ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島

対応機種・周辺機器
Family Computer Disk System
ジャンル
アドベンチャーゲーム
著作・制作
(c)Nintendo 1987

 本レビューは、スーパーファミコン版の「平成 新・鬼ヶ島」に収録されていた、ファミコンの移植版を元にした記事です。
 本編はほぼベタ移植とは言え、ディスクの読み込みや音、コントローラに関しては、オリジナルとは異なりますのでご了承下さい。
 なお、Amazonへのリンクは、比較的手に入れやすいと思われる、ゲームボーイアドバンス版です。
 Wiiのダウンロードコンテンツとしても存在するらしいので、そちらが一番入手しやすいかもしれません。

基本情報

 その名の示す通り、その当時主流であった探偵・刑事ものでもSFでもなく、日本の昔話に題材を求めた作品。
 ロムでは容量が不足しがちなアドベンチャーゲームを、発売当時は容量に優位性があったディスク版として開発されたが、それでも1枚には収まらず、上下巻に分かれて発売された。
 発売当時は下巻の発売を指折り数えて待った人も多いのではないだろうか。

ゲームシステム

 システムは、表示されたコマンドを「動詞」「名詞」の順に選択して進行する、エニックス「ポートピア連続殺人事件」と同様のアドベンチャーゲーム。

 まず最初に目につく特徴は、コマンドやメッセージ表示が「縦書き」であること。
 これはもっとあっても良さそうだが、非常に珍しい。
 ゲームの市場が国際化した現在、まず企画段階で却下されそうなシステムでもあり、ますます珍しくなっていきそうだ。

 もう一つ特徴的なのは、主人公の男の子と女の子を任意に切り替えることで、それぞれの特性を活かした反応や行動をしたり、別行動をして2つの場面を同時進行させたりする事。

 同年(1987)に発売されたルーカスフィルム「マニアックマンション」では、キャラクタ6人から2人を選んで、主人公と合わせて3人を切り替えるというシステムであり、流石に過剰であったのに比べると、2人切り換えは十分に個性も出るし、システムの妙味もある人数と言えるかと思う。
 ちなみに、このキャラクタ切り換えシステムは、同年のナムコ/ファルコム「ドラゴンスレイヤーIV ドラスレファミリー」や、コナミ「魔城伝説II ガリウスの迷宮」にも採用されていて、どうも流行だったのではないかと思われる。
 これは各メーカーが真似したというより、容量や開発環境に余裕が出てきたが、単純にストーリーや舞台を増やすほどの容量はない…じゃあキャラだけ増やしてみればいいんじゃない、という当然の帰結であったと思われる。

 性質の異なるキャラクタに切り替える(変身や装備変更も含む)ことで謎や敵の攻略を行うというシステムは、以後定番となるので、容量節約という面だけでない面白みがあったと見るのが正しい見方であろう。

難易度

 キャラの片方しか気付かないものがあったりするのは面白いが、「しらべる」系は一度実行すると、そこに変化はないと思いがちで、わりとこのゲームでの詰まりポイントとなっている。
「とくに なにもない」系の1回見るのでも損した気分にさせるリアクションが、折角キャラを切り替えたのにまったく同じメッセージで返される事が多い。
 これがまた、キャラを切り替えて「しらべる」事をつまらなくさせていて、余計に詰まり易くなっている。
 キャラ切り換えのシステム自体は面白いのだが、容量不足であったり、ジャンルの初期であるための作り込みの甘さがあって、つまらない成分も大いにあるのは残念。

 本作では「いどう」の多くを「ひがし・きた・みなみ・にし」の方角で行うようになっているのだが、今どっち向きの画面なのかの表示もない(常に画面は北を向いているようではある)
 そのため迷いやすく、簡単なマップを書くのは必須かと思われる。
 ただ、マッピングして秘密の部屋に気付くなんてこともなく、マッピングの面白さもない。
 移動してみたら理由もなく「そちらには いけないようです」というパターンが多く、とにかく移動コマンドを選ぶのが面倒。
 移動できない方角は、最初から出さない位にしておいた方が良かったろう。

 時間経過の表現なのか、他の場所に移動して戻ってくると出現しているアイテムがちょいちょいある。
 これらのアイテムが、画面表示上特に変化がなく「みる」や「しらべる」なしには発見できなかったりする。
 しかも、怪しそうだと思って調べてみると確かにある、というものではなく、そこらにぽいっと置いてあったりする。
 これが、むやみと難易度を高くする原因となっている上に、解決しても嬉しさよりも理不尽さが先に立つ。

 時間経過と言えば、たまに時限式のコマンド選択が有るのも、難易度を上げている。
 例えば、制限時間内に正しい選択肢を選ぶとか、しばらく何もしないで放っておくと次の展開が有るとかだ。
 とは言え、タイトー「たけしの挑戦状」に比べたら、「しばらく」の時間がたいした事ないので、大抵の人はクリア可能とは思う。

 そもそもコマンドを選ぶたびに巻物風のウィンドウが閉じては開くというアニメーションが入り、実にテンポが悪い。
 総当たりによって、考える事なく進んでしまう事を防ごうとしたのかもしれないが、結局総当たり以外に解決のしようがない場面も多いため、ただただ面倒くさい。
 そういうアニメーションは、場面転換時のみにして欲しかった。

ストーリー

 桃太郎や金太郎、浦島太郎、鶴の恩返し、雪女といった昔話の定番のパロディが沢山登場するので、もうそれだけで勝ちって所がある。
 やっぱり、ドラゴンやロボットよりも親しみやすいのは確か。
 身近なだけに変な生活臭も感じたりするが、そこがまた良いところとも言える。

 色々な設定や伏線が、ゲームを進めるためのヒントとして働いたりもするが、全体にスムースさに欠け、進んだあとも「そうかもしれないけど、ある場面でそうとは思わんだろー」的な微妙なわだかまりが残る。
 文章のレベルも、極端な冗長さがあったりはしないが、もう一つという感じは最後まで拭えなかった。

 そこで結論。

「荒削りだが、この時期にだけ存在しえた輝きもある」

 当時流された「かぐや姫、はいりまーす」とか言って鍋(釜)の中に昔話の登場人物が入っていくCMが流れて、意味不明気味だなぁと思ったものだが、クリアしてみると意外や本編とリンクした内容だった。


2012-04-24