カイト配列キーボード

 現在主流のASCIIとかJISとかのキーボードがあまりに使えねーものなので、改良版キーボードを考えてみる。

コンセプト

現状

 キーボード考2002-03-22を書いてから、キーボードを取り巻く状況はさらに悪化している。Macユーザーですらファンクションキーがないと不便だと洗脳されている。
 新しい流れとしては、キートップにディスプレイが載ったOptimus Maximusと、マルチタッチのパッド装備のMacBook AirμTRONキーボードの発売…ぐらいか?
 だが、いいかげんCPUを速くするという方向性ではものが売れないということは、Windows Vistaの売れなさっぷりで証明された。CPUを速くして重いOSを快適に使おうなんて考えるより、同じCPUで軽いOSを使い続けた方がいいと考えるのは全く正しい。
 そうなると、価値をユーザインタフェースの方に求めていくのは当然だ。

参考リンク : キーボード - Wikipedia鍵人 Kenjin

まず安い必要がある

 理想のキーボードなのだから、金は惜しまず出すのが当然。と言わんばかりのエルゴノミクスキーボードなんか、アホかとおもう。
 理想的キーボードより、まずはより良いキーボードだ。
 1/100000の人間が理想のキーボードを使うのではなく、全ての人間がより良いキーボードを使った方が良い。

 斜めにキーを配置したり特殊な形のキーを使うと、コスト上昇につながるので極力避ける。
 キーの数はとにかく少ない方が良い。
 理想的には、キートップはディスプレイになっている方が良いが、コストの面から現状は断念するのが現実的。
 キー毎にLED一つなら、さほどコストアップにつながらないかもしれないが、それではあまり使い勝手の向上も望めない。…案外搭載してみると、素晴らしい使い方が発明されたりするのかもしれない。

 また、キーボードでは打鍵感は極めて重要な要素の一つだが、堅牢で心地よい打鍵感を追求すると高価になりがちなので、主にレイアウトによる操作性の向上を考える。
 まずキーボードは色々なものがあって不満なら買い替えていいのだ、ということを認識させなければいけない。高いのを売っていくのはその後だ。

取り回しが簡単

 キーボードを打っていないときのことを考えていないというのは、エルゴノミクスキーボードがしばしば犯す間違い、というかほぼ間違いなくやってしまっている間違い。
 しまっておくことや持ち運ぶことが困難で、卓上のスペースを占有するキーボードは、果たして使いやすいのだろうか?大いに疑問だ。

 使いやすいキーボードは打ちやすいだけでなく、「片付けやすく」「持ち運びやすく」「コンパクト」である必要もある。
 このことからも、キーは少ない方が良い。

位置による考察

最上段のキー

 ノートPCの最上段のキー(現状ではファンクションキー)は、縦が狭いことが多い。これは「別に無くても良いようなファンクションキーなんかに貴重な面積を割くのはアホらしい」という極めてネガィブな理由で狭いのだと思う。
 だが、最上段こそ本来は大きなキーであるべきだ。

 というのも、そのキーより上にはキーは無い訳だから、タイプするユーザの感覚としては「ホームポジションの二つ上」とかではなく、「一番外側」ということの方が強く意識される。
 当然、動きはかなり荒くなる。そんな荒い動きで縦の幅が狭いキーを押せるか?そりゃ何も無い板を叩きまくりですよアンタ。
 そこで、最上段のキーは他より縦を広く、そこから先に指が走ってしまわないように指が当たるような角度が付いているといい。
 そして、押すだけでなく奥に倒すような感じでもキーを打てるとなお良し。

 これは、Mac OSの一番上のメニューと近い理屈だ。Winのメニューはウインドウにくっついているのでマウス移動距離が近くて使いやすい、とか言うのは「マウスを二次元の一点に正確にポイントする」ということに苦労しないマウス使いの上級者にだけ通用する理屈だ。
 画面の一番端というのはそれ以上ポインタが動かないので、ポイントするために必要な動きは一次元となり、ずっとポイントしやすくなる。ちなみにディスプレイの四隅は更に自由度が下がるため、もっとも確実にポイントできるUIで利用しない手は無い絶好の位置、マジックコーナーだ。MacではExposéの実行等に利用できる。Windowsは…なんかありましたっけ?
 ちなみに、Mac OS Xのどのバージョンだったか忘れたが、あろう事か「メニューの一番上をクリックしてもメニューが出現しない」というとんでもない状態があった。今は私が「一番上に判定入れんとか、何のために上にメニュー置いとるんじゃおどりゃ!!」とメールを送ったから修正されている(断言)。Mac OS Xを快適に使えるのはジョブズのおかげではなく私のおかげだと言っても過言ではない。

