Shinobi -忍-

対応機種・周辺機器
PlayStation2
ジャンル
殺陣アクション
著作・制作
(c)OVEER WORKS / SEGA 2002

基本情報

 忍といえば、ゲームセンターのSHINOBI 忍シャドーダンサー、メガドライブのザ・スーパー忍、ゲームギアThe GG忍さらにサターンの新・忍伝などなど、地味に沢山作品が作られているシリーズである。
 SEGAの看板まではいかないけど代表するシリーズであることは確実な忍シリーズが、ついにポリゴン3D空間へ進出。
 骨太アクションと言えばSEGA、そのSEGAの中でも骨太さ随一と言われる忍が、プレイステーション2を舞台にどう変化したか。

か…カッコいい…

 忍シリーズは忍者ゲームではあるが、カプコンストライダー飛竜やタイトーニンジャウォーリアーズのように、現代を舞台にしている。
 概ねショー・コスギのハリウッド忍者を思い浮かべてもらえれば間違いない。
 本作はそれに加え、特撮ヒーロー的な要素を組み入れている。特徴的な長く赤いマフラーは、石森章太郎の仮面ライダーサイボーグ009を彷彿とさせる。
 タイトルをしばらく放置していると流れるデモムービーでは、その赤いマフラー(推定3m)をたなびかせ、走る・跳ぶ・手裏剣を投げる・空中で連撃を決める、そして迫り来るミサイルを刀で切り捨てる!!
 特に連撃を決めた後に発生する殺陣演出が凄く、か…カッコいい…。

連撃システム

 本作の最も特徴的なシステムは、敵を倒す毎に攻撃力が劇的に向上する「連撃」にある。
 1体目を倒した時の攻撃力を1としたら8体ほど倒した後は、(たぶん)30倍ぐらい攻撃力が高まっている。
 つまり、雑魚を上手く連続して倒していけば、かなり体力のあるボスも一撃で倒せる、ということである。

 敵の強さを表現するために、体力を多くするというのは常道ではあるが、プレイは時間がかかる持久戦となり画面は派手でも印象は地味になってしまいがちである。
 しかし本作では、連撃を行うことで、敵が強いことを表現しつつ、(事前に雑魚を連続で倒すという関門を突破すれば)爽快に一撃で敵を倒すことができる。
 体力の低い雑魚を倒して連撃効果を高めておいて、体力のある敵を倒すという作戦が立てられ、漫然と敵を斬るだけではない戦略性が産まれている。

 さらにオートロックオン機能と(空中)ダッシュ能力があるので、その組み合わせにより敵が密集した際の連撃がスピーディーかつ効果的。
 ここは、全力で褒めたい。

その他システム

 スティックをロックオンした敵に対して横に倒しつつダッシュすると、敵の背後に回り込むことができ、背後から切ると攻撃力3倍となる。
 先に書いた連撃システムも思い切った攻撃力上昇だったが、この背後攻撃も相当すごい上昇率だ。
 ダッシュをすると、敵が残像に向かって攻撃するというのも、ダッシュの意味が高まっていて良い。
 ただ地上の敵に対しては、トレジャーエイリアンソルジャーみたいに、敵をすり抜けちゃってよかったんじゃないかと思う。
 というのも、3D空間でカメラ位置が安定していないので、回り込んだつもりが壁にぶつかって回り込めないということが多いし、近距離正面からのダッシュが有効な場面というのが存在しないからだ。

 このダッシュに加え、しばらく敵を倒していないと体力が減ってしまうシステムが、ゲームにスピード感を与えている。
 と同時にマップを探索する余裕をなくしている。マップ中にちらばるアイテムを探すシステムと、完全に衝突している。
 これはSEGAソニック・ザ・ヘッジホッグシリーズと同じく、スピードの爽快感と探索の面白さを同時に取り込もうとしてストレスを産んでしまった失敗と言える。

 本作では忍者らしく、特定の壁に張り付いてX軸方向に移動できる。これは非常に3D空間を上手く利用したシステムで面白い。
 ただ壁移動は自由度が低く、すぐ上に上れそうな位置ならレバー入れで登れて良さそうなんだが、頑にジャンプで登らせるようになっている。
 SEGAジェットセットラジオの上方向への移動がスムースだったのに比べ、残念な出来だ。

古臭いゲームデザイン

 全8x2(前・後半)の16ステージで構成されていて、各ステージをクリアしない限り、ミス即ステージ頭に戻される。
 空中を跳び回るゲームなのに、落ちたら一発死の場面が多い。
 成長要素がなく、先に進むにはプレイヤーが上手くなる以外の方法がない。
「だが、それが良い」というプレイヤーも多いと思うが、流石にゲームが面白さが分かる層は開拓し終わった2002年に、メーカー的にこれはダメだろう。

 シリーズの特徴として、初見時はクリアが絶望的に見えるが、繰り返しプレイすると格段に楽になっていく。
 とはいえ…それでもクリアできない人は、クリアできないものなのに、何ら救済策はない。
 10時間プレイしてクリアできてないなら、ちょっと能力の高いキャラクタでプレイできる、という位のサービスはあってしかるべきかと思う。
 もし、プレイヤーが上手くなることそこゲームでの成長だ、というポリシーがあるにしても、ある程度ゲームオーバー回数が多くなると、スーパープレイムービーが見れるようになるといった救済策は必要かと思う(ベスト盤ではスーパープレイDVDがつくことで、ある程度解消された)

 全体で見るとバラエティに富んだマップではあるのだが、1ステージ中の構成がかなり単調なのもいただけない。
 前に出たマップが練習になっていて、その応用がステージ後半や後のステージで展開されるという熟れた丁寧な作りではある。
 しかしプレイヤーが意識して練習しないといけなかったり、練習の時点での難度が高かったりして、プレイヤー人口を狭めている感は否めない。
 また、マップが基本一直線でショートカットがあまり存在しないのも単調さに拍車をかけている。

 ステージの区切りに流れるデモムービーがストーリー解説に終始し、いまひとつプレイの参考になるようなものではないのがマイナス点のひとつ。

まとめ

 SEGAバーニングレンジャーから続く3Dカメラワークの悪さもさほど解消されておらず、SEGAは根本的に3Dに向いてないんじゃないか、という疑念は本作でも払拭できなかった。
 例えば「ロックオン」「カメラを背後に回す」「ロックオン対象を切り替える」というボタンを3つに割り振る必要があったか疑問。1つにまとめられると思う。
 サービス精神が、そもそもゲームが好きな人間にしか向いてないというのも、相変わらず。
 面白いゲームだけど、これを面白いと思う人間はそもそもゲームが好きな人間なのは間違いない。
 クオリティは高いけど、このゲームのクオリティが高いと思える人間はそんなに多くない。
 本作を面白いと思える人に面白いと思わせたまま、それ以外の人にも面白いと思わせる作りはできる筈だ。非常にもったいない。

 そこで結論。

「間違いなく忍シリーズだが、忍シリーズ過ぎるところが欠点でもある」


2013-03-25