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原作の同名小説はボトムズのOVAの脚本も担当したはままさのり作、ベルゼルガ(狂戦士)の名を持つAT(アーマードトルーパー)を主人公メカとした、TVアニメ「装甲騎兵ボトムズ」の外伝である。
イラストには和製ファンタジー小説の挿絵では人気のある幡池裕行、メカデザインにZガンダムで一躍注目された藤田一己を起用。
タカラの模型雑誌デュアルマガジンに連載され、オリジナルATのプラモデル改造記事とのタイアップもあり、小説はそれなりの人気もあり続編も書かれているし、オーディオドラマ化もされている。
とは言え、原作が出版されたのが1985年、いよいよネタないんかいタカラ!!、と思った人も少なくないだろう。
個人的には、この小説のファンでもあるので、結構嬉しかったりする。
バトリング(ロボット同士の対戦)をメインに据えたストーリーは、ゲーム化に向いているのも確かだ。
特にK'(3巻目)になってからの、藤田一己デザインATやストーリー展開には拒絶感を覚えるファンも多いかと思うが、本作ではそのあたりは使ってなくて、1,2巻を元に作られている。
タカラとしては、ここまではボトムズの世界に入れていい、という判断だろう。これは無難な選択かと思う。
ゼルベリオスまでは認めても、テスタロッサは認めねぇ。と言う感じか(ちなみに私はタイラントソードはガンダムワールドとして認めてやってほしいです。このゲームとは関係ないですが)
このような原作を、セガ「バーチャロン」のような対戦シューティングゲームとして仕上げたのが本作。
ボタンで武器モードを切り替え武器を使い分けるのだが、特に対戦アクションゲームであるならば、ボタン同時押しやコマンド入力等を併用し、瞬時に攻撃が選択できるようにするべき。
ターボとスウェーを廃止すれば、攻撃にボタンが4つ割り当てられるので、この問題は解消できたかと思う。
キー割当は、全部カスタマイズできるのだが、初期配置はLRトリガに武器を割り当てた方が良かったかと思う。
「ロボットの攻撃はトリガ」というのが、雰囲気が高まるのは間違いない。特に原作付きのゲームであるので、雰囲気作りを優先させるべきかと思う。
アナログジョイスティックに対応しているのは、高く評価できる。
2本のレバーを使って操作するというのは、ATは勿論アニメのロボット操縦では基本と言えるし、雰囲気は確実に高まる。
ただ、アナログジョイスティックSCPH1110[SCEI]は持たないので、実際の操作感に付いては何とも言えない。
画面分割での対戦は勿論、対戦ケーブルに対応しているのも、いい感じだ。
ATは他のロボットものには無い独特の動作が多い。
それらが再現できるかどうかは、ゲームの善し悪しを決定づけると言っても過言ではない。
ベルゼルガの代名詞である「男の武器」パイルバンカーはとにかくかっこいい。それに、対戦で喰らったら、一撃でやる気なくす強さ。
勿論、AT独特のアームパンチ機構も装備で、作動時の排莢もバッチリ再現。わーい、ガキュンガキュン。
足の裏のタイヤで高速移動を行うローラーダッシュも装備で、前後左右自在に動ける。
特にインパクトのあるの動作に「降着ポーズ」がある。
ATに乗り降りする事は勿論、着地した時に衝撃を吸収する時にも使われる、人間では有り得ない方向に足を折り畳むポーズである。
本作は、降着ポーズ用のボタンが付いていて、存分に降着ポーズを楽しめる。ファッティーの逆降着ポーズも再現!!…えーここで喜ぶのボトムズファンだけです。
ATはターンピックという杭を足から地面に打ち込む事で、高速旋回を行う事ができる。
これとは別にロックオン(敵サーチ)ボタンがあり、ステップでもロックオンするし、ローラーダッシュ中の攻撃もロックオンする。
そのためターンピックはゲーム的には今イチ使いどころが無い。その上、挙動もターンピックの位置を中心として回転していなくて超信地旋回(その場でくるくる)、残念ながらボトムズ感にも欠ける。