左右のキー

 上部のキーに言えることは左右でもほぼ同じなので、キーは横に広く外が盛り上がっているべきで、横に倒すように押せると良い。
 ただし、上部キーは親指を除く全ての指が使われるのに対し、左右は小指のみが使われる。

 自然にキーボードに手を置いたら手は内側を向く、そのため小指は上気味に位置することになり、結果下部は打ちにくい。ホームポジションのまま打つのはほぼ不可能。
 その意味からは、ここにキーを配置するのはありえないが、小指で打たなくても良いと考え、小指の付け根や手首で操作するキーあるいはその他の何かを配置するのはアリかと思う。

 左上と右上は、前述のマジックコーナーにあたるキーなので思いっきり大きくても構わない。
 まず、左上のESCキーは、メインキーから離れていることも多いが、これは [ 1 ]キーの隣りにあって良いだろう、同時にファンクションキーを駆逐することで、キーボードの横一列を完全に無くし縦を縮めることができるのが大きい。
 del(BS)キーはかなり使う頻度が高いが、その先の位置にもキーがあるため誤爆を誘発する。
 F12(キーボードによって異なる)、insertが暴発二大巨頭だ。
 ただ、ESCとBSが左上と右上を占めるに相応しいキーかどうかは、多少怪しい。

 US配列でもそうだが、特にJIS配列は、右小指の負担が大きすぎる。小指はか弱いのよ労ってやって。
 ちなみに私が親指シフトに変えたのは、JIS配列のカナ入力で右小指が痛くなってしまったからだ。

 delはCtrl+H、retrunはCtrl+Mで打つようにしたのも、同様の理由が大きい。tabは結局小指でCtrlを打つので、なんとなくでしかCtrl+Iは使わない。
 右も左と同様にメインキーで小指に割り当てるのは、一列だけにしてしまおう。
 そうなると、記号類の場所が無くなってしまうが、英字を打つ時も親指シフトを活用すれば、メインのキーに記号が割り振れて、押しやすくなる上に、キーボードショートカットの覚え方のバリエーションも増えて、まったく良いこと尽くめだ。

中央のキー

 キーの形は正方形が多いが、ノートPCでは横長の長方形のものも少なくない。
 この横長のキーが割と使いやすい。というのも上下の幅が縮まるので、数字キーがホームポジションに近く、打ちやすいのだ。他のキーも近づくので指の動きが少なくなる。
 勿論、キーの面積が小さくなるのだから、キーボード全体もコンパクトになる。

 シンドリカル(円筒状)であることは、まず間違いなく打ちやすい。これは多少コストアップにつながっても、シンドリカルである方が良いだろう。
 シンドリカルの利点は指を曲げたり伸ばしたりした時の動きに自然な形になることだ。
 キーボードは奥が低くなる形がいい。キーの段差も逆ステップスカルプチャとなる。欠点はキートップが読みにくくなること。
 結果、手前のキーは指を引き寄せるようにして打ち、奥は突くように打つことになる。
 形はKinesisに近くなるが、あそこまでやると、腕を動かさなくてよくなる→指に負担がかかる、と考え、多少は肘から動かす動きも入れた方がトータルとして楽になるのではないかと思われる。何よりコスト上昇と取り回しの面倒さは、最初のコンセプトと反する。
 また、奥が低くなると、手首を机に置くことによってタコができることや痛みを和らげる効果があると思われ、パームレストという付け焼き刃的な対処はおそらく不要となる。

 現行のキーボードは上に行く程左にズレているが、このズレに意味は無い。だいたい私が本格的にコンピュータに触れたのはMZ-80Kが最初だが、あれはキーボードの列びが直交していた。斜めにズレたキーボードに慣れるのに苦労した記憶があるし、この全然使いやすくならないズレを不思議に思ったものだ。
 とはいえ完全に直交しているより、上部ほど中央に向ってズレている方が、手の向きを考えると自然だ。
 一見した形はAタイプキーボードに似ているが、左レイアウトを右の反転とし、μTRONキーボードのように左右対称にするのが正解だろう。
 μTRONキーボードはほぼ正解だが、いかんせん値段が高い。クオリティに見合うとも言えるが、とりあえず試すことができなければ、その高いものを購入する理由も出てこない。

