仙窟活龍大戦カオスシード

対応機種・周辺機器
サターン
ジャンル
ダンジョン育成シミュレーション
著作・制作
(c)TAITO ネバーランドカンパニー ESP 1998

 アクション・シミュレーション・RPGの要素をふんだんに折り込んだ、ダンジョン掘る掘る中華ゲーム。
 SFC後期に発表され、一部で大絶賛され、ほとんどの人に存在を知られなかった作品が、サターンに超パワーアップ移植。

 世界観は中華風であり、主人公は風水を駆使してダンジョンを製作し育てる。
 システム的必然から、中華風の世界観が決定したものと思われるが、ありがちな西洋ファンタジーと差別化できていて、とても良い。
 また、風水の基本要素である五行「木火土金水」は、惑星にの名前に使われているし、曜日にも使われている。他にも風水(陰陽)の用語は、案外と日常的に使われている。他にも干支など、我々日本人には非常になじみ深いものが、ゲーム中には採用されている。
 西洋風の世界観よりもずっと分かりやすく、もっとゲームで採用されていいものと思う。

 画面の見た目は、チュンソフト不思議のダンジョンシリーズに酷似しているが、戦闘はアクションだし、ダンジョンは自動生成されるのではなく、自分で掘って行く。
 どちらかといえばシムシティの都市の代わりにダンジョンを作る、というゲームと言える。
 しかもRPGのように街を探索してストーリーを楽しむ部分もある。しかも様々な条件でストーリーが分岐するマルチエンディングのシナリオを採用している。
 そして、ダンジョンに潜入してくる敵と、リアルタイムアクションで戦う。
 この様に、ぶち込むだけぶち込んだ、ごった煮のようなゲームとなっていて、ジャンル名カオスシードといって良いだろう。
 ゲームに色々なモードが存在するのは、ゲーム的にも良くない。大抵は、お互いの良さを邪魔し合って、ろくでもない出来になるからだ。
 さて、このゲームであるが、要素てんこもりでダメなゲームになっているかと思いきや、かなり面白いのである。

 キャラクターから半透明で色付きの漫画のようなフキダシが表示され、そこに台詞が表示される。これは非常に分かりやすい。
 しかし、イベント時にキャラクターのアップが表示されるのだが、これが良くない。
 というのも、フキダシはマップ上の小さなキャラクターに付き、時々アップの顔位置とマップ上のキャラの位置が左右逆だったりして、分かりにくい事おびただしい。
 SFCには顔アップは無かったので、後付けした居心地の悪さが出ている。
 音声も強化されているが、やたらと喋るのではなく、要所要所に上品に使ってあり、そのへんは良い。

 シナリオの基本はダンジョンを製作して行く事から、主人公が通常のRPGで言う所の魔王の立場になる。しかしこのゲームの場合は主人公は善人で、勘違いした勇者がどんどん攻め入ってくる、というところが良くできている。プレイヤーが悪者になる必要は無いわけだ。
 システムを納得させるシナリオと言えるし、登場するキャラクターも魅力的で、さらに先のシナリオも見てみたいと思わせ、ゲームの牽引力にもなっている。

 良いところの多いゲームだが。今ひとつな部分も多い。
 まず、マルチシナリオのマルチエンディング採用。と言う事は同じシナリオを何度もプレイする必要がある。しかしダンジョン育成をする必要があるので、どうしても時間がかかる(2〜5時間ぐらいか)。シミュレーションRPGもそうだが、マルチエンディングとシミュレーションゲームは、あまり相性が良いとは言えない。このゲームの場合、なんだかんだでシナリオ達成度100%になるのに100時間はかかるだろう。
 シナリオの分岐条件も単に選択肢だけで決まるわけではなく、様々な条件があり、ちょっと分かりにくい。私は特定の相手に負けるという条件が分からず、えらいハマった、普通は敵が出たら全力で勝つっちゅーの。

 また、仙窟内(ダンジョン)でのルールが非常に複雑。
 SFCからの移植に際し仙獣(モンスター)や仙術(魔法)など、色々と整理しているが、根本的なルールを整理しないと、事態の解決には至らないだろう。
 ただし、ものすごくチュートリアルやヘルプが充実しているので、何も分からず放り出すと言う事は無いとは思う。ヘルプを充実させるより、ヘルプが無くても分かるように作るのが、もっと良いという事は言うまでもないが。

