真・三國無双5 Empires
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基本情報
リアルタイムシミュレーションと格闘アクションの融合真・三國無双5(以下、無印5)をベースに、戦略シーンが追加されたもの。
真・三國無双3 Empiresから真・三國無双シリーズには定番となっている派生作品だ。
前作の真・三國無双4 EmpiresはPS2だったので、グラフィックの進化はもちろん、シミュレーション的な思考の進化も期待したいところ。
同じく定番であった追加パック的な猛将伝が、無印5の後に発売されていないので、猛将伝の役目も期待された作品でもある。
なお、後にPSP版も発売されている。
戦略面
君主と武将モード
君主として国を率いることはもちろん、武将として放浪し誰かに仕えることもできるようになった。
これにより、典韋が国を率いるのに違和感あるけど悪来典韋は好きなんだよなー、みたいな需要に応えることができた。
また、武将が旗揚げして君主になったり、その逆もできる。
後に君主になる武将でも、劉備など放浪を繰り返しているパターンは多く、その辺もそれっぽくプレイできて嬉しい。
君主である方が、多くの武将を配下におけるし、攻める国や政策の決定の自由度も効く。
武将だと、討伐戦闘を行うことで様々な特殊能力アップの恩恵があり、これは君主にはない。
なので、武将で基本能力をある程度あげ、君主として立ち天下を統一する、という流れが想定できる。
しかし色々とルールやバランスが変で、能力(レベル)上げする必然性が弱いゲームになっている。
薄い戦略性
君主モードの時は、それぞれの武将に設定された能力(カード)を国力に応じて使っていく。
多分8割がたが戦争関連のカードで、内政があまりできない。
戦争しない月は、できることがないので国力を持て余す。
敵国は地域ごとに武将を配置しているのに、プレイヤーは配置する必要がない(配置できない)。
どこを攻めてもどこを攻められても対応するのは同じ武将になってしまい、せっかく武将をたくさん抱えているのに飽きる。
また敵国の武将のレベルは、こちらのレベルアップに従って一律に上がっていっているようだし、ほぼ常に兵数は上限値を保っている。
そのため、弱い武将がいる地域を優先して攻める、あるいはレベルの高い武将を捕縛に行く、といった戦略は取れない。
そして、平均レベルを抑えるためにレベルの低い武将を抱えておくという、変な方針を取ることになる。
捕縛するにしろ、登用するにしろ、偶然の要素が強すぎて、狙って部下を揃えるのが難しい。
捕縛確率が上がるとされる包囲戦がそもそも全然発生しないのも厳しい。
依頼主を見て討伐戦闘を繰り返すなどで、依頼主との友好度が上がり、こちらに仕官してくることもあるとはいえ、回りくどすぎる。
さらに他でも様々な面で、部下や領土が増えてもやることの変化が少なく、序盤から終盤までずっと同じことをやっている感じが強い。
以前に光栄が初心者向けに作ったロイヤルブラッドと比べても、かなり低い戦略性だ。
敵君主を捕縛したのち登用すると、支配地域を一挙に手中に納められる。
かなり運だのみだが、拠点を全部制圧しておき途中保存をした上で君主に挑み、捕縛に失敗したらロードを繰り返すことで、割と序盤でもできてしまう。
極端な話、君主の数だけこれを繰り返せば統一が可能なので、ちょっと極端すぎる。
終盤の消化試合が手早く解決するので、調整を加えればいいシステムになりそうでもある。
史実の軽視とエディットの充実
史実イベントは、個人的には、呂蒙が「しばらく学問をしたい」みたいに言ってきたのに、おおっ!! と思ったぐらい。
他はカード能力のひとつ程度な感じで、特殊感が薄かった。
無双武将1人につき1つは特殊イベントを設定しててほしい感じだが、どうも1/3あるかどうか、という感触だ。
戦闘中に他の武将がかけてくる声が、肉親や義兄弟であっても他と共通になっているのもがっかり。
呉でプレイしている時は、互いに褒めあって「ほんとこいつら仲良し家族だな」とほっこりなるのが嬉しかったんだが。
代わりに、史実と異なる武将と義兄弟になったり婚姻したりできて、プレゼントイベントなどが発生するようになる。
この辺りのイベントに関わる重要なパラメータである友好度の状態を確認する術がない(よね)のは、友好度関連の事やる気が失せるダメ仕様。
前作で弱体化した武将エディットが充実して、大量にオリジナル武将が作れるようになった。
このため、例えばワンピースのキャラをたくさん作って、君主サンジで抱える武将は女子のみの国を作り「いつナミさんかロビンちゃんが結婚の話を持ち出してくるか」ってドキドキしたりできる。これはアホっぽい感じもするが、やってみるとハマる。
プレイしていると使える防具の種類も増える上に、無料ダウンロードコンテンツでも追加できるので、キャラ作りが楽しくて時間泥棒だ。
ただこれでは、なんのために三國志ベースにしているのかわからないのも確か。
基本的には史実に沿った人間関係にして欲しかったし、新規キャラよりむしろ特殊衣装が用意されていない武将の外見をエディットできるようにして、「厳顔が大好きなんだよー」って人も贔屓の武将に愛情をそそげるようにして欲しかった。
戦術(戦闘)面
機動力の大幅強化
馬が速くなって使いやすくなった。と思ったらスキルを追加すると人間も普通の馬並みの速度が出るようになり、乗り降りの手間がないぶん馬より侵攻が速い。