真ん中のキー

 手首のひねりを自然になるように前方に置くと、手は立つ。上から押さえるというより、何かを抱えるような形なる。中央を高くしておくと、この理想的な形に近くなる。
 また、最高点が決まることで、左右の指の使い分けがはっきりし、Tを打とうとして勢い余ってYを打ってしまうようなミスを防ぐことができる。

 左右に完全に分割するという方法もあるが、コストアップにつながるので一体型を選択するのが無難。
 しかし、使ったとこは無いが、左右分割キーボードはもの凄く楽になりそうな予感がするので、コストとの折り合いがついたら、ぜひ実現してほしいところ。

下のキー

 要するに親指で押すキーなのだから、中央に無いと押せない。
 小指で押すなどは無理矢理にも程がある。
 しかし、親指は自由度が高い指である。ゲームパッドなんかは平気で親指一本に6個のボタンを任せてしまっている。
 メインキーを薄くし、上のキーを取っ払った分だけ、中央下部にキーを配置してやれば良い。
 以前、手前上面ではなく側面にボタンやトラックボールを配置したノートがあったとおもう(記憶によればNEC製)が、トラックボールは最悪だったが、ボタンは非常に意味がある。
 親指は他の指とほぼ90度ずれて付いているだから、本来側面にボタンはあるべきで、手が掴むために発達したことを考えれば、ボタンはキーボードの裏面に付いていたっていい。上から下に打ち下ろす現在のキーボードは、甚だ不自然な親指の使い方をしているといえる。
 以前からキーボードは手前に傾斜させた方が良いのか、奥に傾斜させた方が良いのかという「チルトスタンドは手前か奥か問題」があるが、あれは親指が手前、その他は奥に傾斜させた方がイイというのが正解だ。つまりチルトスタンドの問題ではなく、キーボード中央で山形になっているべき。

ポインティング手段の考察

カーソル(方向)キー

 文字を打つための装置であるからには、文字の編集のためのキーは重要で、その中でも特にカーソルキーは重要だ。
 カーソルキーは文字の入力中だけではなく、グラフィック等の編集中でも多用するので、その位置は重要だ。

 現在カーソルキーはほとんどの場合、右側のメインキーとテンキーとの間に存在するため、右手で操作されている。
 しかし、左手でCmd(Ctrl)キー等と組み合わせたショートカットを操り、右手でタブレット等のポインティングデバイスを操るのは画像制作では基本。
 しかし画像を正確に上下左右方向に移動させたい時にカーソルキーをつかうため、その時だけ右手をキーボードに持ってくることになってしまう。この際、左手でカーソルキーを扱えると快適だ。
 ちなみに私は、WindowsではCtrl+esdxをカーソルに割り当てているので、実際に左手でカーソル右手でポインティングデバイスという使い方をしている。Macには「窓使いの憂鬱」が無いので、これができない。
 勿論、方向キーが左手で扱えるのは、現在FPSを中心としたゲームにwasdが方向キーとして使われていることからも重要だ。現在の特殊配列のキーボードは、文字を打ち込むシーンだけを考えていて、ゲームやグラフィックツールなどで使用されることを想定していないことが多い。
 本職のグラフィッカーは、左手にプログラマブルスイッチを用意して、操作を軽減している場合も少なくないし、FPS専用の特殊キーボードはかなりのバリエーションの製品が出ている。
 効率化を考える場合一つの使用シーンだけを想定してしまい、汎用性に劣ってしまうことは珍しくない。しかし汎用性の無い入力装置(キーボード)は、下手をすると無用の長物化してしまう可能性すらある。

