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呉ソフトウェア「ファーストクイーン」、テクノソフト「ヘルツォークツヴァイ」などのリアルタイム戦争ゲームの流れに乗りつつ、DMA Design「レミングス」のようなパズル要素をもつゲーム。
謎の惑星に着陸したプレイヤーが、現地のピクミンという生物を指揮して、周囲に散らばった宇宙船のパーツを集め、自分の星に帰るのが目的。
基本、ピクミンは主人公のオリマー(ちなみにマリオの逆さ読みだ)の後をついてくる。
Cスティックでピクミンの群れを直接操作する事もできて、生物の死骸やペレット(丸いキャンディ風のエネルギー)に押し付けるように移動させると、持ち上げて移動をはじめる。
ピクミンがそれらを巣に持ち帰ると、種がまかれ芽が出るので、引っこ抜いて隊列に加える。
これを繰り返してピクミンを増やし、障害物を沢山のピクミンでどかすなどして、探索範囲を広げる。
そして、宇宙船のパーツを発見して、これもピクミンに運ばせる。
といった所で、実にシンプル。
加えて、戦いと火に強い、遠くへ飛ばせて爆弾が持てる、水に入っても平気で溺れているピクミンを助ける、という3種類のピクミンがいて、これらを使い分ける事で、より深いプレイができるようになっている。
1種類に複数の特徴を持たせているのが、非常に上手い。
グラフィックを見ると、ビンが落ちてたりして、どうも地球の庭が舞台っぽい。
そこに住んでる生物はピクミンをはじめ、少なくとも現在の地球の生物ではない。
つまり…人類滅びてる? とか思わせる、明るい画面と裏腹な変に皮肉の利いた設定だ。
プレイ後の日記でプレイの反省やら生き物の特徴やらのヒントが出るのが非常に気が利いているが、その日記の中にも「酸素の含まれる有毒な大気」とか、妙に科学的かつ皮肉な感じの記述が出てくる。
プレイヤーの操作でピクミンがアッサリ溺れたり、敵に食われたり、置き去りになって死ぬのは、任天堂「巨人のドシン」を思い起こさせる無常観だ。
ピクミンを殺さずにゲームを進めるのはかなり困難だが、一切ピクミンを殺さずにゲームを進める事もできる。
つまりピクミンが死ぬのは「常にプレイヤーに原因」があり、常に画面に向かって「ごめんなさい」という思いを送りながらやるゲームになっている。
そもそも、ピクミンたちの動きが、敵に投げつけたら必死(と思っている時点で任天堂にしてやられている)にしがみ付いて攻撃したり、オリマーの後ろをいろんなものに気を取られながらよちよち付いてきたり、凄く感情移入を促す、保護欲をかもす作りになっている。
なんだこりゃ、罪悪感発生装置か。
CMソングの「愛のうた」がスマッシュヒットを飛ばしたので、ゲームそのものよりも歌の方が多くの人の記憶に残っているように思うが、決してゲームがつまらなかったというわけではない。
ゲームは非常に面白いし、実際ゲームキューブの中では異例のロングセラーとなっている。
一見、非常に特殊なゲームに見えるが、実際は次のような中味で、凄くゲームらしく作られている。
Bullfrog「ポピュラス」などのように、放っておくとピクミンが建物を建設し始めるとかはなく、マップ自体の変化は少ない。
マップの変化は、用意されている仕掛けを動作させることで起きるので、制作者が用意した問題に想定された回答をする、というプレイスタイルとなっていて、Sierra Entertainment「インクレディブル・マシーン」的でもある。
そして、ピクミンの行動はプレイヤーが切っ掛けを与えないと始まらないので、プレイヤーはあっちへ行ったりこっちへ行ったり忙しい。
群衆型リアルタイムゲームでも、かなりゲーム的な作りのファルコム「ロードモナーク」よりも、もっとゲーム的だ。
ステージ数は5つという少なさで、パーツ数は30あるものの、比較的あっさりと見つけられる。
パーツ30個をコンプリートしてクリアするだけならば、ゲームを始めて1晩で可能なレベルだ。
ゲームとしては、1日でどれだけ段取りよく仕掛けを起動させて探索範囲を広げ、敵を倒してエネルギーを運び、ピクミンを増やすことができるかという、チャレンジモード(つまりスコアアタック)の方にかなり比重がある。
パーツを30個集めてクリアするゲームはチュートリアルであり、チャレンジモードで本編が始まるという認識もできる。
このあたりも、かなりゲーム的だ。
左右のアナログスティックを使い、マーカーであるプレイヤーキャラを移動させながら、ピクミンの群れの移動も可能なのが、実に小気味好いプレイ感を産んでいる。
3種類のピクミンの使い分けも、平凡なゲームデザインなら「群れ編集画面に入って編成を変えてゲーム画面に戻る」としてしまいそうだが、ゲーム画面で整列ボタンを押してフィールド上で種類を分けたあと、ピクミンを呼びよせる網のようなカーソルを展開して連れて行きたい種類や数を選ぶという、ゲーム進行を停止させないスマートな作りになっている。
このように、ちょくちょくモード切り換えを行わせない工夫がなされており、リアルタイム性の強いゲームでストレスとなりやすい部分を上手に取り除いてある。
基本のアイディアは軍隊を編成してモンスター退治や敵兵器破壊をするゲームだと思う。
ピクミンという妖精のような宇宙人のような変な生き物を持ってくる事で、戦争ゲームに興味のない層へ訴求するようになっているが、逆に戦争ゲーム好きどころか「誰の興味も引かない」ゲームになりかねない。
よくまー、こんな恐ろしい選択ができるよなー。任天堂の懐の深さを見た思いがする。
逆に、任天堂はどんな変なルールを持ったものも、キッチリゲームにしてくる傾向があって、本作では如実に現れている。
できれば、非常にいいかげんに、ゴールもなくだらだらとプレイできるモードも欲しかったところだ。
あと、こういうリアルタイムストラテジーゲームは、対戦がかなり熱いのだが、対戦モードがないのが残念。
とはいえ、ピクミン同士が戦うというシチュエーションは、イマイチ面白みがないのも確か。
そこで結論。
「リアルタイムウォーシミュレーションをそれと思わせずに洗練させた傑作」
2012-10-15