ファイナルファンタジーVII

対応機種・周辺機器
プレイステーション
ジャンル
ロールプレイングゲーム
著作・制作
(c)スクウェア 1997

 ROMカートリッジから、CD-ROMに舞台を変えた、超人気RPGシリーズ。
 はたしてその内容は?

 FFシリーズの、任天堂プラットフォームからSONYプラットフォームへの移籍のニュースは、ゲーム業界に激震をもたらした。
 そもそも、演出重視のスクウェアであるから、CD-ROMマシンに乗り換えるのは自明であったので、個人的には「それほどのニュースなのか?」とも思ったのだが、結果を見ればプレイステーションの一人勝ちの原因となったソフトであるのは否定できないだろう。

 また、このFFVIIの体験版が付いた「トバルNo.1」と言うソフトが、分不相応なヒットを飛ばした事が話題にもなった。
 コレに関しての私の立場は、「体験版につられてソフト買う奴には買わしとけ、商品に自社の広告をつけるのは当たり前の事だ」と言う感じ。
 逆に、体験版を遊びたいがために買った人間が多すぎたため、体験版同梱のソフトに悪いイメージを与えてしまったのは良くなかった。体験版の同梱に自粛ムードすら漂ったほどだ。
 私はこの事に関して、一辺もスクウェアが悪いとは思わない。勿論スクウェアに体験版をつける事で「トバルNo.1」の売り上げが伸びるだろうと言う思惑は大いにあっただろう。だが所詮体験版である、「トバルNo.1」を遊びたいと思ってない人間が買って文句を言っても、完全にあさっての方向への文句と言って良いだろう。

 さて、ゲーム本編と関係ない話はこの辺にして。
 まず、当時としては飛び抜けて技術レベルが上である。居並ぶプレイステーションソフトの中にあって、このソフトだけ別のプラットフォームで稼動しているような印象すらある。
 SONYが全面的に技術協力したとか、それまでのゲームではなかったハードウェアの奥まで直接叩くプログラムが行われているとか、そのような理由はあるにしても、このソフトがPSソフトのレベルを、ものすごい力技で押し上げたと言える。

 今回から、天野喜孝はイメージのみで、キャラクターデザインは別になっている。
 これは、かなりがっかりな事と言える。天野氏の絵がファイナルファンタジーの「ファンタジー」の部分を一手に支えていたといっても過言ではない。新しいキャラクターデザイン が下手なわけでも、魅力が無いわけでもないが、天野氏の絵と比べると「十人並み」である。

 今までもどんどんSF色が強くなっているシリーズだが、本作ではファンタジーよりもSF色の方が強いぐらいにSFチックである。
 ただ、サイエンスフィクションとしての面白さがあるかと言えば、それはほとんど無く、SF的ガジェットを借りてきただけ、とも言える。
 このような借り物感がストーリーの方にもあり、書き込まれたCGとは逆に「なんだかスカスカ」な印象となってしまっている。

 要所で挿入されているムービーのレベルは当時を考えれば恐ろしく高い、3DCG環境が著しく整った今でも、生半可な会社では作れないだろう。
 ただ、ゲーム本編とはあまりに雰囲気が違うので、ムービーが始まるとゲームの世界から放り出されたような気分になる。せめてキャラクターは戦闘シーンのモデルを流用して欲しかった。戦闘シーンのモデルはかなり良いできなので、それでも十分消費者にアピールできたと思うのだが。