 また、特に文字入力中やスプレッドシートの編集中は、左手でキーボードショートカットを駆使し、右手でカーソルキーを操るということも少なくないかと思う。
 こうなると右にもカーソルキーが欲しくなる。
 カーソルキーは左手でも右手でも使いたいキーなのだ、これを解決するには、左右にカーソルキーを置く方法、キーコンビネーションやモード変更等でメインキーの一部をカーソルキーにする方法等が考えられる。
 左右にカーソルキーを置くのは、無駄にキーが増えることとホームポジションから離れたキーができるという面から、あまり良くない。
 キーコンビネーションやモード変更は、操作が複雑になることや、カーソルキーをキーコンビネーションに組み込むことが難しくなる点で、あまり優れているとは言えない。
 そこでキーボード中央に置くのが、左手でも右手でも押しやすいカーソルキーの、一番簡単な解決法だろう。中央に置くと両手でも操作できる。

 カーソルキーを押す指は、←人差し指、↑中指、→薬指が多いかと思う。そして↓はおそらく中指が一番多いと思われる。
 しかし、一本で二個のキーを担当すると、多少思考の中断を生んでしまうのも否めない。↓キーは、←↑→と離して、親指で押すことを前提とする配置が良い。

ポインティングデバイス

 ポインティングデバイスはノートは勿論、デスクトップにもあるべきだ。マウスは遠すぎるし場所も取る。
 今キーボードにつくべきポインティングデバイスは、MacBook Airのマルチタッチパッドか、ThinkPadのトラックポイントだ。
 ちなみに、トラックボールもかなり使いやすく、なんといっても転がして気持ちいいのだが、残念ながらコストアップにつながる、どうしても重くなる(ボールがある程度重くないと使いづらい)のでキーボードを立てることが難しい、ボールが入る空間が必要なためコンパクトさに欠ける、という理由で残念ながら「サイバリオン」や「マーブルマッドネス」が付属でもしていない限り、この選択は無い。

 パッドは親指を使うため、モディファイキーと場所を取り合ってしまう。ただ、パッドがキーを兼任すると考えれば、悪くはない選択肢かと思う。実際にパッドをモディファイキーとして利用するユーディリティーもある。
 最近のマウスにはスクロールホイールがついていることが多いし、Appleのマイティマウスは二次元(つまりトラックポイントに近い)の動きを検知するポイントがついている。
 キーボードに2つ(カーソルもあわせれば3つ)付いていても問題は無いというか、ぜひ欲しい。

 以上を鑑み、トラックポイント二つを親指で扱い、左はポインタ移動、右はスクロールとして使用。クリック判定はポイントに触れている場合は、キーボードのキーがマウスのボタンの役割をするという方式をとる。

指毎の考察

人差し指

 親指が下の方に付いているので、人差し指は実質手の外側についているようなもので、比較的自由度が高い指と言える。
 力もそれなりにあり、長さもそこそこある。中途半端とも言えるが、中庸である故に汎用性の高い指とも言える。

 現状の役わりでほぼ問題ないと思われるが、中央上部(つまり6)のキーが押しづらい。
 割と器用な指なので、ポインティング関連の担当もやってもらって良いと思う。

 ただ、器用である故に腕より指で打つことが多く疲れやすいので、受け持ち範囲は広くても出現頻度は低めの文字を割り当てるのが適切かと思う。

中指・薬指

 左右に動かすと、この2本はつられて動いてしまう程自由度(独立度)は低いが、長いので前後は割と無理が利く。
 そして自由度と引き換えに安定度が高い。特に中指は「指と考えるより腕の延長部分」と考えた方がしっくり来る程安定感のある指だ。
 これは「指で打つのではなく腕で打てる」と言い換えると分かりやすいだろう。指に比べて格段に筋肉のしっかり付いた腕で打てるのだから、長時間酷使しても疲れにくい。

 試しに肘から腕を動かしてキーを打ってみてほしい。人差し指や小指では力が強すぎて不安を感じるが、中指・薬指はむしろ気持ちいい程だ。

小指

 小指は手の外側についているので、指の中では親指の次に自由度が高い指と言える。
 ただ筋肉がほとんど無く脆弱なため、小指自体はあまり動かさず掌全体を動かして打っていることが多いとおもう。しかも単純に下に打ち下ろすと不自由な薬指で誤打鍵してしまうので、キーボードに慣れたひとなら手首を外側にひねって打っているはずだ。
 このことからも外側のキーは高めの位置に配し、小指の負担を減らすようにした方が良い。

