フロントミッションオルタナティブ

対応機種・周辺機器
ジャンル
リアルタイムシミュレーション
著作・制作
(c)スクウェア 1997

基本情報

 オイルと硝煙の臭い漂う、男臭さ満点のロボット戦争ゲーム。
 機械の巨人WAW(ヴァンドルグ・ヴァーゲン)を駆使して、戦乱のアフリカを戦い抜け!

フロントミッション」シリーズの外伝的作品として、「フロントミッションセカンド」の直後に発売された。
 外伝という立場を利用して、システムにもストーリーにも野心的な試みが盛り込まれた本作。その試みは、果たして吉と出たか。

システム

 ミッション説明→機体のセッティング→リアルタイムシミュレーションを繰り返してゲームは進行する。

 最大3小隊を扱い、1小隊最大3機という事で、最大9機を操る事になる。
 リアルタイムシミュレーションとしては妥当な数かと思う。

 行軍ルートを線で引っ張ると、その上を隊が進んでいくという、アートディンク「機甲師団」で採用されていた…と思う(かなり前のゲームなんで、プレイした筈なのに記憶が曖昧で)システムを採用している。
 有名な所ではポイントを指定するタイプだが、クエスト「伝説のオウガバトル」の移動シーンが近い。
 本作では、マップ上に中継点が設定されていて、それらをポイントしていく。その事でルートが制限され、ルート設定しやすくなっている。しかし逆に、好きなように動かせずストレスの元ともなっている。

 そして行軍中に敵と遭遇したら、そのまま戦闘に突入する。移動マップから戦闘シーンに切り替わるわけではなく、完全にリアルタイムに戦闘を始める。
 呉ソフトウェア工房「ファーストクイーン」が近いっちゃー近い。

 本作と同じスクウェアの「ファイナルファンタジーVII」のミニゲームに、コレに近いものがあったので、そのシステムをベースに1本の作品として拡大したもの、と言えるかれしれない。
 なんにせよ、あまり比べるゲームも無いような斬新なシステムのゲームであると言える。

グラフィック

 バーニアを吹かしてサイドステップ、武器を撃つと反動でサスペンションが動き、着地ではアクチュエーターの挙動を感じる脚部の沈み込み、なんとも素晴らしい動き。
 このあたり、もはやシリーズ第一作からの伝統芸と言える。1画面に10数機が、わらわらとリアルタイムで動く様は圧巻。メカ好きはこのWAWを見るだけでもやる価値あり。

 特にミッションの導入部で繰り広げられるイベントは、演出やら動きが凄く良くできている。
 何とこれも戦場となる同じマップ上で、リアルタイムポリゴンで展開され、そのままシームレスにシミュレーションに移行する。
 これをPSでやっちゃうスクウェアは凄すぎる。感心しきり。
 リアルタイムでの会話は、できれば音声で展開してほしかったが、そこまで要求するのは贅沢というものかもしれない。

 テクスチャは粗く、1オブジェクトあたりのポリゴン数も少ないのだが、作りが巧いので、むしろ味となっていていい雰囲気。

操作性

 行軍ルートを決める時に出るマップが非常に見にくい。
 特に高さが分かりにくい。素直に高さで色を変えれば良かったのに。
 インタフェースは全体的に、見やすさよりかっこよさを優先させちゃった感じ。

 リアルタイムシーンでは、上の方に3小隊のステータスが並んでいて、LRトリガで小隊を選択した後決定すると、パソコンのメニューのように、プルダウンされるというインタフェース。
 これらなかなか分かりやすいし使いやすいが、リアルタイムで操作しなければいけないので、さらに練り込んでほしかった。
 例えば2種類しか選択肢が無いメニューならば、トグルで切り替わるようにして、サブメニューは出さないようにするとか、メニューにボタンを割り当てて、カーソル移動を不要にするとか。ギリギリまで操作回数を減らす努力を続けてほしかった所。

分かりにくいルール

 最初の舞台が森の中なんだが、これが暗くて何やってんだかわからん。システムを理解する前にこれは無いだろう。
 チュートリアル面無しに、いきなり実戦というだけでも、相当不親切と言えるのに。

 作戦中に攻撃中心と防御中心が選択できるが、攻撃中心は攻撃しかしない、防御中心は防御しかしない。極端すぎるので、結構こまめにプレイヤーが切り替えてやる必要がある。
 集中と拡散攻撃方法が選択できるが、拡散を選ぶ場面はおそらく無い。無駄コマンド。
 集中攻撃を選んだときは、方向キーで選択、○ボタンで決定とマニュアルにあるが、結局クリアしても、この意味が分からなかった。

 これ以外にも、マニュアルの記述の意味が分からないものがあるとか、「お金という観念(概念の間違い)」みたいなミスとか、字が小さくて読みづらいとか、必要な記述が無くてゲーム画面の意味が分からないとか、直前で仕様変更が多くあったと見え、画面写真や説明が実際と異なるとか、かなり出来がよろしくない。
 マニュアルのせいで、無駄に難易度を上げている。

ストーリー

 時代的にはフロントミッション前史となるので、ヴァンツァーよりもより無骨なWAWというロボットが主役となっている。
 ゲームアーツ「ガングリフォン」のように敵に戦車が出て来たりするのが、ロボット兵器との対比として面白い。

 ミッション説明で、作戦の終了条件や地形の情報は必要だが、大局的な情報はゲーム的には不要。国家間のアレやこれやの状況が説明されても、正直良く分からん。
 その上、章毎に説明される状況は、しばらくすると消えちゃうので、落ち着いて読めない。
 別に作戦ファイルみたいなものを作って状況とか用語とかをファイリングしておき、読みたいプレイヤーにだけ読ませれば良かったんではなかろうか。

 大局的なものは置いておくとして、個性的なキャラクターの掛け合いがなかなか面白い。途中で、ものすごいアバンギャルドな展開もある。…でも腐女子はこのゲーム買いませんけどね(ネタバレぎみ)
 その個性のあるキャラクターも、WAWの操縦という意味では、まるっきり無個性なのは残念。

 本作は、主に作戦の達成度で分岐するマルチシナリオとなっている。
 比較的クリアまでの時間がかからないので、繰り返しプレイには向いている。
 というか、システムが非常に分かりにくく、2回目のプレイでやっと意味が分かってくる位なので、マルチシナリオで良かったなー、という感じ。

避けろよーーーーっ!!

 しかし、このゲームの難易度を上げているのは、戦術のどうこうというレベルではなく、障害物に引っかからないように進軍させる事の困難さにある。
 WAWは障害物をほとんどまるっきり避けないのだ…仕様がなく進軍ルートを変えて救い出してやる必要がある。
 障害物避けに関しては、いくら何でもこれよりいいプログラム書ける、と思った位。
 もう他のいい所は、全部帳消し。もうゲームになってないレベル。

 同社のアクションRPG「聖剣伝説2」でも、いくら何でもって位キャラクターが引っかかっていたのを思い出す。
 スクウェアって壁避けプログラム不得意なのか?というか、壁に引っかかる事を悪いと思ってないような気もする。

 障害物避け以外でもオート行動プログラムはアホで、壁に向かってガンガンミサイル打ち込んだりしてヒドい。人が乗っているとは思えん。

 そこで結論。

「新しい試みをしたが…だから避けろっつーんだよ!!クソがっ」


2005-02-23 2005-09-28