に2人で行動するため、会話のやりとりが発生してテンポが良い。ゲーム部分では今ひとつだが、イベントシーンでは2人で冒険するシステムが成功しているといえるだろう。
本作では常に表示されている顔グラフィックに付いたフキダシで独り言を喋るというシステムがあり、ごく基本的なシステムの復習をしてくれる。
欲を言えば「相談」みたいなコマンドがあって、今後の行動や現状を2人で話し合うようなシステムがあればなお良かった。
アクション
全体的にアクションが弱く、ボスも含めてごり押しでどうにかなる作りだ。
斜め移動が速いというのがアクション部分の攻略のキモだが、PS2版のアナログスティックでは斜めと判定される角度が小さいようで、もうひとつ攻略に活かせなかった。
そもそも、敵がごちゃっと動いて魔法をポカスカ撃ってくるので、斜めに速く移動できる程度で、華麗に敵の攻撃を避けつつ倒すというのも難しい感じがする。
下手に動き回るより、足を止めて打ち合った方がダメージが少ない。
ベルゼバブというでっかいハチのボスだけ妙に強いのも納得いかない。他のゲームと比べて難しい敵でもないのだが、本作の中では飛び抜けて強く、足を止めて打ち合うことでは勝てない。
…他のボスも、もーちょっと攻撃に工夫があっても良かったんじゃなかろうか。
アクションが物足りない人向けに、各ダンジョンにスコアがありスコアアタックが可能となっているが、基本のアクションがあんまり面白くないので、付け焼き刃感は否めない。
2人で冒険するのではあるがペットも連れており、自動で攻撃・回復・アイテム拾いをやってくれる。
特にアイテム拾いが便利で、散らばったアイテムをちまちま拾う必要がなくて便利だ。
先の食べ物→経験値システムの特性故、やたら食べ物が出てくるだけにありがたい。
グラフィック
背景が手描きの水彩画をそのままマップにしたような雰囲気で、暖かみのある綺麗な絵となっている。
しっかり重ね合わせもできており、マップを移動したときの手触り感も良い。
若干、ファルコム特有の「障害物避け機能が働き過ぎて、特定の部分をポイントしづらい」というクセがあるのはよろしくないが。
この手描き風のグラフィックはムービーのシーンでも雰囲気を維持したまま3Dで描写され、かなり素晴らしい。
ボスがポリゴンで作られているのは、他が2Dであるだけにちょっと違和感があったが、前述の通りごり押しで倒してしまうので、絵のどうこう以前という気はする。
その他
ストーリーは特筆すべきこともなく、魔王が復活するから倒しましょうという、清々しいほどの超王道。
折角のコメディイタッチなのだが、同社のブランディッシュのドーラさん程のキャラの立った登場人物もおらず、悪くない止まりというところ。
そこで結論。
食べてレベルアップが好感触の、軽く遊べる秀作