 小指を使った片手コンビネーションだと、通常小指が担当しているキーを同時に押すには薬指を使わざるをえず、ホームポジションが崩れてしまう。
 小指は比較的自由度を高く保つことができるが、Emacs指でも知られる通り、脆弱に過ぎる。
 このため、小指はキーコンビネーションではなく、(脆弱なので)使用頻度の低いキーを、(自由度が高いので)多めに受け持つのが良いだろう。

 意外に活用の余地があるとおもうのが「小指の付け根」だ。この小指の付け根でキーを押せれば、キーコンビネーションのバリエーションが増えて嬉しい気がする。
 ただあまり近くにあると、掌を浮かせておかないといけないストレスが高すぎて、疲れそうだ。

親指を除く4本

 右手を自然にキーボードの上に乗せると、指先は横一直線には列ばないことが分かるとおもう。
 だいたい、J(人差し指)、I(中指)、O(薬指)、;(小指)、あるいは@(小指)当たりにくるのではないだろうか。
 エルゴノミクスキーボードは、指の長さの違いから縦にキーをズラしていたりするが、斜め(ハの字)に手を置くことも考慮に入れると、現在キーボード右側の横ずらしレイアウトは、さほど悪いレイアウトではないのではないかと思う。左側はどうにもこうにも収まりが悪い。

親指

 親指は指の中で一番自由度が高く、そして強い。
 ゲームパッドはほぼ親指だけで操作するというのに、キーボードではほとんどスペースキーを押すためにしか使われてなかったりする。Macの場合はCmdキーを押すのにも使うが、それにしてももっと活用されてしかるべきだ。

 余談だが、「Macはコマンドキーの位置が右過ぎて、小指がつりそうだ」と書いていた人を見かけたとこがある。あれ親指で押すもんですから!!まったく逆の指で無理に押したら、そりゃ指もつりますわ。

 さて、親指でキーを押すことの利点は、親指で何かキーを押している状態でも、残りの指の自由度があまり落ちないということである。
 つまり、キーコンビネーションに使うモディファイキーは親指に集中させるべきと言える。

 もう一つ良いことは、親指だとキーが真ん中に来るため、キーが一つで済む点だ。
 小指でモディファイキーを押すことを前提としている今のキーボードは、左右に一つずつ同じ機能のキーがあるという、実にもったいない状況となっている。
 親指なら、Cmdキーコンビネーションでも分かる通り、片手で2キーを同時に押すこともさほど苦ではないし、ホームポジションが崩れない。

 親指は折り曲げることのできる方向が他の指と全く違っている。
 現在のレイアウトは親指を打ち下ろし、キーに当たる部分が指の側面となり不自然だ。だから一概にダメとは言わないが、上から下に打つより、手前から奥に押す方が親指の動きとしては自然で負担が少ないことは容易に想像できるだろう。
 実際、キーボードを操作していて、下側の爪の付け根に痛みを覚えることもある。
 親指で押すキーの幾つかは、上ではなく手前に向けて生えている方が良いだろう。
 試しに、キーボードの下に親指を突っ込んで、キーボードをがさっと掴んでみると、妙にしっくりこないだろうか。今の親指の使い方は、親指の自由度の高さに頼り切った無理な使い方なのだ。

キーの機能で考察する

ファンクションキー

 ファンクションキーは、まず遠すぎる。次に機能とキートップの文字との意味の関連性が皆無なので、覚えきれない。三つ目に、特にdeleteキーの近くは誤爆(間違えて打ってしまう)する。また、キーボードによって位置がかなり異なる。
 キーボード(規格)製作者から、かなりどうでも良いキーと思われている匂いが、ぷんぷんする。

 例えばCmd(Ctrl) + Rだとreloadだと覚えやすいし、ホームポジションで打てる。F5だとなんでF5か分からない(…たぶんBASICのRUN(実行)だからだと思うが、なんでRUNがF5かと問われれば何となくだろう)し、遠い上に位置が一定していないので、一度キーボードに目を落とさないと押せない。
 どーしてもファンクションキーが必要だとしても、ノートPCのようにFnキーとのキーコンビネーションで十分。キーが一段近くなり位置が分かりやすくなる効果があって使いやすい。覚えやすくはならないが。
 ちなみに私は、ファンクションキーを取っ払って、Win + 数字キー(+α)をF1〜F12に割り当てている。割り当てているだけで使わないけど…。人に操作を教わっている時に、ファンクションキーで説明された場合のみに使う超限定機能だ。

