虚空の揺籃 あとがき

 虚空の揺籃のあとがきです。
 ヒントにはあんまりならないと思いますが、ゲームを作るにあたって何を考えていたかを色々書いてみようかと思います。
 プレイ後に読むことを薦めます。悪いことに、ゲームクリアのためネタバレは、ぜんぜんしてません。

 実況プレイ動画も作りましたので、そちらも一緒に置いています。
 動画の方はヒントどころか、そのままプレイすればクリアできますけど、色々端折っているので、むしろプレイしてみたくなるかもしれません。

 そもそも、このシナリオ秘密の館より先に書いたんですが、自分の経験不足やシステムの不備があり、後回しにしたものです。
 てゆーか、最初からこんな大きなもの作ろうとすんなよ、馬鹿だな俺。
 結局のところ経験不足は、まだ厳然としてあり、中途半端な状態になってしまいました。
 そんな反省しつつ、あとがきです。

ゲームらしくないゲーム

 本作は最初、特にゲームの目的が提示されません。
 狭義のゲームでいえば、ひどいゲームだ、と言って間違いありません。何やっても成功じゃないのです。
 黒地に緑の文字とともに、不安感の演出としてゲームとしての良さより優先させました。
 本作では、全体的に「ゲームとしての当然」をかなり無視して、演出やらキャラ、物語を優先してます。

 詰まりは少なめで、ゲーム的面白さ(達成感)は微妙な作りです。
 断片的な情報から、結局どういう状況にあったのかを推理して遊ぶ、というところに面白さが出ないかなぁ、と。

 ストーリーの先を知りたいというのをヒキとして利用し、面白さは「困難を乗り越える」という面より「状況を体験する」という部分で担保しようとしています。
「状況を体験する」面白さは、主に女の子とコミュニケーションを取る部分で作ってます。
 ただ、自分の性格というか、ゲームに対する姿勢というものもあって、だれでもエンディングにたどり着ける、というところまで難易度は落ちていません。

 以前書いたゲームの定義「楽しむものである・ハッキリとしたルールがある・進行に干渉できる」には完全に適合してますけどね。
 File1-2からは目的も発生して、捕則である「勝敗(目標)がある」も加わって、私が考えるゲームにしっかりハマり。つまるところ「ゲームらしいゲーム」になってます。
 このあたりをちゃんと考えて作っているから、私の作るゲームは面白いんだけど、逆に限界もあるように思います。
 どーしても「ゲームらしさ」を入れずにいられないと言いますか。
 コマンド入力という時点で、既にハードル上げてるんだから、その上にまた難易度を上げようとしなくてもいいのに…って思うんですが、ゲーマーの私が「そんなんプレイしてもつまんねーだろー」って言うのよね。

参考 : 鳶嶋工房 / コンピュータゲーム / エッセイ / ゲームってなんだ

パスワード

 本作では何らかの行動がそのままパスワードになってます。
 やらされてる感を出さずに、いかにプレイヤーを誘導するかの、ひとつの回答です。かなり力技ですが。
 ちょっと思いつかない行動をさせたい、しかし難易度は高くしたくないし、簡単になるとはいえイベントで処理もしたくない、ということで取った方法です。

 たぶん、ほとんどの人が行動の押しつけを感じずにパスワードを打込んだんじゃないかと思います。
 そしてたぶん、シーン冒頭の導入部の主人公「君」の行動に疑問を持たなかったんじゃないか、と期待しています。
 パスワードに偽装しているとは言え、間違いなくプレイヤーが入力した行動に従って、導入部は展開されていますから。

パラレルシナリオ

 最初にシナリオの大筋を選ぶためのシーンがあり、大きな分岐はそこだけ。とすることで数本のシナリオをプレイできる。
 最初はこの方式を考えてました。

 でもシナリオを分割したところで、結局は全シナリオやるだろう、それなら順番にやってもらった方が、謎と答えの出し方が一本道の方が出しやすい。
 ということで最終的には、各パラレルを順にやっていく作りになっています。
 シナリオは、パラレルシナリオの名の通りパラレルワールドであり。一つの物語を主人公となる人物などを変え多角的に見たものではなく、一つの状況から発生する可能性を幾つかプレイする、という形。

 ちなみに、パラレル名が洋蘭なのはダジャレです!

