メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ

対応機種・周辺機器
プレイステーション2
ジャンル
タクティカルエスピオナージアクション
著作・制作
(c)KCE Japan 1987,2001

基本情報

 前作メタルギア・ソリッドでは、プレイステーションの限界に挑戦し、2Dから3Dへとシリーズの再生を成し遂げ名作と賞賛された。
 一見シューティングゲームのような作りだが、ゲームの本質はかくれんぼという独特のシステムと、作り込まれたグラフィックと世界観。
 プレイステーション2にプラットフォームを置き換えた続編である本作は、どのような進化を遂げたのか。

グラフィック

 プレイステーションからプレイステーション2へ乗り換え、グラフィックは格段に進歩している。
 前作に続いて、ほとんどのイベントシーンもリアルタイム生成されているようだが、プリレンダのムービーに見劣りしないできだ。
 ハードの限界を突破しているとまでは行かないが、ハードの立ち上げ期でこのレベル、凄い頑張ってるのは間違いない。

 今回は舞台がニューヨーク沖のタンカーおよび海洋プラントである。
 前作に比べて全体的に明るい色調ではあるが、全編人工物の中で展開されるので、前作の自然物(と言ってもほぼ岩だけど)もあった島に比べて、背景のバラエティには欠ける印象だ。
 新登場のキャラ雷電は事前にVR訓練を行っているという設定なのだから、VR訓練シーンを入れたらチュートリアルにもなるし、グラフィックのメリハリもついたろうに。

ストーリー

 とにかくイベントシーンが長い、また通信の会話も長くて緊張感が削がれる。イベントシーンで寝そうになる。
 それらのイベントシーンではカメラ操作ができたりして退屈しないように工夫もされているが、まずイベントシーンで退屈させちゃダメでしょ。
 イベントシーン長いのに一時停止できない、トイレ我慢してたら30分イベントシーンが展開されるとか起きちゃうわけで、酷い。
 全体的に冗長で説明過剰なのだが、逆にセリフに突然入る「らりるれろ」の説明はあってよかったんじゃないか?
 敵の(特にヴァンプの)特殊能力の説明も結局ないし、なんともチグハグな感じが拭えない。

 前作のセルフパロディのような内容は、自家中毒を発症していると言っても言過ぎではないだろう。
 そんなわけで、前作を知らないと何言ってんだか分からないストーリーとなっている。
 一応スタート時のメニューから、前作の内容が文章で読めるが、尋常じゃなく長いので、ゲームの前におさらいしておこうという気にならない。
 逆に前作にあった、プレイ再開時のミッションログ(現状説明)がなくなっているので、状況を忘れてたら通信して作戦内容を聞く必要がある。

 前作の主役スネークを操作するシーンは少なく、本作の主役は雷電という若いイケメンで彼女がオペレーターという設定なのだが、この彼女との会話がうざい。
 セーブするたびに昼メロみたいな「私の事愛してないの?」「いや、そんな事はない!」的なやりとりをはじめるのだ。
 こちとら命をかけた作戦中ですよ。何言ってんだコイツと誰もが思うだろう。
 それにコードネームが雷電なのに、平気でジャック、ジャックと本名で呼びかけてくるし、うさん臭い事この上ない。

 物語は中盤から終盤に向け、二転三転するが、あまりにどんでん返し過ぎて、もう何を信用していいか分からない。
 それに、味方キャラが意味なく死にすぎで、人が死ねば感動すると思ってるだろうと突っ込みたくなる。
 現実感が無いというとまだ救いがあるが、もう単に薄っぺらいレベル。
 前作ではストーリーがゲームに奉仕していたと感じたが、本作は両者が乖離している印象だ。

 雷電のプレイ中にスネークがサポートキャラとして登場するが、伝説の傭兵の凄みを感じるよりも「説教臭いおっさん」という印象の方が強く残ってしまった(あるいはダンボール好きすぎるおっさん…)
 雷電でプレイしたプラント編を、スネークの立場でプレイできると思っていたらそれもなく。ゲーム途中で続きが遊べなくなったような納得のいかないプレイ後感だ。
 911テロの影響でムービーを一部カットしているという事だが、ゲーム本編も1/3位カットしてんじゃなかろうか。
 スネークと雷電のダブルヒーロー作戦は、どちらのキャラにとっても失敗と言えそうだ。

 一般兵の思考が強化され行動バリエーションが増えているのに対し、中ボスは前作に比べて印象が弱いのも残念。

アクション

 基本のアクションは前作を踏襲しつつ操作性を向上させ、アクションを追加している。

 スネークには前転アクションが、雷電にはジャンプと攻撃を兼ねた側転アクションが追加されている。
 更に、ぶら下がりアクションや、壁に張り付いた後のアクションのバリエーションも増えた。
 PS2のコントローラであるデュアルショック2のボタンは、押した時の強弱の判定ができるということを知らない人も多そうな位、この感圧機能を使っているゲームは少ないが、本作の場合は多くの行動がボタンの感圧に対応していて、アナログに操作できるのは面白い。

 壁張り付きアクションの反応が良すぎてすぐ振り向いちゃうので、障害物の上に乗ったり、前にあるものを調べたりする場合、キャラがくるくる体勢を入れ替えてうるさい。
 アクションが増えた分、その他のアクションも直感的操作でなくなってるところがある。
 本作では全武器で主観視点操作が可能となっている。主観視点だと細かい狙いを定められて便利だが、モード切り換えでテンポが悪くなっていて、善し悪し。

 プレイ前に難易度を選べるようになっているが、まずノーマルではじめて、何度もコンティニューするようだったらイージーの選択ができるようになる、という作りが良かったように思う。

 新たに導入された麻酔銃の性能がメチャクチャ高く、隠密ゲームという本作ではバランスブレイカーレベル。
 いやもう麻酔銃さえあれば、他の武器はボス戦や特殊イベント以外は必要ない。
 イージーにだけ麻酔銃が登場するというバランスで良かったんでなかろうか。

 これも新しい武器である刀は右スティックで振る操作になっていて面白いが、残弾の概念がないので、これもバランスを崩すアイテムだ。
 終盤に登場するのでさほど問題にはならないが、面白い武器がちょっとだけしか使えないのも、それはそれで嫌な感じだ。

 武器に限らずアイテムも色々出るが、使いどころがないものが大量にあって、水増し感あふるる雰囲気。

その他

 いろんなものを撃って破壊できたり、鳥の糞にあたったり滑ったり、その他細かいリアクションが大量に用意されていて、作り込みが凄い。
 凄いが、あまりゲームが面白くなる方向には働いてなくて、だからどうしたの、って感想も同時に湧く。

 いわゆるやりこみ要素のドッグタグ集めも、あまりに大量にある上に、プレイしているついでに手に入るわけではなく、ドッグタグを手に入れるためのアクションを行う必要があって、プレイが作業化してしまって楽しくない。

 そこで結論。

ハードの進化分の進化はしているが、引き算に失敗して、ぼやけた印象


2013-05-10