 町やダンジョンの移動シーンは、プリレンダーの一枚絵の背景にリアルタイムポリゴンのキャラクターと言う「バイオハザード」と同じ方式であるが、PSのRPGとして採用したのは初めてだったと記憶している。
 この方式の利点は、チップ単位でないので背景が自然になる事、場所ごとにカメラ角度を変える事ができる事など。
 欠点は容量がかさむ事、ルールとの関連付けが難しくハッキリ言ってRPG向きではない事。つまり、チップで無くなったため、どの部分がボタンに反応するか、どの部分がしないか、どこが歩ける部分でどこが障害物か。そんなルールが非常に分かりにくくなっているのだ。
 それ加えて混乱に拍車をかけるのは、明らかに道が続いているのに「透明な壁」が邪魔して進めない場所が極端に多いことである。
 これでは、進める場所も「進めないのではないか?」と思って見過ごしてしまう事にもつながる。
 後に出たインターナショナル版では、進める場所に矢印が出るという、いかにも付け焼き刃的な対処がなされた。
 また、カメラアングルの問題で、十字キーとキャラクターの進む方向が感覚的に一致しなかったり、キャラクターが小さすぎて操作が困難だったりする事もある。
 このように、初の挑戦である事もあり、背景には問題点が多く現れている。
 もちろん画像自体はよく描かれており、キャラクターとの重ね合わせも見事であるし、時々ムービーの背景の上にポリゴンキャラクターが乗る部分などは、驚異的な技術力であると言える。ただ、ゲームとしてみると今ひとつである。プレイしていて背景に手触りが無い。

 このゲームで、一番バランス良くできているのが戦闘シーンといえるかもしれない。
  IVから採用されているアクティブタイムバトルは、やはり面白い。マテリアというアイテムを武器や防具に組み込んで魔法やその他の能力をカスタマイズすると言うアイディアも楽しい。
 それに、装備品によって変わる味方のグラフィックや、敵味方のモーションのできの良さ、モデルのクオリティ。CDからの読み込みの早さ。ほとんどどれをとっても当時としては最高である。
 ただ各種演出が長いのは問題で、特に召還獣の演出は長すぎる。威力の強い攻撃は「相手の攻撃回数を減らして、こちらがダメージを喰らう量を少なくする」という目的で使うのは勿論だが、プレイヤーにとっては「早く戦闘を終わらせる」と言う目的が大きい。だが、召還獣はちっとも時間短縮にならないどころか、逆に長くかかってしまう。ダメにも程がある。
 また、行動対象を指定する場合、カメラ位置によって、極端に分かりにくくなる事があるのは問題。

 町の名前やアイテムの名前が相変わらず分かりにくく、どの武器が強いのかとか町がどのへんにあるのかとか、なかなか記憶に残らない。グラフィックは凄いがテキストが弱いという、FFシリーズの弱点が露呈している。

 メニューの出来は非常に良く、メニューの操作をしているだけで気分が良い。
 どうも、メニューの評価があまりされてないので強力に言いたい「FFで一番出来がいい部分はメニューだ!!」と。
 先に書いた通り、他の部分はあんまり気持ち良くないと言うか、失敗。

 ミニゲームが多く入っているが、グラフィック以外は本編との整合性はほとんどない。
 それぞれのゲームの出来はそれほど良くないし、そもそもRPGにアクションやタクティカルシミュレーションが入っていてどれほどうれしいのか疑問だ。沢山ゲームが入っていてうれしいと言うより、どちらかと言うと邪魔。ゲームに散漫な印象を与えてしまっている。

 全体的にハッタリを重視している部分が多く、一見凄いがプレイしてみるとイマイチと言う部分が多く、ストレスとなっているのは否定できない。
 このあたりの会社色は「ウィル(デストラップII)」から全く変わっていないと言えるだろう。

 イベントシーンで表示される台詞は、ウィンドウの大きさと位置を変えて、キャラクターのそばに表示されるようになっている。
 漫画のフキダシに近い方式で、誰が話しているか直感的に分かる非常に優れた手法である。さらに一歩進んで、フキダシとと同じ様にシッポも付けて欲しかった所だ。

 ちなみに、評価の高いゲームだから、あえて悪い所を多く書いたというわけではない。
 どーにも方向性が嫌いで、好きになれないゲームである。

 そこで結論。

「すごいゲームだが、すばらしいゲームではない」


2003-03-19