最新のポリゴン技術で構成された広大で立体的なフィールドを縦横無尽に冒険する、ファンタジーRPG。
草ナギ(JISに漢字が無い)琢仁をキャラクターデザイン、小林治を世界設定にむかえ、豪華なムービーと、声優陣で綴る王道のストーリー、4年におよぶ制作期間をかけた、サターン最大最強RPG。
テクスチャーに手書きのタッチを活かして、冷たくなりがちなポリゴン3DCGを柔らかい暖かみのあるものに仕上げている。
ポリゴンによる背景は非常に立体的で強い存在感があり、立体的な音の処理とともに、世界のリアリティを高めている。
また、大量のポリゴンを使っているのにもかかわらず、ポリゴン欠けが全く無い。ゲームアーツはナムコ等とともにポリゴンを早い時期から導入していた事もあり、技術の蓄積のなせる技であろう。
ただ、物陰で見えにくいところも多く、少々ストレスのもとになる。カメラを主人公を中心にぐるぐる回す事もできるが、気をつけないと迷うし酔う(笑)
声優陣はかなり豪華であり、演技に問題は無い。
ただ、折角録音したのに容量の関係で削ったっぽい場面が多くあるし、「声はいらないんじゃ無いか?」という場面に声が入っていたりする。
制作に4年もかかっているんだから、そのへんの調整はどうにかならなかったのだろうか。
ストーリーは割合良いのだが、CD-ROMの場合テキストは容量をほとんど気にする必要が無いためか、冗長な表現が目につく、キャラクターが雄弁すぎるのだ。
テキストデータが多いのは他にも現れていて、ストーリーの進行に合わせて、かなり細かく住人の台詞が変わり、これは住人に話し掛けるのが好きな人にとっては、かなり嬉しい。
しかし、このゲームのストーリーって、恋愛関係が多すぎはしないか??
フィールドを移動する時の操作感はかなり良好で、きつそうな処理をしているように見えるが、動きは軽快であるる。
しかし、コマンド選択のインターフェースデザインが垢抜けず、全体の統一感が薄く、冗長で操作に戸惑う。
これは、かなり大きなマイナス点と言える。
ゲームのウリの一つである、日本を代表するCGクリエイターである(株)リンクスの製作したレンダリングCGによるムービーは、たしかに良い出来であるのだが、ゲーム本編との画像的整合性は低いと言わざるをえない。
それだけでなくイベントシーンは、本編そのままのポリゴンフィールド+スプライトキャラクター、手描きアニメーションムービー、レンダリングCGムービー、CG+手描きムービー、手描き背景+スプライトキャラムービー、と非常に種類が多い。
比較的本編との擦り合わせはできている方ではあるのだが、いくらなんでも種類が多すぎる。思い切ってムービーそのものを無くした方が良くは無かっただろうか?むしろその方がウリになったと思うのだが。
RPGの醍醐味のひとつである戦闘システムは、かなり良く考えられており、成長システムと合わせて、かなり面白い...はずだが。
戦闘のアニメーションに時間がかかる上に、設定によるOFFはもちろんキャンセルも不可能。近年のRPGに多いのだがプレイ時間を引き延ばすためであるとしか思えない。プレイ時間の大半がこのエフェクトを見ていたような気すらする。
戦闘は極端に楽で、普通にプレイしているとまず全滅しないし、魔法が切れることもない。その上アイテムが怒涛のように出現する(貴重なはずのマナエッグも終盤、かなり余る)。よって、戦闘に緊張感がほとんど無い。
折角の凝った戦闘システムも、だるいエフェクトと強力なキャラのせいで戦闘したく無くなる。結局、飯でも食いながら、雑誌でも読みながらオート戦闘という、ながらプレイになる。実につまらない。
ちなみに、発売開始前後はTVCFをかなり積極的にうっていたが、ちょっと失敗気味の出来で、プレイステーション(SCE)のCMに対抗しようとして、自分を見失っている気がした。
全体に、ちょっと「ファイナルファンタジー」を意識しすぎか?
苦言の方が多くなってしまったが、非常に丁寧な作りで、キャラクターのアニメーションパターンや冒険をメインに据えたストーリーなど、評価すべき点も多い。いや、むしろ評価すべき点が多いと言える。
ただし、「もったいない」部分が多いので、あえて苦言を多く書いた。
そこで結論。
「大作を意識し過ぎだが、全体のレベルの高い作品」
1998-09-23