脱出王 あとがき

 本格的インタラクティブフィクション脱出王のあとがきです。

 とにかく、一部屋ずつ解説を行ないます。
 まだ全部屋を脱出してない人へのヒントにはあんまりなりません。
 私自身が、本を読む時にあとがきを最初に読んじゃうタイプなので、すぐ読めるようにしました。
 でも、先に読んでも、何がなんだか分かりませんので、プレイしてから読む事をお薦めします。
 …プレイしたあと読んでも、さっぱり分からない指数はかなり高いと思います。

1番の部屋

 記念すべき、ひと部屋目です。
 このゲームでは、必ず「おめでとうございます」と脱出者を迎える事にしています。
 脱出というこのゲームで一番大切なタスクをクリアした人は、やっぱり褒めなきゃね。
 色々と出迎えのパターンを変えた方が面白いんじゃないかとも思いましたが、下手に変えると脱出が成功したかどうかがよく分からなくなっちゃう。
 同じ理由で、パスワードは必ず「ハンカクカナ」というフォーマットを取っています。このフォーマット見たら「やった!!」とプレイヤーに思ってもらえるように。
 ドラクエのレベルアップ音みたいなもんです。

2番の部屋

 ログを見ると、プレイ開始した人の3割程がこの部屋に来てません。
 これは「文字だけのゲームという時点で逃げ出す人が3割はいる」と理解して良さそうです。海外から来た人も含めてですから、実際はもっと少ないと思いますけど。
 この部屋に入った人のほとんどが3の部屋にも行ってますから、逆にいえば「7割は文字だけのゲームを受け入れる」と理解して良いと思います。これが多いか少ないかは判断できません。
 このドア、1と違って鍵穴がついています。テストプレイしてもらった人の、鍵穴がなきゃやだ、との意見を取り入れました。微妙なヒントがプレイの快適さを高めるのだなー、とちょっと反省。

3番の部屋

 謎解きだけでは飽きられると思い、兎の本を置いています。絵本だと勘違いしている人が多いようですが…、文が少ないし絵本ぽい文章だからでしょうね。
 読み物で「探す」モチベーションを上げようというのと、物語による印象づけです。
 分岐はルートを増やす事で、詰まった時にやる事が無くなる事を避けるためと、エンディングまでの難易度を下げるための仕掛け…「大して下がってませんが!!」
 更には、ルートマップを描く面白さと、パスワード探しの楽しみをぱらぱらと振り掛けてみました。隠れキャラみたいなもんですね、別ルートへのフラグになってるあたり正にスペシャルフラッグ。

4番の部屋

 多分、ここが最初の詰まりポイントだと思います。
 この難易度は、3の部屋に戻って分岐探すなり、見つけた分岐に進んでもらったりするためのものです。
 そろそろ飽き始める気がしたんで、動詞で悩んでいただこうという意図もあります。

5番の部屋

 意外にこの部屋に来る人が少ないようで、9の部屋(つまり、分岐なしで突き進んで6部屋目)より来る人が少ない。
 どうも、みんな思った程は4では詰まらずに先に進んでいるみたいなんです。というか、兎の本に気がついてない?
 仕掛けは単純に、引き出しを開けたり閉めたりで遊んでもらおうという部屋。

6番の部屋

 脱出といったらもう大脱走等でおなじみ、穴掘りです。例の音楽を頭の中で演奏しながらプレイしていただけると、気分はマックイーンです。
 金象印のスコップのパロディですが、園芸する人だけ分かってもらったら良いです。はい。
 脱出方法は、コナミ メタルギアソリッドのスネークをイメージしつつ。勿論、チャールズ・ブロンソンでも結構です。

7番の部屋

 アドベンチャーゲーム慣れしている人は、もう敷物を見たらこの行動を行なわずにはいられない。
 そのぐらいの基本行動なんですが、馴れない人はここで詰まると思って、部屋に来るためのパスワードにヒントを入れたんですが、ヒントって思ってない人もいそうな…。
 敷物を元に戻した人いるんだろうか、クリアには関係ないけど、なにげに高難度動詞だったりする。

8番の部屋

 ランダム要素と戦闘要素が面白い筈だ、と思って入れた部屋です。
 ただ、戦闘を入れる事で殺伐とさせたくなかったので、ハエタタキ。なぜか伝説の…

9番の部屋

 前作 秘密の館で蛇口の開け閉めができないのが、どうにも心残りで作りました。
 ちょうど作っている時に、秘密の館で蛇口を使わせて、とメールが来て、自分の感覚は正しいと確信。勇気づけられました。
 コマンドを入れるたびに状況が変わるという、時間の概念を取り入れてます。

