格闘のボタン使い分け
格闘での攻撃ボタンがどのように使い分けられているか調査しよう
ボタン配列の基本
ボタンの配列はどうするべきか、それによって発生する効果はどうあるべきか。
今回はパッドではなく、ゲームセンターで一般的なスティックタイプのものについて、特にボタンの数が多い対戦格闘ゲーム、その攻撃ボタンに注目して考察を行いたい。
ボタンの使い分けについてはボタンの共通機能も参照して欲しい。
対戦格闘ゲームの攻撃ボタンには二つの軸があるのが普通だ。
それはすなわち、強弱と攻撃の発生場所だ。
ボタンの数が6個のカプコン系のゲームでは、だいたい以下のような配列になっている。
弱 | 中 | 強 | |
---|---|---|---|
パンチ | |||
キック |
コレを基本に「パンチ+キック」の2ボタン、「弱中強」の3ボタン、「弱強パンチ+弱強キック」の4ボタン、なんかが割と多い所。
「弱中強の斬り+キック」、「弱強+ショット」、「パンチ+キック+強」、「パンチ+キック+弱強の斬り」なんてな変形もある。
攻撃ボタン以外に、スペシャルボタン、特殊移動ボタンなどが付くゲームもあるが、ここでは割愛。攻撃ボタンのみを扱う。
まず、ボタンの配列は表のような、「上列がパンチ、下列がキック、右に行く程威力大」というのが大原則であろう。
特に説明しなくても、スムーズに納得してもらえる事と思う。
ただし、攻撃ボタンが二つの場合は、パンチとキックは横に並べても良い。
人間の指は横に並んでいるので、基本的にボタンは横に並んでいる方が使いやすいからだ。
上下の意味付け
パンチは単にパンチという意味だけでなく、上という意味も持っている。そしてキックは下だ。
腕は上に、脚は下に付いているのだから、当然の発想と言える。
この点からも、パンチを下・キックを上に置いたり、キックやパンチを縦に並べたりするのは、分かりやすいコマンドを設定する際の足枷になるので、極力避けたい配列と言えよう。
ボクサータイプのキャラクターの場合は、キックを使えないのが普通なので、パンチの上下打ち分けに使われる。
逆にテコンドーやカポエラタイプは、パンチを使わないのでキックの打ち分けに使われる。
カプコンストリートファイターシリーズのサガットのタイガーショットの場合、上段ショットが、下段ショットがと使い分けしてある。
キックボタンで腕による攻撃をするのは多少違和感があるが、それよりも同じレバー入力後のパンチとキックで上下を振り分けた方が分かりやすい、というわけである。
方向の使い分け
弱中強は、その名の通り威力の大小が異なるのが通例だが、(それと同時に)そうでない使い分けも存在する。
例えば、攻撃方向。カプコンX-MENのアイスマンのアイスビームは、弱で斜め下、中で前、強で斜め上に撃ち分けられる。
ただ、威力と攻撃方向の対応は覚えにくい。一応はキックの通常技が弱中強となるにつれ、多くの場合角度が上がるのと対応していると言える。
しかし、さほどハッキリとした傾向があるわけでもないので角度との対応を理解しづらい。
ボタンで角度を使い分けるよりも、コマンドで角度を使い分ける方が分かりやすい。
は斜め上、は正面、は斜め下、という具合だ。
ただし、同じ必殺技の角度の使い分けのためだけにコマンドを用意すると、もう他の技に使えるコマンドが無くなってしまうという問題点もあり、痛し痒しである。
飛行速度の使い分け
飛び道具は、弱中強と飛行速度が速くなるのが普通。
これは、通常技が弱中強と動作が緩慢になる傾向にあるのとは逆。
「強い=性能が良い」と考えると、「強い=速い」というのも分からんでも無い。
また、投球に例えるならば「強い(肩)=速い(球)」という式も成立するだろう。
個人的には、「弱攻撃は速い」というイメージが先に立つが、既に定着している「強い=速い」法則は、特別な理由が無い限り、ひっくり返る事はなさそうである。
