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クエスト「オウガバトル」シリーズのチームが、スクウェアに移って発表する、重厚なファンタジー。
スクウェアが「ファイナルファンタジー」で蓄えたテクニックを駆使して、プレイステーションの性能限界に挑む。
アクションRPGに分類されるものだとは思うが、実際のところ手先の器用さはほとんど必要とされない。もしくは、作戦で十分カバー可能なレベルになっている。
しかし、バズルやシミュレーション、そしてRPGの要素は十分であるので、アクション性が低いからつまらない、と言う事は全くない。
アクションが不得意な人にこそプレイしてほしいゲームと言える。
武具は、種族ごとの相性、四元素+光闇属性、突く切る叩くの攻撃の種類が設定されている上に、部位(リム)まである。
これを知った時点で、私の中でのクソゲー率がかなり高まっていた。というのもゲームは、何を加えるかより何を切るか、の方が断然重要な作業だと思っているからで、このゲームはその作業に失敗したんではないか、との恐れを抱いたのだ。
しかし、それは幸い杞憂となった。
相性がかなりハッキリとダメージに現れるように調整されているため、きちんとした装備を整えると断然強くなる。その逆も然りである。
そこで、敵の特性を見極め、ハッキリとした方向性を持って装備を整える必要が出てくる。
単純に攻撃力の高いものを装備すればいいとなれば、装備は単純作業にすぎないが、特性を見極めて装備を整えると、抜群に効果があるのだから、最適の装備を考えるのがかなり楽しい。
そのような調整であるため、たいていのRPGで何の役にも立たないステータス強化魔法の効果が高い。
そして、ステータス強化魔法の効果が高いゲームは、大抵良いゲームであり、このゲームもその法則を外れるものではない。
武具には耐久度と熟練度があり、耐久度が0を割ると極端に性能が落ち、熟練度が上がるにつれ性能が高くなる。
下がる方は一点を境にガクンと落ちる(デジタル的)のに、上がる方は数値に合わせて上がる(アナログ的)のがミソだ。性能が落ちるストレスは一回だが、上がる方は常に感じる訳だ。
熟練度を消費して耐久度を回復する事ができるので、熟練度が最高になると耐久度を回復させ少し落ちる事になる。これがうまい具合に、単調になりがちな戦闘の繰り返しに波を作り出している。
大抵は、耐久度は単なるストレスの元でしかないが、本作は調整がうまく、適当な緊張感と変化を生み出している。
戦闘は複雑なアクションは排除し、ボタンを押すタイミングだけのシンプルなものである。
戦闘はタイミングよくボタンを押す事で連続攻撃や特殊防御ができるが、それによってリスクがたまっていき、命中率や防御力が落ちる。
4,5回も連続攻撃を行うとリスクが極端に増えるので、アクションが巧いからと言って、やたらと連続攻撃をするわけにはいかなくなっている。
逆に、下手でも1,2回目のタイミングは分かりやすいので、連続攻撃できる。
そもそも、全くタイミングが合わない場合でも、1回は攻撃可能だし、特殊防御が成立しなくても、通常の防御は自動的に行われる。
しかも、ブレイクアーツというHPを消費して発動する技もあり、それはアクション性を必要としないので確実に発動できる。HPはアイテムで回復できるし、敵のいないところでじっとしていれば回復する。
と言う訳で、全くアクションができなくても、実のところそこまで困らない仕組みだ。
また、どうしようもなくへたくそで攻撃をばんばん受けると言う場合も、攻撃を受けると防具の性能が上がるようになっている。
つまり、最終的に巧い人も下手な人も、最大限に巧くプレイした結果、ちょうどいいバランスに落ち着く、というよく考えられたルールだ。
他にも、いろいろと述べたい部分もあるが、とにかくルールが良く考えられている。
アクションRPGに不可欠と言えるバズル要素も十分で、シンキングラビット「倉庫番」の変形だが、3D要素をうまく使った面白いものになっている。
メインのルートには、それほど難しいパズルは置かず、脇道に手応えのあるパズルが置いてあるため、パズルの得意不得意に合わせた楽しみ方ができるようになっているのも上手い。
これだけ複雑なルールにもかかわらず、メニューのインタフェースが抜群によくできていて非常に遊びやすい。
一つ難を言えば、武具の合成の部分を、もう少しユーザーが楽できるようにした方がよかったかもしれない。アトラス「女神転生」シリーズの悪魔合体を体験していると、ちと面倒。
また、合成するより拾ったものを、そのまま使った方が強かったりする事もある。最終的には、合成した方が強いのではあるが。合成の面白さを多少削いでしまった感もある。
とにかくビジュアルセンスが良く、少ないポリゴンをうまく使ったモデル、そしてテクスチャーの色使いのうまさが際立っている。
PSのリアルタイムポリゴンゲームでは最高のレベルであることは間違いない。
単に奇麗なだけでなくプレイ中も見やすい。この両立は難しいのに、ちゃんとやっている。
視点を変更して間近に見ると、思ったよりテクスチャが荒い事に驚かされる。通常のプレイ中はもっと細かく思えるのだ。適当に写真を撮って加工してテクスチャにしているのではなく、最終的にはすべて丁寧にドット打ちで調整しているのは間違いない。
とにかく、グラフィックに関しては、手放しでほめていい。
基本的にはクォータービューの視点であり、回転も45度毎に固定されているので、プレイしやすい。
背景をリアルタイムポリゴンで作ると、ついカメラを自由に滑らかに動かしたくなるが、ばっさりそこを切り捨てて実を取っている。
イベントはムービーではなく、リアルタイムポリゴンで、ゲーム本編とシームレスに展開される。
台詞は吹き出しを使って表示され、音声が無いので素早く表示され、いつでもスキップ可能となっており、非常に快適。過剰な演出をしないのが心地いい。
ゲームシステムにしろ、イベントやグラフィックにしろ、切るところと残すところの見極めが巧みで、PSの力を最大限に使っている。
おそらく、このソフトのクオリティは、ハード設計者の想定を相当に上まっているだろう。
ストーリーは非常によくできていて、先を知りたくなるが、ゲームとの関わりは少々薄い感もある。
ゲームシステムと絡む訳でもなく、前に進むための餌以上の役割は、ゲーム的にはあまり無い。
所謂「やりこみ要素」も、非常に気が利いていて、マップの制覇率や、アイテム収集率、タイムアタック、その他、完全攻略情報を余さず教えてくれるため、目標がたてやすい。
クリア時の強さが持ち越される、2週目の存在も嬉しい。
とことんまでマニアックなシステムを、使い勝手の良いインタフェースと、至極のゲームバランスで、一般プレイヤーにも遊べるレベルまで引っ張ってきた、と言う、「やりたいけどもできない事を、やってしまった」希有なゲームと言えるだろう。
ここまで取り上げてないが、音楽や効果音の出来も良い。
また、ミニゲームでお茶を濁さず、全編同じルールに貫かれているのも評価が高い。
マップ構成も良くできていて、先のマップを見たいマップを埋めたいという欲求が、グラフィックやストーリーと合わせ、ゲームを進める力になっている。
とにかくほめるところは多く、悪いところを探すのが難しいゲームである。
ただ、売り上げや評判を見ると、さほどでも無いのが残念。
そこで結論。
「名作と言うにふさわしい、PS最高峰のゲーム」
2003-11-14