RPGツクールMZ

対応機種・周辺機器
Mac・Windows
ジャンル
RPGコンストラクションツール
著作・制作
(c)Gotcha Gotcha Games /尾島陽児

基本情報

 RPGツクールMZ(以後MZ)は国内外で人気のRPG制作ツールシリーズで、前作RPGツクールMV(以後MV)以来5年ぶりの新作となる。
 KADOKAWAの完全子会社であるGotcha Gotcha Gamesがほぼ本作のために設立されている。
 かなりの力の入れようである。

 Linux版がなくなり、スマホアプリ制作機能もなくなっている。
 この辺は前作でうまく対応できなかった部分であり、コストに見合わなかった部分でもあるだろう。
 また動作環境が WebGL 前提になったので、古いブラウザでは動かなくなった。
 このあたりは、残念は残念だが順当という感じだ。その辺のサポートを切ったことで生まれるリソースを、しっかり残りのサポートに回していただきたい。

 そして画像や音楽、マップやアイテム・敵などの基本的なデータはMVと互換性がある。
 ただし、エフェクトアニメーションについては Effekseer が採用されたので互換性はなくなったが、MVのプロジェクトの素材をまるっとコピーすればMVのエフェクトも使えはする。

 パッケージ版はないダウンロード専売ソフトであり、公式サイト版とSteam版がある。
 ただしMac版はSteamのみで、体験版はWindows版のみ。

良くなったのか

 実のところほぼ全面的に良くなっている。
 マップのレイヤー指定ができるようになったり、イベント(マップ上に置くオブジェクト)のリストがついたり、個々の追加変更はは確かに改良と言えるものだ。

 ただ改良ペースが、世の中の進化スピードに比べ明らかに遅いのが問題で、MVではコアをJavaScriptに入れ替えたのだから、本作はUIを全面的に改善するフェーズだと誰しも思うだろう。
 ところが「最悪のUIであるMVをベースに」改良しちゃったので、失敗料理に香辛料をかけてなんとか食えるようにした、みたいな改良にとどまっている。
 まさかデータベースウィンドウのリサイズができないままだとは思わなかった。みたいな箇所が大量に残っているのだ。
 ちなみにいうとMVより前のツクールもUIはどんぐりの背比べで、MVが最悪とは書いたが「最悪のひとつ」でしかない。

 つまり正確には「良くなったというよりマシになった」という感じだ。

 とはいえ特にMac版に関してはMVは「テストしてないだろ」と言いたくなるようなキーアサインミスなどUIの不備が散見されるので、MVはもう見るのも嫌だ。
 MZで改善されているというより、MVがひどかっただけではあるのだが。

 またプラグイン製作者的な立場でも、MZは地味な改良ではあるがコアスクリプトの使い勝手やプラグインコマンドの設定方法が改善されているので、もうMVのプラグインは作りたくないし、できればメンテナンスもしたくない。

素材について

 デフォルトのキャラクタデザインについては、絶妙にダサかったMVのキャラに比べ、若干垢抜けているが使いづらくなるほどの個性はないという、結構いい落とし所になっている。
 パッケージキャラと呼ばれているプロモーションに出てくるキャラクタはかなり癖が強くケレン味のある魅力的なデザインだ。
 ただこのパッケージキャラはMZ本体には収録されず、別素材集として提供されるのは、ほぼ詐欺なのでやめてほしい。

 MVの二頭身に足りない頭でっかちでヒラメ顔だったキャラは、基本的なシルエットは同じでドットの打ち方で若干スマートな印象を与えるように変わっているという、実に日本的な微妙改良で残念至極。
 MV用にツクール公式の三頭身のキャラクタ素材セットが無料で提供されていたので、「次回作は三頭身だな」と思ってせっせとMVのキャラを三頭身化していたら裏切られてしまった。いや別に約束したわけじゃないのだが。
 ムキになって個人的にMVの主要キャラに加えMZのデフォルトキャラを全て三頭身化したので、MZを購入した方はぜひ活用してほしい。
RPGツクール素材 ダウンロード - 鳶嶋工房