出現時間の使い分け
だいたい通常技は弱中強と動作時間がのびる傾向にある。
そこで、技の出現時間の使い分けに弱中強が割り当てられる事がある。
これはかなり分かりやすい。
移動距離の使い分け
それから、通常技は弱中強とリーチがのびる傾向にある。
そこで、移動距離の使い分けにも割り当てられる。
これもなかなか分かりやすい。
画面端まで届かないタイプの飛び道具の飛距離も、同様の「強い=遠い」の法則がある。
パンチキック総合の強弱の順
ちなみに、パンチでもキックでも同じ技が出る場合は、という順に強さが並んでいると見なすのが普通。
というのも通常技の強さも、この順に並んでいる傾向にあるからである。
特に、この順にチェーンコンボが可能なカプコンヴァンパイアシリーズでは、理解しやすいルールとなる。
実際の格闘技では「キックはパンチの3倍の威力がある」等とも言われるので、パンチよりキックが強いというのは、経験的にも分かりやすい。
この強さの順を、距離等に置き換えて使われる。
例えば、カプコンヴァンパイアセイヴァーのアナカリスの「棺の舞」では、棺を落とす位置に割り振られている。
縦同時押し
パンチとキックの縦押しは比較的覚えやすいので、特殊な動作を行う事に使われる事が多い。
縦押しだと弱中強の属性は残るので、同じような意味のものを並べるのにも適している。
例えば、カプコンストリートファイターZERO3だと、スーパーコンボのレベルの使い分けに縦押しが使われている。
パンチやキックの属性(上下も含めて)が消失するため、能力強化や援護攻撃等のパンチやキックとは関係ない意味を持った動作に使われても違和感が少ない。
縦押しは、ボタンを増やしたいけど、ハードの制約やナニやで、もうこれ以上ボタンを増やすわけにはいかない場合に割り当てられる、という事が多い。
縦押しで、比較的分かりやすいのはカプコンストリートファイターⅢ3rdで使われている、「弱パンチ弱キック同時押し」で「投げ」になるというパターン。
その二つのボタンを押すのはまず間違いなく親指と人さし指、つまり「つまむ」のに近い操作なので、相手を掴む「投げ」をイメージしやすい。セガバーチャファイターを初めとする3D対戦格闘で多く採用されている事もあり、使いやすい。
それから、「又 + 強ボタン」で投げとなる場合は、通常攻撃を出す操作と同じなので、所謂「自動二択」という状況が発生する。つまり、投げられない状況の時は通常技、投げられる時は投げが出て、プレイヤーが安易に使ってもリスクが少ない、という場合も出るわけである(通常技の性能にもよりけりだが)。それを防止する理由からも「弱パンチ弱キック同時押し」で投げという操作には意味がある。
さらに投げ可能でない場合は、投げスカリポーズを入れて、より投げを安易にうてなくする事もできる。
SNKザ・キング・オブ・ファイターズシリーズでは、「強パンチ+強キック」がふっとばし攻撃、つまりさらに強い攻撃に割り当てられている。
強いものを二つ押せばもっと強くなるだろう、という感じで分かりやすい使い方と言える。
ただ、キックやパンチの属性が無くなるのに、出る技はキックだったりパンチだったりするのは分かりにくい。ボタンの分かりやすさの点からは「気を放出する」というような、キックでもパンチでもなく、全キャラに装備して違和感の無い技に割り当てるべきではある。
横同時押し
横列(パンチもしくはキックだけ)の同時押しは、2ボタンの場合「」「」「」の3パターンがあるが、離れていて押しづらいので事実上「」は使えない。
同じく3ボタンの場合は「」の1パターン。
3ボタン同時押しは失敗しやすいので、あまり頻繁に使いたくはない。