辞書システム

 さて、ゲームには「ご褒美」が必要ですが、ご褒美として嬉しい物を考えた時に浮かんだ物のひとつとして「新たな知識」というものがありました。
 本作では、「ご褒美=新たな知識」を得るための装置として、データベースという物を採用しました。
 ゲームで言えばチュンソフト におけるTIPや、コナミの小島作品に多いデータベースや蘊蓄キャラ、みたいなものです。
 ほとんどヒントにはならない情報ですが、情報を得る事自体が快感となり得るはずです。
 新たな知識を得る事自体に快感を覚えるのが人間だ、と言ったのは誰だったか(最近だとマギの学長先生が魔導士限定で言ってたな)
 本で言えば、とにかく注釈が多い火浦功や士郎正宗みたいなかんじでしょうか。

 二つのウインドウを行き来しながらプレイする、ということも面白そうだと思いました。
 折角のマルチウインドウのOS(ブラウザ)なのですから、ゲームでも活用したいじゃないですか。
 とは言っても、辞書を起動してコマンドに入力するための同義語を探す、Web検索でキーワードの意味を探すとか当たり前です。
 そう考えるとどーも余計なお世話なシステムな気もします。

 SFなので片仮名言葉を出さざるをえない状況が発生するんじゃないかと予想し、そのカタカナを回収する装置として辞書を付けたという意味もあります。
 そして、ほとんどアイテムと言ったらキーしか出てこない本作の、宝探し要素を担うのが、この本編で使えないカタカナを辞書で補填するシステムです。
 書いてみて分かったんですが、カタカナ無くても大抵どうにかなるので、カタカナ回収装置としては、ほぼ意味なしでした。とほー。

 結局のところ、今ひとつ整合性の良くないシステムになっちゃったので、良いところもありつつ全体としては失敗したかなぁ…辞書システム。

恋愛ゲーム

 このゲームは、恋愛ゲームのつもりで作ってます。
 しかし恋愛テーマなのにSFにしちゃうあたりが、オタクだよなー。これじゃ売れんよなー、って思う。

 恋愛とはコミュニケーションである訳なので、会話を充実させました。
 あと、恋愛ゲームなのに相手に触るコマンドが標準で装備されてないとか、駄目だと思うんで、タタクやサワルの反応も充実させました。
 そのうち、現代日本を舞台にした恋愛ゲームも作りたいですね(8年がかりで)

各シナリオ解説

 絵は、オフィシャル設定ではなく、一人目のファンである作者によるファンアート、二次創作と思ってください。
 ゲーム内では、あまりヒロインの容姿を規程しすぎるような描写は避けていますので、ご自由にヒロインを脳内でカスタマイズして下さいませ。
 美しいとか可愛いとか、そういう抽象化された表現で、ほぼ押し通してます。

File1-1

映画エイリアンとその影響下にあったアニメ装甲騎兵ボトムズ
さらに影響下にある感じですね、このシリンダーのイメージは

 透明な円筒の中に女の子が入っていて、それを解放する所から始まる。
 死にすぎ王子 と 虹の王女と、パターン一緒です。
 オープニングに相応しいと思えるパターンとか、ひとりの中にそんないっぱいはありませんて。

 いいんだよっ、好きなんだからっ!わたしゃ、しつこく出すよ「透明の円筒に入った美女」をっ!
 心のどこかで、透明の円筒に入った美女さえ落ちてたら(落ちてませんから)、絶対俺に惚れると思ってるフシがあります(惚れませんから)
 キリコとフィアナが、第一話以前に会っていた設定とかオレの中では無いから!!

File1-2

この髪は猫耳なんすかね。寝起きだから寝癖ってオチじゃないでしょうね

 File1-2は、かなりこのゲームのハイライトですね。
 ほぼ会話だけで持たせようとしている訳ですから、インタラクティブフィクションとしては、なかなか斬新です…よね、たぶん。
 既に、脱出ゲーム的な進行方法ではなく、なんかフラグ立てたら進む的な作りになってきてます。

 記憶がないというかなり不安な、ホラーっぽい出だしです。
 その不安なところから会話で情報を得て、少しずつ不安をなくしていくシーンでもあります。
 一気に情報が渡されるのではなく、プレイヤー自身が聞くことで能動的に情報を得られるのが良いところ。
 相手が下着姿の女子ってのが、恋愛ものにありがちな無邪気(あるいは不思議)女子によるエロテロリズム!

 男女二人というシチュエーションのゲームでは、リンダキューブが印象的です。
 本作の場合は、多分にビークルソフト ラグランジュL2シリーズの影響を受けています。主人公の名前を、ライルにしようかと思っていた位です。

File1-3

男子の裸には照れるモトさん

 倫理のない閉鎖空間で若い男女二人、というシチュエーションの面白さ、が本作のコンセプトの一つ。
 迂闊な事をすると暴力をふるわれてしまいまうので、コメディ的展開に使っています。