と言うわけで、主なATアクションは再現されており、それに伴う音がTVそのままで、ボトムズ世界にどっぷり浸からせてくれる。
画面のレイアウトを見ると分かるが、基本的にセガ「バーチャロン」のシステムを臆面も無く使っている。
これは悪い事ではない、対戦格闘ゲームなんかは、結局全部同じシステムと言ってもいいぐらいだしRPGにしてもそう。幸いゲーム業界は、システムの権利主張が比較的緩く、良いものはどんどん使っていくべき。
そもそも、「バーチャロン」にしても、TVアニメ「装甲騎兵ボトムズ」からの影響は少なからずあるのだが。
ちなみに、対戦ゲームはSFCにタカラ「装甲騎兵ボトムズ ザ・バトリングロード」とかも出てるので、単にどっちが先かと言えばボトムズが先ってことになるが、ちゃんとゲームになってたかどうかは別。
3Dゲームの失敗でありがちなのだが、画面右下の2Dレーダーが良くできすぎで、レーダーだけ見てプレイできてしまう。特に弾よけが楽で3Dの方の意味ねー。親切すぎるのも考えものである。
一時的に能力が上がるターボは、特に使わなくても対処できるので、ちと中途半端。無くした方がすっきりしたろう。
緊急回避手段のスウェーにしても同様。
本作はジャンプがないので、色々緊急回避手段を用意したんだろうが、ゲームバランス的にはさほど意味が無いものとなっている。
ミサイルであっても、あまり追尾力が強くないので、歩いていてすら簡単に避けられるのに、さらに高速なローラーダッシュに欠点が無さすぎるので、避けやすさ抜群。
またカッチョ悪い動きのスウェーの回避能力が高い上に、ステップは勿論、降着ポーズでも回避できてしまう。
と言って、様々な武器を使い分けて追い込むという事も、武器の使い分けが瞬時にできないので、なかなか難しい。
結果、遠距離タイプ同士の対戦だと、双方避けまくって、なかなか決着がつかない事となる。
狙ってどちらかの腕を破壊する事は困難だが、腕を破壊できる。
プレイヤーの腕が破壊されると、当然武器が使えなくなり、追いつめられた感が強くなる。
ゲームとしては、逆転の可能性が低くなって良くないが、やたらと主人公がピンチに追い込まれる原作を考慮すると、いい仕掛けだ。
ただ、様々なアクションの演出がへた。エフェクトも地味で分かりにくい。
特に気になるのが、フィニッシュの攻撃が当たった瞬間に、プレイヤー機にカメラが切り替わる事で、折角破壊しても、その決定的瞬間が見れないという、非常に気持ち悪いことになっている。
他にも敵のコンピュータの頭が良くない、投げが超強力など、問題は多くある。
しかし、お手本となる「バーチャロン」があったおかげもあり、ゲームとして成立するレベルは確保できているし、バトリングの雰囲気は十分に楽しめる。
難易度は、この手のゲームとしてはかなり低い部類に入る。原作付きのゲームとしては、いい判断と言えるだろう。
バトリングワールドは、名も無いボトムズ乗りとなりバトリングを繰り返し、原作のキャラクターと関わりながら、シャドウフレアの謎に迫っていくアドベンチャーモード。
と言う事で、そもそも外伝であるベルゼルガ物語の、さらに外伝という立場になる。
アドベンチャーゲームの抱える、ストーリーが進展しない時にやる事が無くなるという問題が、バトリングによって、あっさり解消されている。
なんだかナムコ「プロテニスワールドコート」等で好評だったようなそうでないよーなクエストモードが、ここに時と会社とジャンルを越えて復活した感じ。
ただ、バトリングの対戦相手が少なく、すぐに自分より圧倒的に弱い連中だけになってしまうのは残念。弱い相手との対戦は、どうしても作業的になってしまう。
単にアドベンチャーゲームとしてみても、わりとシナリオの分岐が多かったり、意外な選択肢の使い方なんかもあって、予想以上に楽しめた。
ケイン=マクドガルは勿論、ロニー=シャトレ、ラドルフ=ディスコーマなど、原作の登場人物やATも多数出演する事も嬉しい。