機能キー

 capsキーはいらない。
 一部のために全体の利便性を落とすという、ダメインタフェースの代表。
 あの程度の機能にキーを一個使う必要は無い、なんらかのキーコンビネーションで十分だ。例えばペースト機能はもっと重要だが、独立したキーは無い。そもそも、キーコンビネーションの方がキーが少なくてすむ→ホームポジション近くにキーが置ける→使いやすい。
 ユーザが初心者である時間はユーザが機器を使う時間の何パーセントだろうか。機能へアクセスしやすくなる方法は、独立したキーになって主張するだけではない。

 そういう理由で、pageup、pagedown、home、end、insert、delete、printscreen、scrolllock、pause、numとかのあの辺のキーも不要。
 Windowsキー、Menuキーは不要。キーコンビネーションじゃダメだった理由が分からん。もし、初心者救済策のつもりなら、逆効果だ。キーボードの恐怖は「たくさんならんだボタン」から来ることが分かってない。
 キーボードの規格を策定する人間が、ボタン大好き、なのは全く困ったものである。

 わりと最近のことだが、いつの間にかinsertキーを押してしまい戻せなくなった。同僚に聞いて戻ることができた。勿論その直後、insertキーはひっぺがした。capsキーもそうだがモードが変わってしまうキーは、存在を知らないと何が起こったか分からないので、問題の解決が極めて困難。
 そんなわけで特に初心者がひっかかるのが、caps、insert、numlockなどのモード切り換えキーだ、まったく初心者救済にならない。capsはモードレスで使えるshiftキーがあるので、そもそも必要ない。大量に大文字を打つ必要がある場合は、小文字で全部打ってから小文字→大文字変換すれば良い。それが使いやすさというものだ。
 いちいちどのモードか理解してキーを打つとか、面倒でならない。トグルでモードが入れ替わるキーは全排除の方向が正しいだろう。なんつーかvi系のエディタ全否定なこと言ってるが、まぁvi使うようなマニアは放っておく。

日本語入力キー

 日本語関連キーも大半は不要だろう、全角半角などはキートップの意味で使われてない。
 コンピュータ使用歴は30年近くなる私は、未だに「カタカナひらがな」キーが何をするキーか分かっていない。独立したキーを置くと分かりやすくなるというのは、まったく嘘だ。上記のキーも多くは何のためのキーか分かっていない。調べるのが面倒なのではなくて、何度調べても忘れてしまうのだ。あまりに使う必要なくて。

 一応、その証拠に調べてみた。半角全角キーは「半角と全角を切り替えるキー」…っていらねー、所謂半角カナおよび全角英数は亡びろ教の私にとっては、悪魔のキーと言っても過言ではない。
 IMの設定によっては、日本語入力と英数入力を切り替えるキーになる…しかし、前述の通りトグルキーは全排除の法則により不要キー。
 つぎ、カタカナひらがな(ローマ字)、まぁ予想通りだが「カタカナとひらがなを切り替えるキー」いらねー。私はカナはShift+Space(変換)連打あるいは無変換派だ。Ctrl+KやOption+X派の方も否定しない。でもカタカナひらがなキーは無いわ。普通の変換機能で十分カタカナを選択できるというのに、別にキー作るとか理解不能。
 同様の理由で英数キーも意味無し。

 日本語入力モードと英数入力モードが存在することも避けたいところだが、その結果できたのが日本語入力用領域と、英語入力用領域をもった横長いキーボード…なんてのは、ちょっとありえない選択なので、日本語入力モードは切り換え方式にせざるを得ない。
 キーを増やさずにCmd+Spaceで切り替える手もあるが、現在のモードを意識することは避けたいので、英語と日本語の入力切り換えのために、贅沢にも2つキーを用意するのが結局使いやすいかと思う。
 ここは、とにかくキーを少なくするというコンセプトに反するが、日本語入力は極めて重要なので2つ程度のキーが増えるのは、少なくて済んだと思っていいだろう。

テンキー

 メインに同じキーがあるのに、別にまたキーがあるとか無駄。
 もちろん数値を大量に入力する必要がある場合はある。
 でも、それって…一部の機能向上のために全体の操作性を落とすという、インタフェースのダメデザインの法則に見事に合致するのではないか?
 この「キーボードにはテンキーが必要」という主張は「キーボードに操縦桿つけるとフライトシミュレータをプレイしやすい」という主張と大した違いは無い。個人的にはテンキーより操縦桿がついていた方がトキメクが。

