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任天堂プラットフォームからソニーのプレイステーションへの、シリーズの発売先の変更が大きな話題となり、ソフト発売前にプレイステーションの成功を確定付けたタイトルでもある。
なにせ、本作の発売日はのびにのび、後継機種であるPS2(2000年3月4日)の発売後の8月26日となったのである。
さて、そのようなゲーム本体と関係のない話題はさておき、本作も毎度お馴染みの、堀井雄二、鳥山明、すぎやまこういち、山名学、真島慎太郎の面々で作られている。
前作のレビューでは、テキストの質が少し気になると書いたが、本作ではかなり良くなっている。
ただ、とにかくシナリオが巨大なので、堀井氏本人が全て面倒見切れる訳ではなく、何人かのシナリオアシスタントが存在しているのだが、「しれない」「知れない」のような漢字を使うつかわないのような用字の不統一が気になる。
人数だけでなく、開発期間5年という時間が、統一を難しくさせているのだろう。
本作では、今までの2Dから3Dへ大きく移動シーンのシステムが変更されている。
斜上からの視点の角度を固定して、360度回転させる「グランディア」と同じシステムである。
これは、かなり良くできているが、回転できる角度が場所によって制限され、その制限される理由がプレイヤーに通知されない。これは、かなりストレスとなる。
おそらく、裏のデータを省略して処理を軽くしたいというプログラム的な都合で回転の制限がされているのだろう。
また、今までの4方向と違い8方向に移動できる。視点の回転角が無段階であるのだから、8方向といわず、アナログスティックでもっと細かな方向に移動できるようにして欲しかった。
今までのシリーズはROMで提供されていたため、CDになって気になるのは、ディスクアクセスだが、これは物凄く快適である。
他のソフトの読み込みの遅さと比べると、本当に同じハードウェアであるか疑ってしまうほど。
これは、プログラムの技術もさることながら、グラフィックのできの良さによるところも大きいだろう。
多くの場面で、拡大してドットが粗くなったままつかわれているのに、きちんと密度がある映像となっている。個人的に真島氏のドット打ち技術は、初期の「ライーザ」あたりでもただ者ではないと思っていたが、ここに来て人間国宝レベルに到達しそうな勢いである。
モシャスも今まで通りドット拡大でいって欲しかった位。
モンスターのアニメーションが滑らかに良く動くし、映像エフェクトも派手に動くが、イライラしない長さで、戦闘が楽しい。
戦闘シーンで文字の表示速度を変えられるなどの変更も、戦闘で色々試しやすくなっていい。
戦闘の指示を全体でなく、一人ずつ指定できるのも歓迎できる(個人的にはAIには、逆に何も指示できないIVが一番好きだ。特にクリフトがバカで大好き)
本作では、VIの職業システムを基本に魔物を仲間にするシステムを廃止し、魔物に転職できるようにすることでそのバリエーションをのこしている。
このことで、魔物に感情移入してしまい、人間のキャラクターの印象が薄まることを押さえている。
また、仲間に話し掛けることができ、台詞も状況に合わせてかなり細かく変わるので、キャラクターの個性が際立っている。マリベル以外はあまり面白いことを言わないが、マリベルの台詞が抜群に楽しい、もうこの会話だけずっとやれないかと思う程。
3Dマップになったことで、立体的な仕掛けが分りやすくなった。
3Dマップらしい仕掛けはもちろん、前作までと同じ仕掛けであっても、新鮮に感じることができる。
また、新しく「もちあげる」「なげる」という操作が加えられたため、移動シーンでやることが、相当にアクションRPGに近くなった。
これをパッケージでは「さわれる世界」と表現している。たしかに幅が広がって、良いシステムだが、任天堂「ゼルダの伝説」っぽすぎる気もする。
贅沢を言えば、ドラゴンクエストは、別の方法論を取って欲しかった。でも「もちあげる」が、楽しいのは間違いない。
半透明ウィンドウが、戦闘以外でも採用され、画面が広く感じられ快適だが、背景がごちゃついている場面では、文字が読みづらくなる面もあるので、透明度をもう少し落として欲しかった。
コマンド選択インタフェースはVIと比べて、さらに少し良くなっている。
しかし、べんりボタンがLに割り当てられていないのは不満。
また、べんりボタンをつかわないとできない動作(持ち上げる)があること、特に調べるものも話し掛ける人もいない場合はボタンを押しても反応しないので使い勝手が良く、かなり「しらべる」コマンドの存在が希薄になっている。
大量に選択肢がある場合、ウィンドウ枠にスクロールバーのようなものが出て、全体の選択肢の量と現在の位置が判るようになったのはいいが、枠の一部が青くなるだけというのは、見ただけで役割が想像できるデザインとは言えず、さらに一考の余地がある。
全体にインタフェースの完成度の高い本作だが、まだまだ洗練の余地があるものとも言える。
ストーリーの流れは、「石版をつかって昔の世界へ」「昔の世界の事件を解決」「復活した世界で石版の残りを探す」のまとまりで区切られている。
この区切りをプレイするのにかかる時間が数時間程度なので、平均クリア時間100時間と言われるこのゲームも、だらだらせずテンポよくすすめることができる。
IVから取り入れられた章立てのストーリーを押し進めたシステムと言える。
本作では「馬車」システムがなく、パーティーの最大人数が4人に制限されているので、ゲーム途中にキャラクターの入れ替えが起きる。
それ自体は好きずきだし、システムがシンプルになるという意味では悪いことではないのだが、その時に、出ていくキャラクターが、装備を持っていってしまうことがあるのは、らしくない不親切さだ。
鳥山明のキャラクターデザイン、特に服飾デザインが、物凄くリアルで良くできている。和製ファンタジーにありがちな、中世の技術レベルは勿論、現在でも製作不能なキテレツなものとは、完全に別物。
これが、逆に地味な印象を与えている面も否定できない。特に主人公はびっくりするほど地味。
今まで極力主人公にハッキリしたイメージを与えてこなかったシリーズだが、仲間が話し掛ける台詞とともに「地味」という、今までになかった強烈な個性がある。しかも初期の仲間が「王子」と「網元のお嬢様」なのに、主人公は「漁師の息子」というギャップも地味さを引き立てると言うかなんと言うか。
この、地味な主人公は生活感があり、ゲームとしては、とてもいい方向に働いていると思う。
細かい苦言を書いたが、それらは、実のところたいした問題ではなく、重箱の隅突きに近い。
しかし、一つ、物凄く重大な問題がある。
殆どのイベントはフィールド上で展開されるのだが、一部3Dでレンダリングされたキャラクターによるムービーが入っている。これが、どうしようもなくダメ。3Dでキャラを作るという時点で雰囲気ぶちこわしだが、鳥山明のキャラクターデザインにも似ていない、さらにいえば演出もヘボい。がっかり。心底がっかり。
主人公たちを3D化しなかったことが救い。
ゲームバランス、そしてシナリオは、抜群にいい。
これまでのドラゴンクエストの中でも、1,2のかなり高いレベルと言えるだろう。
とくに、丁寧に「世界」を描いているところに、高い評価を与えたい。
そこで結論。
「CDで3Dでも、ドラゴンクエスト、名作」
2002-06-13