例えばシリーズの調整のひとつとして、カプコンストリートファイターZEROでボタンの数で使い分けていたレベルがボタン弱中強の縦位置に変わったり、渡辺製作所/エコールソフトウェアMELTY BLOODは、3ボタン発動であった強制開放が2ボタンでも可能になったりしている。
事実上、3ボタン同時押しなど使うものではない、という認識が形成されていると言えるだろう。
となると、弱中か中強の同時押しとなるが、それに意味付けをするのは難しい。
対戦格闘ゲームの場合、キャラクターの前後が敵との位置によって変るので、前後の意味付けをするわけにもいかない。
押さえる指が一定しているとも言いがたいので、指から意味付けを行う事も困難。
確実に意味がつけられるのは、同時押しをするボタンの数、という事になる。先にも書いた通り、2ボタンより3ボタンは難しい操作でもある事からの意味付けもしやすい。
となると、横同時押しでは弱中と中強は同じ「2ボタン同時押し」という操作となり、「3ボタン同時押し」と合わせて、使いやすい同時押しとしては、二つしか選択肢が無い、と
事になる。
結論としては、一つより二つ、二つより三つのほうが強くなる、というまこと分かりやすい使い方以外の使い分けは難しい、ということになる。
斜め同時押し
「弱キック+中パンチ」なんかの斜め押しは、非常に覚えにくいので、もし使うとしても斜め押しは全て同じ意味、という風にして使うのが無難。
ボタン斜め押しはカプコン(アリカ)ストリートファイターEX2のエクセルコンボ始動に使われている。
ネオジオ系
ネオジオ系のゲームは、配列が一定していない(主に、ネオジオ純正かカプコン式の2つ)ので、考察しずらい。
一応は、純正パネルの横4ボタンを基本として製作されているので、全て横同時押しで解決されているとも言える。
ネオジオ純正パネルの場合「」と並んでいるゲームが多く、2ボタンの場合
「」
「」
「」が、3ボタンの場合は
「」
「」が、割と色々なシステムに使われている。
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表を見てもらえば分かる通り、カプコン式のパネルの場合「弱キック+強パンチ」は斜め押しになる。左下と右上の同時押しとなり、比較的押しやすいのが救いだ。たぶんSNKもその辺は意識していたとは思う。
左から3ボタンの同時押しの場合は、親指で弱キック、人さし指と中指でパンチ二つと、ここまでは、横1列でも2列でも同時押しがしやすい。
右から3ボタンの場合は、下段のボタンが2つになって、強キックに薬指や小指を使うことになり、かなり押しづらく誤操作も多くなってしまう。
それ以前に3ボタンの場合は、パンチとキックの上に強弱も混在する事になるので、意味付けが難しく、丸暗記するしか無い。とっさの判断が重要なアクションゲームで、記憶違いで誤操作をしてしまうのは、なんとも切ない。
3ボタンにするぐらいなら、専用のコマンドを用意した方が覚えやすさの面からは良いと言える。
弱+強の同時押しは、分かりやすいが、横一列に並んでいる場合、離れた位置のボタンの同時押しになってしまうため採用できない。
ネオジオ格闘のボタン同時押しのバリエーションを狭めていたのは、その配列にある。
ただ、SNKのネオジオのボタン配列が間抜けなのだと言い切る事はできない。
というのも、SNKもネオジオが、まさかこんなに対戦格闘一色のマシンになるとは思わなかったろう。
ネオジオデビュー当時(1990年4月)は、カプコン「ストリートファイターⅡ」も登場(1991年3月)していない。スーパーファミコンが出た(1990年11月)のも、ネオジオの直後である。
むしろ、2003年現在、ネオジオが現役でアーケードで稼働している事を、驚異的な設計の先進性と、優秀なソフトがあったからと、絶賛すべきだろう。
そこで結論。
意味付けが、ボタンを覚えやすくする