琥珀色の遺言

対応機種・周辺機器
Nintendo DS
ジャンル
ミステリーアドベンチャー
著作・制作
(c)fonfun corporation / althi inc. 2008

基本情報

「刑事J.B.ハロルドの事件簿」シリーズに続き、1920シリーズとして大正時代を背景とした探偵ものとしてリバーヒルソフトからリリースされたのが本作のオリジナル。
 何しろ最初に出たのが1988年という事で、DS版が発売された2008年では、もはや昭和時代が大正時代と同列の過去と言ってもいいくらいになっている。

 私が最初にプレイしたのはFM-77 AV版だったと思うが、文字にアンチエイリアスがかかっていて「すげー」と思った記憶がある。DS版のフォントにはアンチエイリアスはかかっておらず、読みやすさはともかく、グレードダウン感がある。  オリジナル版はPC-8801で、MSX2やPC-9801、X6800にも移植され、PCエンジンには「謎のマスカレード」という変なタイトルで移植されていて、携帯電話版(i-modeなど)もあり、最近はiOS版もりリースされている。
 という、なにげに一定の売り上げのある人気作である。

 フルタイトルは「1920 SERIES 藤堂龍之介 探偵日記 琥珀色の遺言~西洋骨牌連続殺人事件~」である。1920 SERIESの部分は最近の版にはなく、2012年現在のシリーズ名は「藤堂龍之介探偵日記」で統一されている。

 パソコン版の背景グラフィックはセピアカラーで統一されておりいたが、携帯電話版以降は、セピア調モノトーンではないが落ち着いた色合いのカラーで作画されている。
 キャラクタデザインもべた塗りだがアニメ風と言うより、イラスト風でセミリアルに描いてあり、上品にまとまっている。

システム

 コマンド選択型のとにかく登場人物へしつこくインタビューしていくことで話を進めるゲーム。
 ゲームオーバーもないので、とにかく総当たりでコマンドを選択していくプレイスタイルとなっている。
 だから、プレイヤーは推理をしていなくても先へ進める。それが面白いのかと問われると、割と面白いのである。
 本は次のページへ進むをひたすら繰り返して用意された全ての文を読むシステムだが、それが面白い。
 任意にコマンドの選択の順番を選べ、屋敷内を自由に移動できるというインタラクションが付加されている本作も、やはり面白いのである。

 DSの場合、コマンドが下画面に並び、メッセージも上画面の下の方に出るので、上画面の上部にいるキャラクタの表情が変わったのに、多少気付きにくくなっている。
 表情の変化で重要なコマンドであったかどうかは判別して、探偵気分を高めるわけだが、そこが弱くなっている。
 更に、難易度設定が装備されており、「易」を選択した場合には、重要な進展の時に音と軽い画面のフラッシュで知らせるようになっている。
 このシステムで、ますますキャラクタの表情に目が行き辛くなっていて、そこは残念。
 ディスク版でプレイしていた際は、重要な進展があった場合には表情の変化の他にディスクアクセスが発生して分かっていたので、進展を知らせる音は、むしろ昔のプレイ状況を再現しているシステムといえる。

 DSにはタッチペンを利用して手書きメモが取れるシステムがあるが、これはもう雰囲気だけのシステムで、まったく役には立たない。
 メモしたいなら、紙に書いた方がなんぼ便利な事か。

 DS版は十字キーやタッチによって、主人公アイコンを移動させて移動する。
 これは、メニューから移動先を選んだり、部屋をクリックして一気に移動したりするより、建物の構造がよく分かる(実のところ推理で特に理解する必要は無いのだが)。より実際の探偵気分が味わえつつ、操作の軽快さを無くさないシステムといえる。
 部屋の中に人がいる場合に、アイコンで教えてくれるのも良い。

 流石に、何度もブラッシュアップをかけて同じ作品をリメイクし続けてきただけあって、オプションの設定項目や、コマンドのインタフェースデザイン等、非常に良くできている。
 ただ、もーちょっと、台詞も洗練させる事ができたら、もっと良かったと思う。インタフェースも画像もかなり洗練されているのに。

ストーリー

 ストーリーは、大正という時代の雰囲気でもう勝ちみたいなもの。
 個人的にはセガ「サクラ大戦」やヒューマン「御神楽少女探偵団」のような大正期を舞台にした作品が出たのは、本作が先にあったからだと思っている。

 サブタイトルにもある西洋骨牌(タロット)も舞台である富豪の洋館も、ゲームシステム上の必要性でも、トリック上の必要性でもなく、もっぱら雰囲気作りとして使われている。
 謎解きや推理を期待して本作をプレイすると、肩すかしもいいところといえる。
 ただ、その雰囲気重視の作りは、本作に根強いファンがついた事からも、成功と言えるだろう。

 とにかく登場人物が多く、話を聞ける人物だけで30人近くいる。コマンド総当たり型で、この数は多すぎる。
 半数以上が肉親で、その関係を理解するのも相当大変。特に女性の顔が似ていることもあって、混乱しやすい。
 手帳を見れば、そこに相関図がゲーム進行とともに書き出されるような工夫もある。
 途中から協力者となったりして聞き込み用のコマンド数を減らしたりとか、直接の関係がなくなったキャラは館から退場させるとかして、複雑になりすぎないような工夫もある。

 とは言え、役割を幾つかまとめて持たせたりすれば、半分近くに人物を減らせたのではないかと思う。その位、無駄キャラが多い。
 キャラが多いのも、雰囲気を出したかったのが主な理由かと思われるが、流石に多すぎたろう。

 主人公である藤堂龍之介が、ちょっとイヤミな位のハンサムな洒落者である事が、大正期を選択した事とともに、シリーズの雰囲気を特徴づけている。
 かなり個性を作り込んでいるのでプレイヤーとの一体感は薄い。
 ちょっと引いた立場で、捜査を行っている時に出る蘊蓄に「へーそうなんだー」と感心しつつプレイし、照れだす女性にニヤリとしてプレイするのが良い。

その他

 音楽が非常に印象的で、様々な場面にアレンジを変えて同一の曲が流れるため、ゲームをクリアする頃にはすっかり曲を覚えているのではないかと思う。

 そこで結論。

「大正時代にどっぷりハマれる雰囲気ゲーム」


2012-05-02 2012-05-04