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サターン、ドリームキャストとセガのプラットフォームでしか遊べなかったシリーズが、帝国歌劇団(1)・巴里歌劇団(3)の2作のPS2でのリメイクを終え。
満を持して完全新作として、舞台と主人公も含めた登場人物を一新してリリースされたのが本作。
基本的なシステムは前作までと同様で、TVシリーズを意識した数話で構成され、その中でアドベンチャーと戦闘シミュレーションが入れ替わり登場。
そこでの行動によりヒロインたちからの評価が変わり、最終的に好感度(信頼度)の高かった1人とエンディングを迎える。
本シリーズで特徴的なのはLIPSと呼ばれるクイズゲームのように指定時間内に選択肢を選ぶシステムで、基本リアルタイムではないアドベンチャーシーンに適度に緊張感を加えている。
本作ではスティックLIPSというプレイステーション2のアナログスティック2本を画面の指示に従って動かすという、極めてQTE的なシステムが搭載されている。
QTEとはシェンムーで採用された、画面に出る指示に従って方向キーやボタンを押す事により、リアルタイムにムービーの展開が変わるシステムである。LDゲーム方式と言った方が通じる人もいるかと思う。
個人的には大好きなシステムなので、案の定楽しく遊んだ。ただ、本作の場合はほぼ静止画が切り替わる程度の演出である事と、状況と操作とのシンクロ感が低いのが残念。
例えば、しゃがむ場面では2本のレバーを同時に下、みたいなことが少ないし、タイミングが悪いと失敗、という事もなく早ければ良いというシステムだ。
難易度上昇を嫌ったのではないかと思うが、状況を特に意識せずに矢印だけ見てるプレイとなってしまう。
また、音ゲーのように次の入力が画面に先に表示されるわけでもないので、テンポも悪い。
結果として、LISPとしてはかなり進化したが、単体のゲームとしてはかなり地味な印象となってしまった。
スティックLIPSだけ取り出して1本のゲームにしても面白い、というレベルに行ける潜在力はあると思えるだけに残念。
上記のスティックLIPSの導入により、さらにアドベンチャーシーンのリアルタイムゲーム性が高まったこともあり、ミニゲームが廃止されている。
この決断はゲーム全体の統一感が出て素晴らしいと思うのだが、先に書いたように、もう一歩バランス調整が上手くできていない。
個人的には「戦闘パートも全部LIPSにしちゃえばいいじゃん!」と思っているぐらいなので、ミニゲームが復活して欲しいとかは毛ほども思わないが。
戦闘パートは、ランダムで発動していた連携技が、コマンドのひとつとなって、2機の間にある敵を複数攻撃できる技となった。
これが非常に強力だし、ヒロインと連携すると信頼度も上がるし、上手く作用している。
また、コマンドでヒロインを主人公の近くにワープさせることができ、呼び出されたヒロインは好感度が上がる。「頼られると惚れちゃう」とゆー分かりやすいシステムだ。
戦闘パートでのヒロインとのコミュニケーションが「ヒロインを前線に出して袋だたきにされそうなところを、かばうコマンドで救って好感度を上げる」という、なんだかな方法しかなかった前作までとうってかわった正しいシステム設計となっている。
本作でもかばうコマンドがあるので、目当てのヒロインは必然的にボコられに出るんではあるが…。
さらに今回の光武(ロボ)は変形して空を飛ぶので、複数の戦場を飛んで移動したり、空中戦を行ったりする。
完全な3D空間ではなくボスを中心にした円筒状の空間の移動に限定して動かしやすくしてあるものの、空中戦での特にターゲット操作のできが少々悪く、他の場面での操作系が洗練されているだけにイライラさせられた。
戦場移動は全体の状況が多少分かりにくくなるものの、まとまりの良い広さで空間を複数に区切ることができるので、個々の戦闘は理解しやすくなった。
何もないところをただ移動するというシーンが発生しにくいのも良い。
シミュレーションゲーマーなら全滅とかありえない難易度ではあるものの、ゲームとして成立する程度に難易度が上がっていて、それなりに緊張感もある仕上がりになっている。
また、大抵はマップの仕掛けさえ理解すれば難易度がガクンと落ちる仕組みなのは、本作の作りとして非常に正しい。
正直なところヒロインたちは、どこ狙っていっていいのか分からなくなっている感じがする。
素直に前作までのヒロインで人気のあったタイプをリファインするような形で良かったんじゃなかろうか。
新しい事に挑戦しようという姿勢は嫌いではないというか結構好きなんだけど、挑戦し過ぎ。
キャラ自体は、それなりに良くできてて、なんだかんだで可愛くなってくる。
…主人公の大河君が一番可愛いんじゃないか、というところでも間違っている気もするが。
舞台がニューヨークなので、服装といい背景のビルディングといいレトロ感が薄く、そこにロボットや巨大戦艦が登場しても違和感がない。
よーするに「よくあるロボットアニメ」に見えちゃう。
レトロな街に場違いな機械というのがサクラ大戦の魅力のひとつだっただけに、舞台設定を失敗したと言っても言過ぎではないだろう。
ショービジネスの町ニューヨークが舞台のわりに演劇部分に力が入っておらず、数枚の静止画で終わって「あれれ?」と思う場面もあった。
全体は4よりずっと長いが、シリーズの他の作品に比べるとコンパクトで、繰り返しプレイが前提のゲームとしてのちょうどいい感じに収まった感がある。
ヒロインも5人+αと、多すぎず少なすぎずでバランスが良い。
街の移動中に発生するイベントとかの配置具合が、もう職人芸レベルで上手く、ぶらぶらしてて何も起きない、ということがほぼない。凄い。
そこで結論。
ゲームシステム的にはシリーズ頂点と言っていい…のに、いくつか間違っちゃった
2013-03-03