サクラ大戦物語 ~ミステリアス巴里~

対応機種・周辺機器
プレイステーション2
ジャンル
ドラマチックアドベンチャー
著作・制作
(c)SEGA-WOW / RED 2004

基本情報

 サクラ大戦3 〜巴里は燃えているか〜の舞台とキャラクターをベースにした新作、アドベンチャーゲーム。
 いわゆるスピンオフ作品のひとつであり、基本的には本編のファンのための作品と言えるだろう。
 個人的にはグラフィックやシステムを使い回して新作を作るという手法は大賛成なのだが、アドベンチャーゲームに関しては傑作が生まれる事が少ないように思う。
 同じスクリプトシステムを利用したビジュアルノベル系は、また別格として。
 本作の場合はどのような結果となったのか。

システム

 ポリゴン使えばいいってもんでもないが、全然PS2らしい能力を使っておらず、ものすごくPCエンジン時代のアドベンチャー臭がする。
 アナログスティックを使っても、カーソルの移動速度がトロいのはなんとかして欲しかった。

 システムは基本、サクラ大戦シリーズのLIPSというクイズゲーム式リアルタイム選択を使ったアドベンチャーで、シミュレーションシーンが除かれている点以外は、同じように見えるが実際の印象はかなり違う。
 本編では1話区切りでTVシリーズを意識した作りになっているが、本作ではそういう区切りがなく、次回予告ムービーもないので、淡々としている。
 街を移動する際、どうも区切りのイベントを発生させないと次のイベントが出現しない作りのようで、延々マップをうろつく事になって作業感が半端ない。
 この際のサブイベントの発生が非常に少ないので、延々同じ背景の静止画を見る事になる。
 ちなみに、移動と言ってもボインタで地図上に配置された行き先をクリックする方式で、移動感なし。

 キャラの立ち絵が縮小されているとか、選択肢がLIPSがメッセージウィンドウ内で展開されるとか、上に絵、下に文字のフツーのアドベンチャーゲームのレイアウトになっていて、折角サクラ大戦3では全画面グラフィックになってたのに退化。有り体に言ってショボい。
 なんでこの部分を変えちゃったのか、これこそミステリアスだ。

 女の子の好感度を上げるのは、適切な選択肢を選ぶ事と好みのアイテムを渡すことで行えるが、メイン5人、サブのメイド2人、妹を含めた新キャラ3人のヒロインがいるのに、前述の通り遭遇率が低くてめんどくさい。
 各ヒロインの毎のイベントやエンディングがあり、終了まで5時間程度とはいえ、再プレイ時の変化に乏しく、繰り返しプレイの楽しさはかなり薄い。
 もう、好感度システム自体、止めちゃった方が良かったかもしれない。

 妹と兄のダブル主人公でほぼ交互にプレイしていくシステムだが、多面的な視点を提供していると言うより、同じ事を二度やってる雰囲気に近い。
 また、兄にはライフゲージがあるのだが、つまらないアクシデントで減る事が多く、全体としてはあまり意味がない。使うにしても要所のみ使うべきだったろう。

 システム自体はそこまで悪くないのに、設定、バランス調整、キャラの使い方やらで失敗している。えーと、ほぼ失敗ですね。
 アドベンチャーゲームとしては、PCエンジンのPrivate eye dolの方がどーみてもできが良い。

ストーリー

 4から半年後の話で、本編の大神と異なる主人公である明智(とその妹)が割当てられている。
 それ自体はいいのだが、3と4でプレイヤー的にはラブラブになっているヒロインが、他の男に色目を使うような状況は、どうにも間男をプレイしているような感じで、なんとも居心地が悪い。
「大神さんならこうする」的な事ばっかり言ってるヒロインを嫉妬しつつも可愛いと思う展開だと、納得いくんだが。
 スピンオフ作品である本作は、明智=プレイヤーであると同時に大神=プレイヤーでもあるわけだし。
 ここで、明智になびいちゃうと、ヒロインは浮気するものという印象になっちゃう。

 本筋については、ちょっとドンデンし過ぎな感じもあるけど、まとまりは良い感じ。
 本格推理的なアオリで宣伝してあるけど、そんな事は一切ない。
 サクラ大戦シリーズの場合、ストーリの本筋より細かいキャラとのやりとりで雰囲気を作っているのに、そこが弱い本作はただの浅い話になっている。

その他

 同様のスピンオフ作品としてサクラ大戦物語 帝都編が予定されていたが、結局発売中止となった事からも、本作がどのように受け入れられたかは推して知るべし。
 古いシステムを使うこと自体は悪くないが、どこかに新しい挑戦が入っていないと、全体として「ただ古い」ものになってしまう。
 本作の場合、LIPSをもっと活かす方向で頑張って欲しかったところだ。
 ちなみに、クリア特典として3のオープニングと各話の予告ムービーがついているのは、なんつーか3が豪華だった事を再確認させるだけで、本作の評価をさらに落としてるだけのよーな気もする。
 この作品が出たのはPS2版のサクラ大戦3の前なのだが、投入タイミング確実に間違ってる。
 倒産寸前の分社化と再統合の嵐の中、調整にもう少し時間をかけて3の後に出すという余裕はSEGAになかったのかもしれないが、完全に負のスパイラル…セガはダメだなぁ。

 そこで結論。

本編で目が肥えたファンに対して、凡作では貧弱すぎる返答だった

妹は地味なカードキャプターというデザインで、ある意味さくらっぽさあるよな!


2013-06-17