暴れん坊プリンセス

対応機種・周辺機器
プレイステーション2
ジャンル
痛快! 娯楽RPG
著作・制作
(c)MARS /アルファシステム/桜瀬 琥姫(Rig・Marge)/角川書店/ESP 2001

基本情報

 天外魔境シリーズや俺の屍を越えてゆけで、ゲームファンにはお馴染みの「ヘンなゲームなら俺に任せろ」的ゲームデザイナー桝田省治が送るRPG。
 ガストのアトリエシリーズの初期ビジュアル担当の桜瀬 琥姫をキャラクタデザインに迎え、ファンタジーな雰囲気だけどタイトルは「暴れん坊」でジャンルが「痛快! 娯楽」??
 これで普通のロールプレイングゲームの筈がない!

がっかり

 PS2の初期タイトルのひとつで、私が好きな桝田さんがゲームデザインしてて、プリンセスと名がついているだけでつい買ってしまうようなプリンセスゲーム好きな私であるので、PS2の個人的キラータイトルと言っても良いものだった。
 いきなり結論を書くと、このゲームは桝田ゲームの評判をかなり下げたと言わざるをえない、というか2013年現在も桝田ゲーランク(あるんか?)の最下位をウロウロしている。
 有り体にいってつまらなかった。

戦闘システム

 大抵のRPGの戦闘はレベル上げて[戦う]コマンド連打になりがちで、折角のシステムが活かされていない。
 RPGの基本的なシステムでもバランス調整によって、シミュレーションあるいはパズルとして十分な面白さが出せる筈だ。
 というようなコンセプトで戦闘システムが作られているように思う。それ自体は良いことだ。

 アクションのボス戦だけやったら面白いんじゃないかというコンセプトの、コナミ究極戦隊ダダンダーンやカプコンロックマン・ザ・パワーバトルと近いものがある。
 しかしクリアまでの8話に8戦闘(+α)しかない。…少なすぎだろ、いくら何でも。システムに慣れる前にクリアしちゃいかねない。というか私はそう。
 事前に戦闘訓練ができるようになっているが、出てくるのは実際の敵と同じだし、経験値やお金が溜まるわけでもないので、クリアしてもストーリーが進まない本番、という訳の分からないものになっている。

 戦闘回数が少ない割にシステム過多で、ジャンケン式の3すくみや、攻撃タイミングによる相殺、能力を変更するアイテムや魔法、やる気による選択コマンドの増減、などなど。
 エンディングを迎えるまでに一度も使わないコマンドが「大半」だ! ひどい!!
 難易度が選択できるものの、一番簡単なレベルでも初見で敵を撃破するのは困難。

 更に、戦闘中のテンポやインタフェースも熟れておらず。突っ込みだすと大変な量になるので省略するが、繰り返しプレイ前提のシステムで、なんでこんなテンポ悪い仕上がりになっちゃったのか…トホホ感炸裂。

アドベンチャーシーン

 戦闘シーンに至るまでにドラクエ型RPGの街シーンが存在する。
 RPGがアドベンチャーゲームと取って代わったのは、物語が進まなくなった時に戦闘というやる事があるということ。
 そこでレベルアップする事により、難しいボスキャラなどを適当にプレイヤーがバランス調整することができたことが、あると思う。
 ボス戦しかない本作は、まるっとこのメリットを捨てちゃっている。

 それに代わる斬新なアイディアが搭載されているわけでもなく、アドベンチャーゲームとしても特に凝った謎解きがあるわけでもない。
 ほぼ「おつかいイベント」で構成されている上に、マップが無駄に広い。毎回城から外に出るまで延々走らないといけないとか、テンション落ちまくりである。
 更に加えて、イベントシーンが無駄に長い会話劇で構成されていて、眠い。なんだこれ、睡眠導入剤か!!
 豪華声優陣の無駄遣い!!!