 テンキーつけるなら、「基本の機能は電卓にしておいてsendキーを押すとディスプレイされている数字を送る」程度はやってくれないとさして便利でない。ついでにスプレッドシート向けに最後にenterを付加するsendキーと、tabを付加するsendキーがあっても良いかもしれない。
 そして、そのくらいの専門性のある機能は、別の周辺機器としてあるべきだろう、そうすれば左にも右にもレイアウトできる。数字を大量に打つ必要があるひとも、そうでないひとも幸せになる。

 こういうキーを捨てきれないのは「いつかそういう時が来るかもしれない、と遭遇確率の極めて低い保険に入り、普段の家計が苦しくなる」という日本人気質の最たるものだ。「お母さん、そのお菓子の箱(テンキー)取っておいても使いませんから!!」
 ちなみに、アメリカ人がテンキーを捨てないのは、机のサイズがでかいから大してじゃまじゃないのだろう。

アプリケーションキーなど

 ファンクションキーが不要と主張する私に、これらのメールとか電卓とかのキーに何を言えというのか、もう一つしか無いのではないか…「滅びよ!!」

 電源キーはあると便利だったが、パソコンは一度入れたら電源を落とさない方向に進んでいるので、無くてもいい。
 ボリュームやミュートキーは便利な気もしていたが、存在を忘れる。キーよりスライド式の方が使いやすいし、キーボードとは別のリモコンの機能としてあったほうが分かりやすいだろう。
 イジェクトキーは、スロットローディングだと不要だし、物理メディアはそう遠くなく挿入したり接続したりすることは無くなるだろう。近くにおいておけば通信するようになる。よって不要。
 あと他に、何があったっけ?

カイト配列キーボード

 以上をふまえてできたのが、カイト配列キーボードだ。なんでカイトかというと「とんび→Kite→カイト」という、単純な命名だ。
 雰囲気を掴みやすいように、左に大きめの手、右に小さめの手を配置した。ドラッグして感じを確かめてほしい。ちょうど良い大きさに表示されているなら、ディスプレイに自分の手を当ててもいい。

 [Eng]と[日]は英語と日本語の入力モード切り換えキーで、小指の付け根で押す。ユーラシア大陸の西と東を意識して、ワールドワイドな感覚でチョップして切り替えてほしい。
 色分けしているが、[2][q]や[9][p]あたりは小指でなく薬指で押した方が良いかもしれない。
 右側の線は、キーボードの傾斜角だが、コストがかさむので無視しても良い。

 大まかに言って、純正TRONキーボードをコストダウンしたような形といえる。
 大きくすべきと言っているキーがさほど大きくないのは、ある程度以上大きくなるとパンタグラフ等の特別な機構が必要になりコストアップにつながるため。
 このキーボードは3種類のキーしか使っていない。横長のキーは、親指で押す場合とその他の指で押す場合と上下を逆転してあるだけで同じキーだ。ただし、↓キーだけは上から押す方が自然と考えて他の親指キーとは逆。
 最上段と最下段も上下入れ替え。一番外側はキーが大きくなっても、指の移動距離自体は変わらないので違和感は無いだろう。
 個人的には、キーボードにはパチンと切り替わるタイプのスイッチとか付いていると、ひじょーにトキメクのだが、そのあたりは割愛。

 このキーボード、数々の名入力インタフェースを開発してきたHORIにぜひ制作してほしい。今のところキーボードは凡庸なものしか発売していないが…。
 赤いのはトラックポイント。この位置は勿論プレイステーションのデュアルショックのパクリだ。
 ひじょーに、このキーボードでゲームやると面白そうな気がしてきた。
 それに普及させるのに一番いい方法は、面白いゲームの付属周辺機器として付けることのような気がする。

 今手元にあるMacのキーボードを調べるとキーが112個もある。上記カイト配列キーボードは59と、おおよそ半分にキーの削減に成功している。キーボードアレルギーを克服できるのではなかろうか。
 Opt + での記号をどう配列すべきかは、まだ考えていない。

 今日はここまで。


2008-04-27