『今や押しも押されもせぬ標準ブラウザ、インターネットエクスプローラ5について』
非常に久しぶりにインターネットエクスプローラ(以後IE)をインストールしたので、IE5のレビューと共に、今や「もう一つのOS」とまで言われるブラウザの現在を俯瞰してみよう。
まずIE5で目に付くのは、その洗練されたアイコンデザインだ。ネットスケープ系のアイコンがバージョンを重ねるごとにダサくなっていったのに比べて、IEのアイコンはどんどん良くなっている(私はウィンドウにアイコンを置くツールバーを置かないので、意味が無いが)
インターフェースデザインについては、ドラッグ&ドロップに対応したはいいが、たまにデータが壊れる不具合がみられた。
文字をドラッグできるが、選択時のダブルクリックで、2バイト文字をきちんと認識できていない。
ウィンドウのタイトルバーにファイルアイコンが付いていて、ドラッグできたり、Opt+クリックでディレクトリを移動できたりするのはいいが、ローカルファイルはロケーションファイルでは無く、ファイルそのものをドラッグさせて欲しい。
キーボードショートカットが充実したので、最早ボタンバーは必要無いのだが、しつこく付いている。これは前から問題だったのだが、コンテクスト(状況に応じた)な情報を表示するもので無ければ、バーに登録するのは意味が無い。言い換えれば意味があるのはステータスバー、アドレスバーだけである。
また、縦に付いているタブ(エクスプローラーバー)はウィンドウを分割して機能を割り振るのだが、ウィンドウシステムを使っている意味が無い。
ステータスバーは長い文字列もきちんと表示するし、アドレスバーもアイコンでファイルの種類が分かったり、MSお得意のオートコンプリートがさらに使い易くなっていたりと、できはかなり良い。コンテクストメニューへの対応度が上がったのも、有り難いところだ。
ヘルプのリファレンスの項目にAppleScriptについて解説してある。ただ、英語の直訳でとても読みにくく、日本版なのに「AppleScriptリファレンス」を推賞していないあたり、ローカライズが分かって無い感じだが、アップルはもっと酷かったりするので、書いてあるぶん良しとしよう。
そもそも、IEは扱えるオブジェクトや属性が少なすぎるので、最初から話にならないというのはおいといて。
ちなみにモジラ6は、全くAppleScriptに対応していない。はやいとこ対応して欲しいものだ。
どうもMSはWSHも含めてJavaScript(Jscript)を基軸とする事にしたようで、かなりしっかりした実装がなされているようだ。
というのも、主要な機能の幾つかがJavaScriptで書かれており、わりとしっかり動いているのだ、これが。
このあたりはJavaScript日記の方でフォローする(かもしれない)。
新しくPNGフォーマットに対応し、HTML4.0、XML1.0、CSS2.0対応度も上がっている。しかもWIN用のIE独自拡張CSSはサポートされていない。
このあたりも歓迎すべき事であろう。
ただし、標準化を押し進めようとして、デフォルトの解像度を特にアナウンスも無く96dpiにしているのはいただけない。
オークションマネージャや検索アシスタント等の新機能があるが、これなどは明らかに別のアプリケーションの機能と言えるので、分離した方が良かったろう。
とにかく一つのアプリケーションに詰め込みたがるのが、MSの悪いところだ。
ある意味ではネットスケープ系のブラウザに打ち勝ち、方向性を見失った状態なのがIE5と言えなくもない。
機能を絢爛に盛り込んだ、面白いアプリケーションではあるが、寂しい印象を受ける。全てのものは頂点を迎えると同時に落日に向かい歩み始めるのである。
さて、色々とIEの転落要素があるのだが、まず一つめ。
案の上ソースが汚くってたまらなかったので、全面書き直しとなったモジラプロジェクトもようやく、二年の歳月をかけて6というバージョンをまとって歩き始めた。
正直なところモジラ6は、全然話にならないできのようだが、ネットスケープを抱えるAOLは来年にもAOL標準のブラウザとしてモジラを採用する公算が高い。
そうなるとIEのシェア過半数割れも、まず間違い無いところだ。何しろ一般のユーザーはデフォルトに弱いというのは、他でも無いMSがIEで実証した事でもある。
さらに、モジラ6のタグの実装は素直なW3Cフォーマットに則ったものようであり、中国でLinuxが爆発的に普及している事と合わせて、その普及に歯止めがかかる要素がほとんど無い。
(半)オープンソースである事もあり、モジラは多くの品種を生み、様々な用途に合わせて生活に潜り込んでいく事になるだろう。
さらに、iモードを初めとする携帯端末やインターネット端末の普及はIEのこれ以上の普及を促すものでは無い。
このように、ブラウザは今後は用途によって細分化される可能性が高い。
誰も彼もがT型フォードの時代は終わりになるのだ。
マイクロソフトがどのような戦略をとっていくのかが注目されるが、巨艦巨砲主義では生き残れないのは確かであり、MSもそのあたりに対する布石も打っているようではあるが、もう一つ成功していない。
これはMSそのものが巨艦であり、小回りが効かなくなっているところがあるためだろう。
「IE5を最後にブラウザはいよいよ次の時代に突入する」
2000-04-28