 このシーンでは女子が扉一枚を隔てて裸になり、次に同じところで自分が裸になる事で、より異性を意識するメソッド。
 ラブコメの伝統芸みたいなもんですね。

File1-4

テンジョウは海の中から上を見たようなイメージを持ってます
モトは足だけ。

 ここがわりとクリアできない人が多いんですわ。
 ここだけ死にすぎ王子 と 虹の王女メソッドですからね。
 ゲームオーバーにクリアのヒントが書かれているとゆー。

 ここでヒロインを救って、よりヒロインに感情移入していただこうという仕掛け。
 なので、あんまり簡単にしたらその心理的仕掛けが作動しないので、そこそこの難しさ。

File1-5

照れると易前腿を繰り返す系女子、モトさん

 んでもって、彼女のヘヤにお邪魔して本人公認でベッドを物色するプレイヤーですよ。
 ここが一番スタンダードな脱出ゲーム的な作りですね。

 これが、飯野賢治さんが言うところの「デジタルの悲しみ」ってやつでしょうか。当たらずとも遠からず?

File1-6

デゼニワールドにこういうC-3POもどきが出てましたよね

 今度は自分の部屋に彼女をご招待…というか、ヒロインに運ばれるパターン。
 逆にヒロインに助けられると、ヒロインが好きになるんじゃないか、という仕掛け。

 気絶して運ばれる主人公って、ラノベ的には多い気がする。
 個人的には新世紀 エヴァンゲリオンのシンジ君を意識してます。「シン2」だしね。

File1-7

この髪型がどうなってるんだか、良く理解できてない

 このへんになると、長文も読んでくれる、間違いない。
 ということで長々と説明台詞が続く、ある程度種明かししちゃうぞゾーン。

File1-8

一応、早川SF文庫風味を狙ってます

 流石にこのゲームのパターン慣れてる筈なので、複数名のキャラクタと会話するのも大丈夫だろう、ということで複数キャラ。
 三角関係になる相手が貯蔵人格とか人工知能ってのがもうね、ちゃんと恋愛ゲーム作ろうとしてますかあなたは、という感じ。

File1-9

惑星は頭上にある印象が強いですね、個人的には

 ここは、ほぼインタラクションのあるエンディングです。
 流石にここでつまってクリアできなくなる人はいないだろう、という感じの作りです。
 全編、このくらいの難易度で作るべきだったんでしょうが、ねー。

 引き蘢りが社会に出て行く的な暗示ですね。
 実際に私、この後に就職してますし!

 別に、そういうメッセージを作品に込めた訳ではなくて、脱出ゲームとして扱ってもらうための言い訳ですね。
「脱出ゲームです」と言っておくと、プレイ人口が全然違うんで。
 そういう事するから、プレイヤーの皆さんの感想で「普通の操作の脱出ゲームが良かった」とかゆーのが上位を占めるんですが!!

File2-1

ウルトラマン的な衣装だよな、改めてこのカラーリング見ると

 繰り返しになるので、色々端折ろう、ということでヒロインたちはもう起きてるところから始めてます。
 File1-1では脱出ゲーム的な体裁をとっていましたが、ここではテキトーにあれこれ試して、フラグが立ったら次に進める、って作りになってます。

 パラレル2になると女子が増えて2人となり、姉妹どんぶり状態でウハウハですよ。
 所謂三角関係になる事で、恋愛力学の作用により「安定した不安定」が形成され、あちらこちらと引っ張り合いをしつつ、盛り上がる作り。
 恋愛ゲームならなきゃいかんでしょう、三角関係。パラレル1の時点からシン1やアンクとの三角(四角?)関係なんですけどね。

File2-2

岡本太郎的なロウカにしたかったけど、私にそんな実力はない

 ヒロインが一人いないところで、もう片方のヒロインといちゃいちゃする背徳感を楽しみましょう!
 あと、パラレル1のモトの情報が曖昧だった部分を、賢いジーンに解説してもらうという復習のシーンでもあります。

 キャラが一人増えた事によるパラレルの変化を出そうと、廊下にペイントしてます。
 モトが前述の通り体力タイプなので、ジーンが芸術家タイプ、シンが科学者タイプという感じでしょうか。
 タイプを連発すると任天堂ポケットモンスターっぽいですね。
「ジーンは むなもとチラリを つかった」ずががっ!「こうかは ばつぐんだ!」みたいな。

File2-3

ロリは難しいなぁ…

 食事というのは、それが仮想のものであっても人を幸せにします。
 特にかわいい女の子に挟まれてする食事とか、素晴らしいと思います。

 ここでジーンに触ると伏線が示されるんですが、やらないとクリアできない行動ではないので、伏線としてはイマイチ機能していません。
 ただ、ゲームはそういうのがちりばめられている方が面白いので、他のシーンでもちょこちょことプレイヤーによって知ってることもある伏線を埋めてます。

File2-4

グローブつけると車田っぽく感じるな、この髪型

 今度は、もう一人のヒロインであるモトといちゃいちゃしよう!
 という事で組み手ですよ! 拳で語り合う愛!

