イーハトーヴォ物語

対応機種・周辺機器
スーパーファミコン(ニンテンドウパワー対応)
ジャンル
ロールプレイングゲーム
著作・制作
(c)ヘクト 1993

 宮沢賢治の描く理想郷「イーハトーヴォ」を、2Dマップ型RPGのシステムを使い、賢治作品のオムニバス形式で表現した、一風変わった作品。
 物語は、プレイヤーが旅人としてイーハトーヴォの、とある街に辿り着くところから始まる。

 本作は、一般的なRPGの持っている、戦闘や経験値を得てレベルアップ、というシステムはない。
 そういう意味では、アドベンチャーゲームに近いと言えるだろう。
 純粋な意味でのRPGとして、旅人をロールプレイする(演じる)ゲームである、とも言える。

 ゲームとしてみると、RPGの中心的面白さである部分がとっぱらってあるのだから、当然の帰結として、つまらなくなっている。
 戦闘に代わる、何らかの仕掛けを用意して欲しかったところだ。
 そして、アドベンチャーゲームとしてみると、シナリオがあまりにシンプル。
 ただ、この作品の場合、そもそもゲームとして作っている風では無いので、ここでつまらないゲームだと切り捨てることはできない。

 では、この作品は何かと言うと、ファミコン世代に親しみのあるドラクエの文法を利用した「宮沢賢治入門」と結論付けたい。
 ゴーシュはどういう人物なのかもっと知りたい、ネコの事務所がどうなったのか知りたい 、銀河鉄道ってなんなのか知りたい、そう思わせるように情報が制限されていて、その上で賢治作品を読むことで、それらの疑問が解けるような作りになっている。
 この作品単体では、非常に中途半端で不満の残る作りであるとも言えるが、不満を残しておくことで、賢治作品に触れる切っ掛けにしようという意図が見て取れる。

 音楽やグラフィックは、まあまあ。もう少し頑張って欲しかった気もする。
 謎らしい謎もなく、比較的淡々と物語は進む。プログラム的にも、特筆すべきことは無い。
 だが、こういうのもありだな、と思わせる作品ではある。

 そこで結論。

「ゲームとしては駄作、だがそれだけでは無い」


2002-07-09