10番の部屋

 今後 秘密の館をプレイしたり、既にプレイした人のための類似問題。
 つい謎を組み合わせすぎて恐ろしい難易度になってましたが、謎を抜いて難易度を落としました。
 それでもダミーはあるし、結構な難易度です。個人的にはダミーは好きじゃないけど、練習ですから、そういうのも入れておきました。
 二つ目の本棚です。どーでもいいですが、ホンタテでも認識するのは恨みからです堀井さん。

11番の部屋

 不思議な空間から脱出するCUBEって映画があります。
 この脱出王というゲーム全体の発想はそこからいただきました…「観た事ないんですが!!」ははははは。
 機械に入力する練習の部屋なんですが、謎が難しすぎたよーな気がしないでもないです。

12番の部屋

 そろそろ、物語がないと持たない気がするので、状況説明を導入。
 短い説明でも想像しやすいように、既存の物語からいただいています。
 ちなみに、筒は正式名称でも取れます。特撮オタクはニヤリ。
 12番に部屋が割り振られている事でも、ちょいニヤリとしつつ、それはセブンだろと突っ込むがよろしい。
 ダミーにスプーンを置こうとしましたが、マニアックすぎるのでやめました。

13番の部屋

 13は死を連想させる不吉な番号です。
 実は即身仏になって村を救おうとした坊さんを、村の衆が助けたという物語がそこにはあったりするんです。出ちゃ駄目じゃん坊主!!
 それはともかく、この部屋を脱出できた人はハドソン サラダの国のトマト姫のクリア率が断然上がるはずです。

14番の部屋

 自分で作っておいて、間違えてパスワードにキカイオーと入力、あれバグ?とか思ったのは「秘密にしてほしい!!」
 この部屋ぐらいに来ると、プレイヤーが完全に飽きてると思い込んでます私。
 で、ちまちま脱出なんかしてられっかー、というわけでかなり多くの動詞で暴虐の限りを尽くすことができます。
 プレイのご褒美の象徴である「!」マークが多いのも気持ちがいい。
 部屋を脱出した後、どちらかというと大工の源さんじゃないか?と思った人もいるかと思います。
 でも、それだとゲーオタかパチプロしかわかんねーし!

15番の部屋

 パスワードの入力間違えて、ここに来る人がいても良いかなと思ったんですが、見事に途中をすっ飛ばして来れた人はいるんでしょうか?
 それはともかく、コミュニケーションの練習です。
 ドラクエが普及した現在ハナスは問題ないでしょうが、キクってのは結構コペルニクス的転回動詞なんで、気合いを入れておきました。
 ちなみに、最初はグランセイザーにしようとしてました。何が?と思う人も多いでしょうが。
 答えを知ってりゃ、いきなりクリアできるのが、この部屋の醍醐味です。びっくりコナミだね。

16番の部屋

 そろそろ、難易度をがつんと上げてもいいかと思って最初は都市を答えさせる気だったんです、国じゃなく。
 自分がどちらかというと地理オタクのケがある事に気づき、難易度ががくんと落ちました。
 それでも難しい人には難しいと思います。
 なんでその地名なのかというと、兎から発想しました。
 答えの地名とはカタカナだと一緒なだけで、実は違うスペルの別地方なんですけどね。
 資源に乏しい日本にとって、これから重要な地域になってきますから、興味を持っていただくとよろしげかと。
 ゲーム内の情報だけで完結してるゲームは、あんまり好きじゃありません。
 発展性がないというか、教育的じゃないというか「無駄な時間過ごした感が大きい」というか。
 コマンド(CUI)入力ゲームだと、そもそも辞書を引きまくってると思うんで、特に配慮しなくても十分教育的になるから素敵だ。

17番の部屋

 パスワードから6に続いてスティーブ・マックイーンだ!、と思った人もいるかもしれませんが、そーじゃありません。
 12から物語性をより高めた部屋になってます。メインルートなので、難易度は低めに。
 ちなみに、(おとこ)は正式名でも見たり話したりできます。
 さらなる好き者は、台にくくりつけられている時点で、もうひとつの有名な言葉を叫ぶべし。
 そして、よく考えたらそれ言ってるの先輩の方じゃん、てゆーかノリダーじゃんとか突っ込んでいただきたい。

18番の部屋

 マリオっちゅーたらドンキーでしょ、そしてDKラップは名曲だねっ。
 というわけで音楽。音がないゲームだからこそ、音楽とかテーマにすると良い感じ。
 話しかけを無視する、けだものっぷりがお気に入りです。

19番の部屋

 脱出ゲームは、暗い所から始まるのがひとつのパターンです。
 でも、もともと画像がないゲームでやって面白いんかいな、と思いまして。
 文章量の多い少ないで、光の量を表現してみたっちゅーわけです。
 割と成功してるんじゃないかと思います。自画自賛。