 あと、アイテムは戦闘直前にまとめてぶわっと渡されて、それから組み合わせるため、買い物の楽しさはないし、どんな性質か分からないまま戦闘に突入する。
 もちろんアイテムの説明は書いてあるが、戦闘前に全部読むか?ほぼ100%のプレイヤーが読まないだろう。
 もし読んだとしても、一度使ってみないと効果が実感できないのが普通ではないだろうか。

やる気システム

 キャラクタのやる気によって、戦闘時に使えるコマンドに大きく差が出るシステムなので、いかに戦闘シーンに入るまでにやる気を高めてやるかが問題となる。
 しかし、ボス戦に参加するキャラクタはシナリオ側で決まっていてプレイヤーに選択権がないので、ボス戦に行くまで戦闘メンバーがはっきりしない。
 とりあえずお気に入りのキャラのやる気を上げておいたら、メンバーから外れて意気消沈、という場面が繰り返される事になる。
 テンション下がる事おびただしい。

 戦闘シーンに入るまでのやる気は、10個のアイテムを適当なキャラに振り分けてプレゼントするか、途中で現れる選択肢に答える事で増減する。
 その場にいないキャラも含めて、全体ではちょっと上昇するぐらいっぽいが、やる気が落ちるキャラも多く、印象的にはゼロサムゲームである。
 プレゼントをもらって上がる方は分かるが、貰えない方が下がる意味が分からん。サブキャラ内で、どんだけ情報網が巡らされてるんだ。
 会話の選択肢に至っては、ランダムじゃなかろうかと思うほど、脈絡がない。
 3話目ぐらいで「このシステム、意味ねーんじゃねーの?」と思いはじめても無理はない。

 戦闘シーンでの選択肢は、「完全にキャラに任せる」「キャラが提案した10個ぐらいの選択肢から選ぶ」「プレイヤーが指示する」というバリエーションがあるが、キャラの自主性がない選択肢ほど、やる気が落ちる…これが面倒。
 先にタイトルを出した俺の屍を越えてゆけも、ほぼ同じシステムなのだが、あちらは雑魚戦が沢山あるので、戦闘が楽になるメリットがある。
 しかしこちらは、ボス戦しかないのにキャラが指示をいやがるとか、プレイヤーとしては面倒なだけで、もうホント勘弁してくれと言いたい。

溢れるチグハグ感

 よく考えると本作とセガサクラ大戦シリーズは似ているというか、大枠はほとんど一緒である。
 アドベンチャーと戦闘が繰り返されてTVアニメ(ドラマ)シリーズの1話を構成し何話かをクリアするとエンディングに至る。
 アドベンチャーシーンで仲間のキャラクタの信頼度を高めていき、戦闘シーンに反映される。
 戦闘時に「速攻で倒す」とか「被害最小限」とかキャラクタによって好みの戦術があり、それが評価に反映されるところなどサクラ大戦より良いんじゃないかとも思う。

 しかし問題は既に書いた…部分以外にもまだまだあるのだ。
 まずグラフィックが、コメディタッチの内容の割に全体に暗い色合いな上に、さほどできも良くない…。
 悪いというほどでもないが、キャラクタデザインを活かせてないというべきなのか3D向きのキャラデザインができてないというべきなのか。
 時代劇のパロディ風の台詞や音楽・効果音と、ファンタジーバリバリのキャラや背景グラフィックが、なんとも折り合いが悪く、最後まで違和感のあるまま。
 繰り返し前提のシステムなのに、エンディングが分岐しない(繰り返すとおまけが変わる)とか、それぞれのシステムが融合してない。

 インタビューとか読むと、このへんぜんぶ桝田さんは分かっているようなんだけど、なんで最終的にこれでいいと思ったんだか…謎だ。
 いや、時間や予算がなかったとしても、削るべきところはいくらでもあるように思えるんだが…まさかドラマシーンを先に録っちゃったとか?

 そこで結論。

良い素材を集めたが、最終的に落としそこねて駄作に


2013-03-09