移動用スキルの最上位の刹那神速は、走っていると急に超高速移動になるので操作しづらくて困る。
むしろ人間の足は遅くするぐらいにして、馬の乗り降りをスムーズにすべきだったかと思う。
細かいことだが、馬に乗っている時に建物の角に引っかかって進めなくなることがあるし、壁の中にめり込んでアイテムが取れないこともあり、衝突テスト不足を感じる。
ジャンプを繰り返して崖を登れるようになり、マップのショートカット箇所が増えた。
ただ、折角の立体マップが平面に近くなったということでもあり、良い面と悪い面がある。
緊急回避が使いやすくなっていて、何度か攻撃して回避をタイミングよく繰り返すことで、大量の兵に囲まれてもしのぎやすくなった。
チクチク攻撃されて動けなくなることがストレスだが、兵が棒立ちなのも癪なので、回避力が上がるこの選択は気分がいい。
代わりに、全方位ガードと移動中ガードがなくなっているが、ガードが強すぎると打開策もなく防御して事態が硬直しがちなので、これもいい変更だ。
攻撃方法の調整
練舞ゲージが削除されて、連攻撃を切らさないように気を使う必要がなくなった。
これは無印5でいちばんの問題点の一つだったので、この選択は正解だろう。
殺陣攻撃は連攻撃から繋がらなくなっていたり、もともと狭い判定がさらに狭くなっている感じで、使いどころが本当になくなった。
武器を強化することで特殊攻撃4種類を使えるようになり、選択肢が大きく増えた。
アイテム消費型から時間回復型になったので、同じ技の連発はできなくなったが、4種は別に回復するので、別種類を4連続発動することができ、むしろ派手になっている。
ただし、L2を押しながらメインボタンという発動方法は、L2がアナログなためか、押したつもりが押してなかったりして若干使いづらさがある。
城攻め感なし
無印5では充実していた攻城戦関連の仕掛けがなくなって、攻城兵器や弩級が出ないどころか、拠点の門すら解放したままになっている。
国力によって攻城兵器の種類や威力が変化するぐらいしてもらいたかったのに、これはすごく残念。
崖登りアクションと後述する奇襲の仕様変更もあって、梯子を登るアクションの使いどころが減っているのも残念。
プレイのアクセントとしても、戦場の臨場感としても、平坦になってしまった。
奇襲の仕様変更
自軍の支配エリア内で奇襲開始宣言をし、その後敵将に発見されずに敵陣奥の拠点に突入すれば奇襲と判定される。
確実に奇襲を成功させようと思うと「目標拠点にいる敵将をまず排除し、自陣に戻って改めて奇襲開始宣言する」ということになるが、それで奇襲になるのおかしい。
この仕様を成立させるために、門が空いているのだろうし、崖をジャンプで登れるようになっているのだと思う。
面白みもあるが、いろんなところに歪みを生じさせてまで導入するシステムではなかったろう。
また、敵の奇襲は拠点に味方武将を待機させておいても必ず成功し、プレイヤーが奇襲隊に近づいて発見しないと防げない。
これに限らず、何でも一人でこなさなければいけないのは仲間と戦ってるって感じが弱く、ゲームの目指す方向を見失っているように思う。
その他
成長要素はかなり簡略化され、スキルツリーは全員共通、馬は赤兎馬すら店に最初から売ってあり、武器は材料と費用を工面できれば自由にカスタマイズできる。
もうちょっと工夫が欲しい気もするが、強い武器を得るために延々プレイを繰り返す必要があるのに比べると、好きなように強化できて嬉しい。
無印5に比べてもさらにキャラが画面を埋めてくるが、処理落ちはかなり軽減された。
インタフェースも良く、というか普通レベルになった。
ただ、武将の配列設定機能が使いづらく、一番上に置いたキャラが操作キャラになることに(マニュアルの記述がわかりにくい事もあり)気づくまで、かなり時間がかかった。
無印5では視点変更後固定だったのが、本作では視点を動かした後にスティックを離すと基本の視点に戻る方式になっている。
基本的にはいい挙動だと思うが、本作はキャラに自分が埋もれがちなので、見やすい真上視点に固定にできないのは困る。
後、夜のステージは無印5でも見辛かったけど、さらに暗くて見づらくなってる気がした。
夜ですよー、とわかるように軽く青いフィルターかける程度でいいのに、ほんとに暗いのやめて。
まとめ
一応、新規武将として孟獲が(復活)追加されたものの、既存の無双武将の作り込みはあまりない。
猛将伝5が存在しないからには、せめて大喬は追加して欲しかった。小喬がいるので「消されてる!」と意識して良くない。
戦闘としては無印5より良くなったが、攻城戦などの戦術面が弱くなった。
奇襲や武将の配置など、コンピュータとプレイヤーのルールに非対称性が多くあって理不尽に感じる。
せっかくの戦略部分がおまけゲーム程度のできなのは、「シミュレーションのコーエー」の面汚しと言われても仕方ないんじゃなかろうか。
歴史シミュレーションの開発スタッフを呼んで開発にがっつり参加させるどころか、参考意見すら聞いてないのではないかと思う。
PS4(Xbox360)のCPUパワーを駆使した思考ルーチンを期待するとか以前に、戦略ゲームに必要なものが揃ってない。
戦略部分の伸びしろを感じた前作に比べて劣化してるのは、あまりにもあんまりだ。
参考
そこで結論。
シリーズは下り坂に入ってしまったか、迷走気味の一本。