20番の部屋

 この部屋は、もともともは10の部屋と組み合わせてたんですよ。
 デジタルの10だから二進数…だったのに20の部屋じゃ意味わかんねーよっ!!
 このビットを使った数え方を普及させて、日本のコンピュータリテラシーを向上させたいもんです。

21番の部屋

 ここまで、ショートカットの操作説明を一切せずにやって来たので、多くのプレイヤーは、動詞を毎回打ってる。
 そこで便利なショートカット入力を説明です。
 まだクリアしてない部屋や見つけていない部屋をプレイするのがグーンと楽になるというわけです。
 いちいち入力するのダルいぜー、と思って来た所でこのアメ。ウマー。
 この部屋は動詞が最初から全部分かっていて、全然ゲーム性が違うという裏切りがすげぇ。めちゃくちゃだこの作者。
 さらに、マジックハンドでリモコン操作的なメタ操作をやらせるという無茶。

脱出王検定

 答えを知っていれば、いきなりクリアできるのが、コマンド入力型の醍醐味です。
 でも、カンでパスワードを入力して、いきなりここに来ても絶対クリアできないという。
 全体のプレイにスコアをつける役割でもあります。
 最初は、各部屋毎に隠しパラメータみたいなのつけてスコアをチェックしようかと思ってましたが、ずっとスコア意識してプレイするのって息が詰まるなー、てなわけでやめ。
 ご褒美として分かりやすいので、今後スコア付きのゲームを作らない、とは言えませんけど。

脱出王

 これだけ作っておいてフーディーニや引田天功ネタが無いのはどーゆーことだ、とか思った方ごめんなさい。
 勿論、希代の脱出王の皆様には敬意を払っております。

 80年代のアドベンチャーゲームに比べると難易度低いと思います。
 なんせ、入力できるコマンドがカタカナで出ると言う時点で、相当ヌルゲーです。
 でもいまどき、当時のような不親切なゲームをやる人なんか、ほとんどいません。
 そんなわけで、頑張って難易度を落としてみたんですが、落とし足りない部分も多いようです。

 各部屋を脱出するという楽しみとともに、パスワードを見つけルートマップを作るというメタな楽しみも提供しています。
 でもそれって、練習ゲームのくせにゲーム性が高次元すぎねーか!?と反省しないでもないです。

 ところで窓もない部屋なのに、なんで部屋の中が見れるのか、って不思議に思った事だと思います。
 でも窓を置くと、窓にも仕掛けしなきゃいけないでしょ、外の景色の説明もしなきゃいけないし。
 外の説明すると、それを利用しないと脱出できないように思っちゃうでしょ。
 そんなんプレイヤーだって制作者だってかったるいんです。そんなわけで端折ってるんです。
 想像力を刺激するゲームなだけに、迂闊な説明するとプレイヤーの妄想が暴走するので、もろもろ端折ってるんです「手抜きじゃないんです!!」(って、これが言いたいだけか…)

 それとこのゲームは何をもってクリアとみなすかってことですが、一応は21の部屋を脱出すればクリアです。
 全ルートを発見して脱出とか、そこまではみんなしないだろ、との予測で作ってます。
 ただ、全ルート発見して脱出したくなるようには作ってますけど。
 自分がプレイヤーだったら、たぶん1ルート+αぐらいで満足しちゃうんじゃないかなぁ。コンプリートを目指さないタイプなんで。
 一般的にはやっぱりタイトルですし、「脱出王」の称号を得たらクリアってことでしょうね。

 このゲームを作るにあたって意識したのは、任天堂 メイドインワリオ ゼルダの伝説、セガ ミスターボーンズ スイッチ、サイアン マンホール ミスト等です。
 …テキストアドベンチャーひとつもねぇー!!あ、インフォコム ゾークは意識してますとも。
 特にショートゲームを重ねる事で生まれるメタなゲーム性という意味では、メイドインワリオを強く意識しています。

 一通り遊んだら、自分が好きな物語の主人公だと思ってプレイすると、また違った楽しさがあります。
「君」が「ブラックジャック」だと思って壁を叩くと、おっ「触診」とか思ってまた違った趣があります。「ターミネーター」だと思ったり、「綾波レイ」だと思ったり、その他諸々のキャラクタと思って脱出するのが、結構面白い。
 いつもとは違った発想が出るので、今まで解けなかった謎が解けて見事脱出、という事にもつながります。ただ動物はお薦めしません、「カム」とか「ホエル」とかできませんので。

 あと、クリアする時に作ったメモは、大事に取っておく事をお薦めします。
 10年後とかに発見した時に、今の状況を思い出して凄く懐かしくなること請け合いです。

 では、次回作で会いましょう。