Monument Valley
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基本情報
2014年のiPadゲームオブザイヤーやアップルデザイン賞など、多くの賞に輝いた、最も美しいモバイルゲーム。
マップに含まれた仕掛けを動かし、沈黙の姫アイダを出口まで導くのが目的。
グラフィック
クオータービューで描かれた世界は、絵画のごとき美しさ、印刷して部屋に飾ればオシャレアイテムとして成立する完成度だ。
実際、ポスターやTシャツ、キャラクタのぬいぐるみなどのグッズも作られており、そちらでも収益を上げるビジネスモデルのようだ。
エッシャーのだまし絵から着想を得た(はず)だけあって、基本的な建物のデザインはエッシャーのそれを基本としつつ、シンプルだがグラデーションの美しい独特のグラフィックとなっている。
基本的には一画面でパズルが成立するように作られているためキャラクタは小さいが、精緻なデザインのそれらは滑らかに動き、箱庭的雰囲気を高めている。
マップは章ごとに専用の絵を用意する贅沢な作りで、次の章に進む強い吸引力となっている。
システム
立体を意識したゲームでは、一見繋がっているように見えるが、実際には段差があり、進めそうなのに進めないという状況がよく発生する。
特にクオータービューのゲームでは、奥の物体が小さく表示されることがないため、その傾向が強い。
エッシャーのだまし絵は、立体的にはあり得ないが平面で表現すると違和感なく繋がる不思議な迷路、というものだ。
本作ではそれが「見た目繋がっているように見える場所には移動できる」というルールとなっている。
通路や柱をスライドして移動したり回転させたりすることで、立体的には嘘でも見た目で繋がった足場を作り出し、プレイヤーキャラである姫を先へと導く。
この立体と平面の転換が非常に面白く不思議で、脳が変な汁をだしてるような気がしてくる。
見た目どおりに移動できるということに慣れると、見た目どおりなだけにそれが自然に感じられてきて、驚きを感じなくなってくるが、簡単に不思議な世界に慣れてしまう人間の脳にまた驚かされる。
グラフィックと同様に、多くの仕掛けも章ごとに専用のプログラムが用意されているようで、なかなか贅沢な作りだ。
インタフェース
姫の移動は移動先をタップすると、途中は自動で移動するというもので、ほとんどの場合で直感的かつスムースに操作できる。
動かせる部分はハンドルや、レゴの丸い出っ張りみたいなモールドで、自然にわかるように作られており、文字による解説は最小限である。
途中から、仲間(?)のトーテムポールも操作して、二人三脚で謎を解いていくが、このトーテムポールはほぼマップ上の仕掛けと同じ操作方法で動かせるので、これも操作は快適だ。
若干タップできる面積が狭くて操作しづらい場面も存在するが、許容範囲といえるだろう。
まとめ
全体が10章で作られており、ボーナスレベル1章と課金追加コンテンツである8章を加えても、4時間ぐらいでクリアできるんじゃないかと思う。
値段からすると、このくらいが適正なボリュームと言えるだろう。
むしろ、無料でアホみたいに大量のコンテンツを送り込んでくるゲームが少なくない昨今、無駄に時間を消費させず好印象と言える。
また、パズルの難易度も低く抑えられており、もし一人でクリアできなかったとしても、数人でプレイすればクリアできないということはないだろう。
アクション性はないし、時間制限などもなく、先に書いたように操作感も良好なので、上手く操作できずクリアできないということもない。
ストーリー的なものも匂わせる程度でほとんどなく、その辺の過剰さもない。
もっと多くの章を用意したり、さらに難度の高い章を用意することは、さほど難しいことではないと思われるが、それをしない抑制の効いた作りは大いに評価したい。
昨今の、大量の時間や労力を消費するゲームに辟易している向きに最適なゲームだ。
あるいは、美しい世界を堪能する、インテリア的なゲームとも言える。
そこで結論。
独特の仕掛け、気軽な難易度、美しいグラフィック、あっさり美味しいお茶漬けゲーム