 特に良くないのが、インタフェースの部分。
 基本的には悪くはないのだが、ルールが複雑なだけに「ものすごく良くできている」と言うインタフェースを作って、やっと普通にプレイできると考えた方が良いだろう。
 例えば、多くの場合Xボタンが「現在選択中の項目の情報」を表示するボタンになっているが、同じような情報を表示するのに、メニューから[情報]を選択する場合もある。その際Xボタンでも表示できるならば、一貫性は崩れないが、メニューに[情報]という項目がある場合、何故かXボタンでは表示されない。ひじょーに引っ掛かる。
 五行は馴染みのある「木火土金水(もっかどこんすい)」の並びになっているものもあるが、何故か風水情報の右下に出るウィンドウや風水奥義では「火土金水木」の並びになっている。また、マニュアルの部屋の役割の項にいたっては「火水木金土」と曜日の並びになっている。
 五行の色とアイコンも分かりにくい。「木-緑(青)/火-赤/土-黄/金-白/水-黒」が風水的には常識だと思うのだが、このゲームでは「木-緑/火-赤/土-茶/金-黄/水-青」となっていて、しかも画面上の茶と黄と緑の色が近くて、すんごい分かりにくい。また、アイコンも素直に漢字にした方が分かりやすかったろう。

 情報量の多いゲームだけに、このような微妙な一貫性の無さや記号の分かりにくさが、無駄に難易度を上げている。風水的にも、ゲームの分かりやすさの観点から考えても甚だ疑問だ。

 アクションシーンでは、ボタンの組み合わせで様々な攻撃をくり出せる。
 しかし、「攻撃連打」で、「位置固定+攻撃」で中攻撃、「ダッシュ後、位置固定+攻撃」で大攻撃。「ダッシュ+攻撃」で蹴り、「ダッシュ直後、攻撃」でふっ飛ばし、「ダッシュ後、攻撃」でスマッシュ。
 理解できたろうか?私なんぞ、100時間プレイ後も理解していない。「小中大」の攻撃ボタンを用意した方がすっきりしただろう。
 サターン版では大攻撃ボタンがついた、これがボタン組み合わせで出る大攻撃とは違い、使用武器で攻撃が変る。こんなに色々できるようにする必要があったのか疑問。まずは、ボタン押しっぱなしで技が変化する等して、ボタンを減らす工夫をして欲しかった。
 それから、このダッシュがくせ者で、一定距離をステップするような動いては止まるという動きになっている。ダッシュの止まる直前に攻撃ボタンを押すとスマッシュ、と言う事になっていて、分かりにくいったら無い。いちいち止まらずに、だーっと走って欲しかった所だ。ちなみにSFC版では、連続でダッシュするにはダッシュボタン押しっぱなしではダメで、止まったらまたダッシュ、と言う操作をしなければいけなかったようだ。それよりはマシかもしれないが…。
 ダッシュボタンが「調べる」を兼用しているのも信じられない。ちゃんと座標が合ってないと、調べたい場所から移動してしまう。攻撃ボタンが調べるを兼用するべきだろう。

 アクションの質としてはそこそこ、シミュレーションの一部としては出色の出来である。
 難易度は普通だが、シミュレーションゲームのアクションシーンの難易度が、普通のアクションゲーム並なのはいかがなものか。
 正直なところ、戦闘時のアクションはバッサリ切ってしまって良かったのではないかと思う。

 このゲーム面白いが、さっぱり売れなかった。発売の延期に次ぐ延期でみんな忘れた頃にぽろっと出た、というマーケティングのまずさもある。
 いろんな要素を入れれば、「アクション好き+シミュレーション好き+RPG好き+アドベンチャー好き」の人がそれぞれ買ってくれて売り上げうなぎ上り、ってことはなく。
 逆に、「全てのジャンルが好きな人」という狭ーい範囲にしか売れないものになるのは、発売前から分かってた事ではある。

 ちなみに、初回特典に付いているおまけディスクは、ヒジョーに豪華な内容で、音声付き漫画やら、ミニゲーム、キャラクター紹介、イラストなど、ゲーム本編に負けないてんこもり具合である。

 他にも、いろいろと褒めたいところや、駄目な部分はたくさんあるが、なにせ要素が多すぎて、全部チェックを入れると大変な量になってしまうので、この辺で。
 総合的には非常に面白いゲームなので、サタコレ版もあるし、手に入れられるなら購入お勧め。

 そこで結論。

「いろいろ整理できたら名作になれた傑作」


2003-06-15