これのみのゲームだったら作りの粗さや物足りなさもあるが、確実に対戦アクションゲームのおまけの域を脱している。
ATのデータはシナリオの進行データとは別に保存されるため、強い機体で再プレイする事ができる。
このため繰り返しプレイがどんどん楽になり、プレイを繰り返す毎にアクション中心のプレイからアドベンチャー中心のプレイに自然に移行するようになっているし、いくつもの選択肢を試すのも苦でなくなっている。
これはなかなか気の利いた仕掛けだ。これを利用してズルもできるが、それはまぁ良しとしよう。
ただ、小説が原作なのにテキストの出来があまり良くない。正直なところ高校生レベルの作文力ではなかろうか。
幸い、シナリオから原作への愛は感じる事ができるので、無理も多いが目をつぶろう。
バトリングワールドでは、様々なパーツ購入しATをカスタマイズできる。
マッスルシリンダー、ポリマーリンゲルといった、AT特有のガジェットも勿論存在し、雰囲気作りという点では、良くできている。
ただ、ゲームとしてみると、確実に高性能なパーツや機体の存在が多く、最終的なカスタマイズパターンの幅は非常に狭い。
RPG的な方法論では確実に高性能になるものも必要だが、対戦ゲームとしてみるとカスタマイズのしがいがあまり無い。
最終的に対戦で使う事になる最高性能のパーツは、もう少し極端で悩みがいのある能力付けをした方が良かったろう。
スワンピークラッグ等、原作にも登場した地形に合わせた装備があるのに、ゲーム的には地形に対する効果は皆無のようだ。ゲームを複雑化させない意図もあるだろうが、納得いかないのも事実。
後、肩装備の武器は、武器モードを切り替えて使わなければいけないという時点で使い勝手が悪い上に、バックパックを装備しないと装着できない、さらには射出時間や速度などの性能的にも使い勝手が良くないものが多い。
色やマーキングの設定はかなり細かく可能であり、そしてテーマ曲の設定ができるのは素晴らしい。
それに、各パーツの作りはなかなかいいし、なにげにマイナーATツヴァークの装備までしっかりしてるので、性能は置いといて単に好きなATを作るというだけが目的ならば、プラモ気分でカスタマイズのしがいはある。
メニューの作りには問題が多く、全体に余計な操作を強要する。
例えばショップではいくつかのカテゴリー毎に商品が分かれているのだが、カテゴリーに一つも商品が無い場合も、アイコンが表示される。アイコンを選択してみると「販売できるパーツがありません」と来る。Webサイト構築でやってはいけない事の一つ「工事中です」をやってるわけだ。
この例以外にも、背景のせいで字が読みにくいとか、おかしなインタフェースは多くある。
特にアドベンチャーのインタフェースをちゃんと考える事ができる人物がいなかったようだ。
また、ゲーム中に表示される情報の意味が分からないものも多い。
特に武器の性能は、買ってみるまで良くわからないとか、使ってみるまで良くわからない、は勿論、使ってみても良くわからない…なんてのまである。
せめてマニュアルに記述があれば救われたのだが、それも無し。
モードとしては、バトリングワールドの他に、対CPU戦のブルーナイトバトル、対人戦のVSバトル、練習のトレーニングが存在する。
トレーニングは、与えられた課題をクリアしていくのだが、5種類だけしかない。
対戦アクションゲームでは一般的な、動かない敵に対して攻撃の練習をするモードも無いので、あまり練習にならない。
バトリングワールドが練習モードと言えなくもないのだが、もうちょっとトレーニングの方も頑張ってほしかった。
ちなみに、エンディングを見ると制作はセガ「モンスターワールド」等でゲーマーに有名なウエストンとある…あーなるほど、それでちゃんとゲームになってんのかー。と納得。
ゲームになっている以上のものでもないけど。
そこで結論。
「原作再現度と面白さを両立した佳作」
2005-02-22