ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド

対応機種・周辺機器
プレイステーション2
ジャンル
格闘アクション
著作・制作
(c)2006 バンダイナムコ ゲームス/荒木飛呂彦/集英社

基本情報

 週刊少年ジャンプに長期連載され熱狂的なファンを多く持つ「ジョジョの奇妙な冒険」の第一部をアクションゲーム化した原作付きゲーム。
 レビュアーの私も好きなジョジョ第一部だが、とんと買う気はしなかった…だってバンダイだもの。
 んでまー、相当酷い事を覚悟してコレクターズアイテムとして買ってみたんだが、持ってると恥のような気がしてくるというのが正直なところ。

 ストーリーデモとゲームシーンが交互に繰り返されて、原作を辿るという作り。
 アーケードゲームだったらともかく、家庭用ゲームとしては安直。

ストーリーデモ

 原作漫画から切り取った一枚絵を、実にだらしなく緩急もなく出していくというストーリー紹介シーンが延々続く。
 声優つきで台詞を延々しゃべるんだけど、これが困った事に台詞一つ一つを飛ばす事はできず、シーンまるごと飛ばす事しかできない。
 酷い。

 声優自体は良い人を使っているものの、台本渡されて「これ台詞です、はい、しゃべってください」という感じで演出意図も方向性もなく録音が行われた風味。
 声優さんたちもどうやっていいか戸惑ったに違いなく、戸惑いはそのまま演技に出ている。台詞そこだけの演技しかしてないと言うか、できなかったとゆーか。
 いや、実際はどうだったかは分からないけど、聞いてるとそんな気がしてくるのね。あー声優さんたちも可哀想に、という。だって他の作品だとちゃんとしてる人たちなんだもの。
 主に、編集が酷いわけなんですけど。

 律儀にストーリーを紹介するんで、尋常じゃなく長い。
 紙芝居を見たいんじゃなくて、ゲームしたいんだよぉ。ゲーム中に表現すべきところも紙芝居でやっちゃって、まったく入り込めない。
 例えば、「君がッ 泣くまで 殴るのをやめないッ」も紙芝居でやっちゃう。そこはゲームだったら断然、ボタン押してパンチ繰り出したいシーンだろー。

 逆に主人公が負けるシーンは操作させる必要はない。負け前提のゲームシーンは無駄なストレスを与えるだけだし、プレイヤーが頑張って勝ったら、変な展開でストーリーを修正しなくちゃいけなくなってしまう。

 演出もかなり酷い。とにかく原作の台詞をそのままやるという、拘りのようでいてメディア特性の違いを考えない単なる手抜き、極めてテンポが悪い。
「ドドド」とかの擬音を、漫画のように画面に貼るんだけど、意図を考えずとにかく貼ってるという感じで、白ける事おびただしい。

ゲームシーン

 上記のようにやたらストーリーシーンが長いので、もうメインと言っていいかどうか怪しいゲームシーンについて。
 ざっくりいうと、3D格闘アクション。

 間違いなく、バランス全然取ってない。「プレイして誰かクリアできたら完成」という作り方をしたに違いない。
 シーンによって難易度バラバラだし、システムが活かされてるわけでもなく、ハメパターンを作って進むという、単調極まりない進行。
 動き自体はさほど悪くないが、ゲームの面白さには全然貢献していない。
 やたら敵の体力や攻撃力があったり、ただのザコがやたら攻撃を避けたり無限に湧いてきたり、不要な制限時間があったり、ストレスフルな作り。
 快適に爽快感を持ってあそばせようという意識が、全然感じられない。特に必殺技の演出が長すぎでテンポが悪い。
 ゲームやった事ない人が、ゲーム雑誌を見て「ゲームってこんなもんじゃないかな」と作ってしまったような雰囲気。

 ゲームってこんなもんじゃないです!!!

 ストーリーシーンのところでも書いたが、ゲームシーンで原作を再現しようという気があまりなく、なんというか…完全に別のスタッフが作ったんじゃないかという噛み合なさ。
 と、エンディングを見たら、ストーリのところとゲームのところ別会社が作ってました…。

その他

 メニュー周りのインタフェースも、当然のように酷い。
 ツッコミどころが大量にあるが、いちいち上げるのもアホらしいので一つ上げると「キャンセルボタンが□」もうそれほどのゲーマーでなくても、どんだけ酷い作りか想像はつくと思う。

 ここ、自分だったらこうしたのに!! ってのは特に原作付きのゲームなら大抵湧く感想だが、このゲームの場合、そう思わない人は存在しないのではないか、わたしなんかほぼ全部のシーンで「こうすればいいのに!」って思ったぐらいだ。
 敵の体力、攻撃力、移動スピードを調整するだけでも、佳作ぐらいまでは持っていけるだろうに。
 まぁ、他のところもほぼまんべんなくダメなので、全面的に書き換えないと佳作より上は無理とは思うけど。

 褒められるところはキャラのモデルの原作再現度がけっこう高いこと。
 とは言え、漫画の絵に近いテクスチャが貼ってあるので、ポリゴン数自体はそれほど他のゲームと変わらないぐらい使っていると思うが、印象としてはローポリゴンに見えてしまっているのが難点。
 後は、パッケージが荒木先生の書き下ろしってことがちょっと嬉しい、…だけど絵柄変わり過ぎて「この人ダレ?」状態になっているので、単行本の表紙から選んだ方が良かったかもね。

 そこで結論。

「ゲームを作る時にどういう事をやっちゃいけないかのサンプル」


2012-06-09