 マップ画像についても、MVとの互換性を持たせようとして、ほぼ同じ作りだが、微妙に配置が異なり中途半端だ。
 そして変に新しさを出そうとして個性を出し、少々使いづらい画像になっている。
 この辺はモンスター画像や音楽・サウンドエフェクトなどにも言えることで、MVと互換性あるんだからMVのが良かったというならMVの素材使えばいいでしょ、という開き直りが見られる。
 実際に、早期購入特典としてMVをおまけにつける、MV単体の大幅値引きを行う、というMVを素材集扱いにした販売方法が取られている。

 本体は素材の量が少なくてもいいので「これぞ定番」「無難の王様」みたいな、使いやすい素材で固めて欲しかった。 

サポートなど

 機能自体がほぼ同じなこともあって、ヘルプも前作とほぼ同じで分かりづらい。
 ただ、公式サイトの方で公開している初心者講座やプラグイン講座が、かなり分かりやすくできている。
 残念ながら詳細なJavaScriptのリファレンスはないが、ざっくりとした概要は用意されており、本体のコマンドで作るのから一歩踏み込んでJSを活用しようか、という時に途方に暮れてしまうことはなくなった。

 JavaScriptリファレンスについてはムキになって作ったので、MZ購入してJSに手を出そうという方はぜひ活用してほしい。
RPGツクールMZ 非公式JavaScriptリファレンス - クラスツリー

 公式サイトでのサポートも入門止まりで、新規にまとまった講座が現れたりはしていない。
 ちなみに英語版のサポートブログは体制が違うようで、そこそここまめにお役立ち情報が追加されている。

 日本の場合は公式ツイッターでお役立ち情報をつぶやき、公式フォーラムにまとめていく方式がとられている。
 また公式Discordサーバも開設され、ユーザとの交流チャンネルを増やす積極的な姿勢も見られる。
 他にもYouTubeで全BGMを聞くことができるようになっているなど、割と痒いところに手が届くサポートがなされている。

 多少地味ではあるが体験版でマップを作って抽選でMZプレゼントするキャンペーンなど、販促活動も行われている。
 本当なら素材販売のマーケットサイトを作るべきだろうが、公式サイトで素材販売をする作者の募集をしたりしている。

 またバージョンアップはそこそこのペースで行われており、多少バグや変な仕様が追加された場合も、そこそこのスピードで対応されている。
 ただ、複数起動ができなくなるなどの不具合は現在も放置中だ。
 MVの時には「どう使っていいか困る中途半端なコラボ素材」がやたら追加されて困惑させられたが、今のところMZではコラボ素材は(たぶん)なく、地に足のついた追加素材の提供が行われている。

 ほしいサポートは一通りあるというほどのレベルではないが、とにもかくにも頑張ってやろうとしている姿勢は見て取れるので、そのあたりの安心感はある。
 ただMVの頃も週間ツクールというかなり力の入った企画があったものの、そこまで盛り上がりに寄与しないままフェードアウトした過去があるので、本当に安心できるのか?という面もなくはない。

まとめ

 詳細は『RPGツクールMZ』関連記事 目次 - zennに書いているので、細かい部分は書かない。
 また前作はRPGツクールMVのレビューで微に入り細に入り評価しているので、そちらを読んでもらいたい。
 MVの評価をざっくり言えば「初手は手軽に作れるが、UIが最悪」という評価だ。
 MZでその評価はひっくり返らなかった。

 MVは既にMacの最新版に対応しないことが決定したりしていて、随時サポートがなくなっていくフェーズに入っているので、よほどのことがなければMZを購入することをお勧めする。
 また、バージョンアップによって素材フォルダに子フォルダを作成できるようになったりと、確実に改善もされており安定度も上がっている。
 ただし、前述のように素材集として追加でMVを購入したほうがいいとは思う。

参考

 そこで結論。

改良された定番ツール。だが根元(UI)がダメということに気づいてほしい。