 そんな深い意味はなく、格闘インタラクティブフィクションをやりたかったのでぶち込んだシーン。
 このシーンのために、パラレル1から延々ヒロインの格闘能力の高さを印象づけてきたのですよ。
 ヒロインの腕っ節がある程度強くないと、男の子であるプレイヤーにあっさり押し倒されてしまうので、つまらんというのもありますからね。

 セガバーチャファイターのデュラル的に技使ってきますが、カタカナを大量に出すわけにはいかないので、アキラの技を中心にチェン親子の技を絡めた感じです。
 他の場所では、ほぼランダム使ってませんが、ここでは使いまくってます。
 これしっかり作れば、かなり面白くなりそうな予感がするので、誰か作りませんか。ホビージャパンクイーンズブレイド(ロストワールド)みたいなシステムをベースに!!

File2-5

若干、タトゥーっぽく

 また気絶して運ばれる主人公。場面転換のために気軽に気絶させられてます。酷い。

 自分の部屋を確認しておくシーン。
 自分自身からの手紙、というのがなかなか体験的には面白いかなと。
 インタラクションによる体験が、このゲームの面白さの骨子なので、シナリオも体験が面白いかどうかを優先して書いています。

 エニックスジーザスやワープエネミー・ゼロのように、遠隔操作的なシチュエーションを入れたかったというのがあります。
 最終的に、ここで採用したのは単なる通信ですけどね。
 確か両作品とも「透明の円筒に入った美女」シチュエーションがありましたね。

File2-6

なんの絵だか分からん!!

 ここはFile2-4の予習の成果を遺憾なく発揮していただく。そんだけのシーン。
 比較的ノンキに進んできているので、ショッキングな体験を入れたい、というところ。

 ここは例外処理として、コンティニュー画面(という文章)が入ってます。
 あんまり例外処理は入れない方が良いんですが、テクスティオはわりと簡単にこういう処理を追加できるシステムなので、シナリオを作りなおすより簡単に軌道修正できるので便利は便利。
 一度、ほとんどの入力が例外処理なインタラクティブフィクションもやってみたいですね。

File2-7

いやーんえっちー! 的な!!

 ただもー、エッチなシーンを入れなきゃ! という使命にかられての!!
 本作は恋愛ゲームなので、当然エッチなシーンも必要なのです。

 将来的に性行為そのものを行うインタラクティブフィクションを作る事もあるかもしれないので、その練習。
 …作んないだろうなぁ。このインタラクティブフィクションって両手塞がっちゃうもんなぁ(笑)
 音声入力だと両手空くけど、エロゲーで音声入力とか無理ゲーすぎるわ!!

 SFで女性というと、地上最強の美女 バイオニック・ジェミーを思い出さずにはいられないのが、一定の年代の人間だと思います(断言)
 あと私、神崎将臣重機甲兵ゼノンの陽子が好きなのよね、たぶん陽子もジェミーが元ネタだとは思うけど。
 そんなわけで、特にかたわ少女とかを意識した訳ではありません。
 扱いが難しいので一般的ではないですが、障碍者ってのは萌えのかなり強い要素だとは思ってて、そこを意識はしました。

File2-8

会議中

 パラレル2のモトとはあまり会話をしていないので、ここで会話できる状況を作りました。
 キャラが二人いるので、ボケとツッコミに分けられるのが良いですね。テンポ良い。

 ここで情報を集めて、最終決戦に挑みます。
 ラスボス前のレベル上げ、みたいなシーンと言えるでしょう。

 次のFile2-9とシームレスなシステムにしようかと思いましたが、会話は会話、セクハラはセクハラ…もとい、スキンシップはスキンシップで分けた方が、集中してセクハラ…じゃないスキンシップできて楽しいだろうという事で、分けました。
 単純に、1ファイル毎の仕掛けが増えるとデバッグが大変だってのもあります。

File2-9

またねー

 File2-5でのヘヤの予習と、File2-8での会議の結果を踏まえて、わりと脱出ゲーム的な謎解きをやります。
 あと、File2-8ではおとなしくイスに座っててできなかった二人とのスキンシップもできちゃうとゆー、ある種ボーナスステージ的なやつでもあります。

 さてエンディングです。
 結局ニュウショクチってどこだったのか、よく分かんないですけど、よく分かんないなりに進むしかないよね!
 という、パラレル1と同じような、広い世界に出て行き行動せよ!! 的な締めです。
 ただ、今はインターネットがあって、引き蘢ってても広い世界には出て行けるので、引き蘢りつつ行動できるのがいいよね!

 いやー、思ったより色んなシステムを欲張ってぶち込んでますね。そりゃ簡単に完成しない訳だわ。
 次に作るときは、新しい試みは少なめにするように心がけよう。

 では、次回作でお会いしましょう。