STEINS;GATE

対応機種・周辺機器
Xbox360,Windows,PSP,PS3,PSV,iOS
ジャンル
想定科学アドベンチャー
著作・制作
(c)5pb. / Nitroplus 2009

基本情報

 2009年にXbox360用ソフトとして5pb.から発売されたのが最初。
 初見では「Xbox360の日本オリジナル作品と言ったら、Windows版の移植のビジュアルノベルみたいなんが出るのがせいぜいで悲しいね」ぐらいに思っていた。
 本作がXbox360オリジナルであり、相当力の入った作品であったことを知ったのはアニメ化の後というのだから、私のアンテナもボロいものである。

 5pb.とニトロプラスのコラボ企画「科学アドベンチャーシリーズ」の第二弾という位置付けで、他のシリーズとは一応同じ世界の出来事であるものの、さほど深い関わりがあるわけではないようだ。

 このレビューは、かなり後の移植であるiOS版STEINS;GATE HDについて、iPad(初代)によるプレイで行っている。

システム

 基本的な作りは、背景+立ち絵+メッセージウインドウという、オーソドックスなジャパニーズアドベンチャー。
 ではあるのだが、ある一つの制限によって、独特のプレイ感(というかゲームをプレイしていない感)を与えることに成功している。
 その制限とは、通常の選択肢が現れず、分岐は全て(ゲーム中の)ケータイの操作によって行われるということ。
 身近な機械(ケータイ)の操作に選択肢を押し込めることで、選択肢を選ぶという物語的な不純物を排除することができている。

 文章を読んでいるところはゲーム世界中の「現実」なのだが、選択肢が現れると、今ゲームをプレイしているということが強く意識されることになる。
 プレイヤーはゲームをやっていることを了解しているわけだから、ゲームを意識させることの何が悪いのか、とも言えるが、アドベンチャーゲームの場合は、ゲームをやっているというより物語世界に没入している、という面が強い。
 唐突に現れる選択肢に比べ、ケータイは物語内のガジェットであり没入を阻害しない。阻害しないのに選択肢として成立する。
 これは「発明」だ。

 特に、本作はタイムトラベルものなので、現在の世界線の状態を確認する手段として、着信履歴が使えるというのがスマート。
 ケータイを使えば、本編の進行とは別に、各キャラクタとのパーソナルなやりとりを行える、というのもポイント高い。
 どーしてもここだけは普通の選択肢を入れないとゲームが成立しない、みたいな箇所が出てきそうなものだが、一切をケータイの操作で置き換えていて偉い。
 そもそもタイムトラベルものというシナリオがややこしくなりがちなテーマで、携帯の履歴でタイムスタンプを確認できるわけで、その整合性を保つとか、「ぜったい開発担当になりたくない」システムだ。

 ケータイの応答操作によって、各ヒロインのエンディングに分岐していくのだが、その分岐条件はわかりやすい。
 しかし、いわゆるトゥルーエンドに関しては、かなり条件が厳しく、早送り機能があるとはいえ、攻略情報なしにたどり着くのは困難かと思う。
 私も攻略サイトに頼ってしまった。ここはちょっと、条件が緩くてよかったんじゃなかろうか。

 舞台が秋葉原なだけあって、一般には馴染みのなさそうな単語が頻出するし、流行モノの言葉であるため2014年時点でも風化していたりするが、そこは「TIPS」という用語説明システムによってフォローは万全だ。

キャラクタ

 キャラクタデザインは、当時ブラック☆ロックシューターで注目を集めていた、hukeが担当。
 基本的にはアニメ的な絵柄ではあるが、明らかにオタク向けど真ん中ではなく、「上品」な絵柄と言っていいだろう。
 オタクにそっぽを向かれず、それ以外の層も購入を避ける理由にならない、という感じの絶妙なポジションだ。

 秋葉原を舞台にメインキャラクタは、厨二病の自称狂気のマッドサイエンティスト、メイド喫茶通いの萌えオタピザメガネ、トゥットゥルーが口癖のコスプレ好き女子、天才少女で常識人と思いきや重度のねらー。
 せっかくhukeイラストで騙した(笑)客が序盤で逃げ出してしまいそうな濃いメンツだ。
 他にも、巫女の男の子とか、ブラウン管大好きマッチョなんかがいて、猫耳メイドお嬢様が普通のキャラ付けに思えてくる。

 そのメンツに対しての声優のキャスティングが素晴らしくハマっていて、作りすぎな感のある設定のキャラに、「あ、こういう人いるかも」という現実感を与えている。
 そうなるとゲームの中が現実に侵食し、「トゥットゥルー」や「エル・プサイ・コングルゥ」を、つい使ってしまうプレイヤーも多いに違いない。
 私の場合、ネットスラングは発音を聞くことはまずないこともあって、もうスーパーハカーことダルこと(ピザ)橋田の発音で固定されている。

シナリオ

 地の文が主人公のモノローグで進行するが、厨二病主人公なので長広舌に違和感がない。
 またモノローグ部分は音声なしなので、延々音声を聞く羽目にならず、テンポが良い。
 ただ、多くのビジュアルノベル系より少ないとはいえ、まだテキストが無駄に多い感はある。

 それから、作品中に登場する言葉やガジェットの選択が上手い。
 例えば、幾つか現実の商標を許可を取って使ってあるのが、「X68000(ペケロッパ)」と「ドクターペッパー」とか、マニアックでありながら熱狂的ファンを持つガジェットの、ポイントの突き方が上手すぎる。
 そして作中の造語もタイトルである「シュタインズゲート」や前述の「エル・プサイ・コングルゥ」も口に出したくなる厨二言葉として登録したくなる素晴らしさだが、「世界線」というパラレルワールド的概念を表す言葉に関しては、「将来、マジで辞書に載る」可能性が高いんじゃないかというぐらいの、使い勝手の良い名造語である。

 前半はおちゃらけた雰囲気のサークル活動という、オタクはこういうシチュエーション大好きだよなーってところから始まる。
 しかし、中盤から一転、世界の存亡をかけたシリアスな展開へと変わる。
 序盤に単なるその場の冗談かと思っていたような事柄まで伏線として回収されていく終盤に至っては、鳥肌が立つほどのシナリオ。
 マジ神展開じゃね? オカリンかっこよくね? とかもう橋田口調でつぶやいてしまいそうなほどだ、というかつぶやいてたような気がする…俺。

iOS版について

 TIPSを表示するのに、一度メニューを開いてTIPSを選ぶという手順が煩雑。画面にTIPSで解説してある用語が出ているなら、それをタップして解説へ飛べて良さそうなものだが。
 初代iPadでプレイしたせいもあると思うが、早送りしてしばらくすると止まって数十秒から数分ほど進まなくなる。これでは早送りしないほうが早いのではなかろうか。
 あと、ネットワークに接続できない状態でゲームをスタートさせると、最初のCM画面が読み込まれず何も表示されない状態となる(再開プレイでは発生しない)。
 データが壊れたと思って再インストールして、最初から開始してしまった。ゲーム半分ぐらい終わってたのに!!!

 それと、iPadの画面なら問題ないが、iPhoneでは画面というか文字が小さすぎて読むのが辛いだろう。
 iPhoneサイズで、上に立ち絵、下のウインドウにメッセージというレイアウトのベタ移植では、なかなか厳しい。

 という感じで、全体的にiOS版の作りは粗さがある。 

 そこで結論。

高いシナリオの完成度と印象的なキャラクタを両立させた名作