X-MEN CHILDREN OF THE ATOM

対応機種・周辺機器
SATURN
ジャンル
格闘アクション
著作・制作
(c) MARVEL ENTERTAMENT GROUP 1994 (c)CAPCOM 1995

 ストリートファイターIIで、格闘ゲームブームを作り上げたカプコンが、アメリカンコミックスの巨頭マーヴルと組んで、格闘ゲームの新境地に挑戦。
 超人達の放つ強烈な必殺技は、もはや格闘ゲームの枠を超えたバトルを展開する。

 このゲームがアーケードで発売されたのは、革命的な出来事であったSEGAのバーチャファイターがヒットをとばした後である。
 格闘ゲームのトレンドを作ってきたカプコンとしては、かなりビリビリと刺激を受けたであろうことは想像に難くない。
 それをもう一度ひっくり返してやろうという意気込みがゲームのあちこちから伝わってくる。

 X-MENは、当時日本でもTVアニメシリーズが放映されるなど、かなりタイムリーな素材であり。アメリカの方でも、1963年から始まったこの長期シリーズは、バットマンやスーパーマンなどと並ぶ人気シリーズであり、戦隊ヒーローもののような多人数ヒーローものであることから、格闘ゲームとしては、このスタイリッシュなコミックスはうってつけの素材であった。

 アーケード版は、アニメのセル画のようなタッチでキャラクターが描かれ、実に滑らかに動いていた。残念ながらサターン版では完全再現とはいかず、パターン数がかなり減っているが、サターン参入初期のラインナップとしては、クオリティの高いものになっている。
 ただマーヴルの方の目が厳しくて、キャラクターのアップなどはカプコンらしさが削がれているのが残念。逆にアメコミの画風を取り入れることによって、このゲーム以降のカプコンのグラフィックレベルが一段上がった部分もある。
 原作の再現度というところでは、一部のキャラクター特性などに多少疑問があるが、動きや必殺技など、かなり納得のいくものに仕上がっている。開発者に相当な好きものがいたに違いない(そのわりにガンビットが居ないのが不思議だ)

 ゲームシステムとしては、画面全てを覆うビームなどの超派手な必殺技や、画面を超えて跳んでいくスーパージャンプ、攻撃特性が大きく変化するダッシュや、ほとんどあらゆる場面で決まる追い討ち攻撃など、実にけれん味のあるものになっているにもかかわらず、(初めてにしてはというただし書きがつくが)かなり高いレベルでバランスを取ることに成功している。
 超人をキャラクターにするとこで、「これ以上やってはダメだろう」というタガが、いい方向に外れた結果と言え、演出も含めて好き放題やっているのが心地よい。

 コンピュータのレベルは格闘ゲームというより、アクションゲーム的なバランス調整がしてあり、特にボスクラスのキャラクターでは、じっくり遠距離から体力を削ったり、パターンにはめることが重要になっている、これは対戦のための練習としてコンピュータ戦を使えないってことだし、せっかくの爽快感のあるシステムをコンピュータ相手では使えないということでもある。これは、どうにかしてほしかった。
 また、オートガードや簡単な必殺技コマンドなど、初心者を取り込む工夫がしてあるわりに難易度が高いのも、調整ミスと言える。

 体力ゲージ下のキャラクターの顔の色で、気絶するまでどのくらいかがわかるようになっていたり、パワーゲージが溜まった時にキャラクターの周りにオーラが出たりと、細かい部分での工夫やシステムは見事なものである。
 ダッシュやスーパージャンプを絡めた戦い方のバリエーションが多く、通常技を連続してつなげていって最後に必殺技までつなげることができたり、倒れた相手や吹っ飛んだ相手を追い掛けてダメージを与えたりできる、また必殺技がボタンによってかなり性質が変わるので、初心者と上級者では丸っきり戦いのバリエーションが違ってくる奥深さを持っている。
 逆にいうと、初心者と上級者の差が強烈に大きく、色々なシステムを理解しないと、全然面白くない。

 ハイパーXは波動拳コマンド+パンチボタン3つ同時押しなのだが、パンチボタン3つ押しがダッシュコマンドとなっているので、すごく暴発する(ボタン2つでも出ることをマニュアルに記しておいてほしい)
 通常技による打ち上げ攻撃の後のスーパージャンプキャンセルで追い掛けからの連続技は面白いが、非常に難しい。これは、後のシリーズでエアリアルレイヴとして昇華されることとなる。
 細かいことでは、コマンドで挑発が出るキャラクターがいるが、サイロック以外は、絶対自力で発見できないような複雑なコマンドになっている。たぶん、真侍スピリッツのぬいぐるみコマンドの影響だろうが、良くない影響である。後のシリーズでは専用のボタン(アーケードではスタート)を使うようになる。
 他にもシステムとして洗練されていない部分が多いが、このゲームでしか使用できない面白いキャラクターも揃っているので、シリーズの第一段である「X-MEN」で遊ぶ価値は十分ある。
 ただ、残念ながらボスクラスの敵は使えない。
 代わりといってはなんだが、ゲストキャラクターとしてストIIシリーズの豪鬼が出演していて、所謂裏技(自力発見不可能だろう)を使って使用できる。このキャラのゲスト出演が後に「X-MEN VS STREET FIGHTER」のアイディアを生み出したと言えるので、ゲーム的にはたいした役割ではないが、カプコン格闘シリーズの流れから言うと非常に重大なことであったと言える。

 バーチャファイター人気をひっくり返すことは出来なかったが、色々な意味で後の「マーヴルスーパーヒーローズ」「X-MEN VS STREET FIGHTER」「MERVEL VS STREET FIGHTER」「MERVEL VS CAPCOM」と続く人気シリーズのシステムの方向性を決定付けた傑作といえる。

 そこで結論。

「派手さと丁寧さの融合した傑作」

VSものもいいけど、X-MEN2を作ってくれ。


1999-09-20 1999-10-10