小島 秀夫「監督」率いる小島組が渾身の力をこめて、自ら送りだしたSFアドベンチャーの傑作スナッチャーを超えるべく製作されたシネマティックアドベンチャー。
メカデザインにカトキハジメを迎え、積極的にCGワークを取り入れた映像はリアルな世界を強烈に演出する。
ムービーは24コマのフルモーションでトゥルーモーション形式の滑らかで美しい映像はサターン随一。
ストーリー、演出、画面構成、等など、随所に映画を意識している事が見て取れるし、色々な映画へのオマージュ的なものがちりばめられているので、映画好きはにやりとしたり呆れたりできる事だろう。
例をだすと、
画面は光をかなり意識した作りになっていて、「この小島のリドリー・スコット好きめっ」て感じである。
それから、宇宙船に乗ったらペンを飛ばさにゃなんめぇ。スチュワーデスが胸ポケットに戻してくれたら完璧だったが。
また、キャラクターの会話シーンで顔のウィンドウが表示されず、字幕のみの仕様になっているのも映画を意識しての事だろう。
このゲームが他の「映画みたいなゲーム」と違うのは射撃シーンや爆弾解体などのゲームが本編と密接に結びついている事で、もっとも映画っぽいゲームであると同時に、ゲームである事を忘れない姿勢は非常に高く評価されるべきである。
PC-ENGINE版のスナッチャーを作った時は、これ程の豪華な声優陣を集めるのはもう無理だろうと言っていたが、ポリスノーツでまた集めてやがる。嬉しい限り。
ただ、声優を多く使うと言う事は、プレイヤーが関与できない時間が増えることでもあり、本作ではかなりコントローラ不要の強制イベントシーンがある。
本作はアドベンチャーゲーム形式での限界点が見えたゲームと言えるかもしれない。思い切ってゲームじゃなくなるか、ゲームに立ち戻るかの地点に立ったと言える。
ストーリーは良いのだが、小島脚本はパターンが一緒で先が読め過ぎてしまうので、監督に専念してメイン脚本はそろそろ止めてもいいんじゃ無いかと思う。
ゲーム中に呼び出せる用語解説が、サイバーパンクの流れを汲む情報過多シナリオには非常に有り難い。ただネタバレもあるので、あまり一生懸命読めないのがいろんな意味、辛いかもしれない。
メタルギアやスナッチャーと同じ世界での話なので、ファンは「おっ」と言うシーンも用意してあり、そのへんは小島作品ならではと言える。
トゥルーモーションは、サターンの標準的なシネパックより圧縮効率で劣るが画像クオリティが高く、プレイステーションの標準であるモーションJPEGよりも圧縮効率が高く画像クオリティが少し落ちる。
おかげで映像がPS版よりも多く入る、PSでは別のソフトとして発売されていたパイロットディスクも、サターン版では一緒になっていることでその圧縮効率が想像できる。
映像クオリティはゲームとしては「問題ないレベル」となっている。
サターンの高解像度もあり、スナッチャーと比べグラフィックの質は相当に向上しているし、元の絵そのもののクオリティーも本作ではかなりプロのアニメーターに外注していると見え、非常に高い。
多くのゲームで失敗しているレンダリングCG映像は、非生物(メカ)のみに上品に使ってあるので非常に上手くいっている。
EMPS(宇宙用パワードスーツ)のデザインが非常にリアルで、カトキハジメ万歳な感じ。ただ、他の小物のデザインは無難でそれほど良くは無いのが残念。
ガンシューティングシーンはパッド用に作られているので、ガンコントローラを使うと逆に難しくなったりするのだが、気分は非常に盛り上がる。
このシーンの出来は流石にリーサルエンフォーサーズ等の良質ガンシューティングを多く作っているコナミだけあって、ここだけ取り出して一本のゲームとして発売できる程良くできている。
ちなみに、殆どのアップになる女性の胸に触る(揺らす)事ができるようになっていて、「胸揺れ監修」スタッフをつける程の力の入れようである。
なにが小島をそこまで駆り立てたのか(笑)
また、初回特典として特製写真集+シールなどついてくるのが結構嬉しい。
サターン版はガンコントローラか使える事や、パイロットディスクの内容も入っていること、映像もかなり手を入れられてクオリティが向上している事もあり、「ポリスノーツの最終形態」というキャッチコピーに恥じない出来と言える。
3DO版が1994年に作られていたのが、色々な意味驚異的である。
そこで結論。
CD-ROMアドベンチャーの金字塔。SF映画好きは避けて通れない
1998-10-04