メニューの次元
メニューはいかにして、コマンドを整理しているか
メニュー
今回はコマンド選択法としては一般的な、カーソル移動+決定方式を中心にメニューの構造に付いて取り上げる。
最近のゲームではまず間違いなくどこかにメニューが導入されている上に、そのコマンド量も増大する傾向にあるので、メニュー部分の作りこみは大切な事と言える。
特に以下では、大量のコマンドをどうやって整理するかに着目したい。
コマンドを画面上に並べただけでは表示できるコマンドの限界がすぐに来る。そこで様々なインタフェースを導入してコマンドを整理することとなる。
コマンド選択法で述べたことを思い出しながらコマンド選択のインタフェースを整理し、利点と欠点に付いても考察してみる。
列を増やす
コマンド数を増やすために、まず思い付くのはコマンドの列を増やすことである。
列を増やせば、単純に2倍3倍とコマンド数を増やせる。
一度に画面に表示されるコマンドが増えるので、プレイヤーが選択可能なことが一覧できることが利点である。
欠点は、どうしても画面の面積を多く消費してしまう事。
アドベンチャーゲームでは常にコマンドが画面に表示される事が普通なので、極力コマンドが占める面積を減らしたい。そのようなわけでコマンドが2列になっていることは稀である。
階層を深くする
2回選択をさせれば当然バリエーションが増える。
例えば「どうする?→道具」「誰の?→主人公」「どれを?→ 弓矢」「どうする?→使う」と言う具合に次々と選択させる方法である。
これは単語を組み合わせて文章を作る感覚に近いので、極力「名詞」「動詞」という括りでコマンドを分けた方がしっくり来る組み合わせになる。
利点は、ツリー形式にしてカテゴリ分けする事で多くのコマンドを整理できる事。
特殊な事例は、さらに階層を増やす事で対処できるという柔軟性がある事。
欠点は、一回選択してみないと、その下に用意されているコマンドが分からないため、一覧性が落ちる事。
それから、操作回数が増えるため煩雑であり選択に時間がかかるることが問題点としてあげられる。
欠点をある程度回避するために、これまで選択したコマンドを画面に残すなどの工夫をしている。
このページの「鳶嶋工房 / コンピュータゲーム / エッセイ / メニューの次元」という階層表示のような感じである。
浅い階層と深い階層のコマンドを混在させられるので、良く使うコマンドに付いては階層を深くしない工夫が必要。
また、コマンド実行後どの階層まで戻るかもきちんと考える必要があるし、深い階層から通常のゲームに復帰するボタンもあると操作性が向上する。
スクロール
コマンドをスクロールさせるという方法もある。
利点は、スクロールがない場合とスクロール有りの場合に操作方法の違いがない事。
画面の面積を節約できる事。
アイテム選択などの、コマンド数が変動する場合に対応しやすい事。
欠点は一覧性が落ちる事。スクロールさせるのに時間がかかる事。
全体に占める現在の項目の位置と量を表すスクロールバーを備えていると、検索が楽になる。
また大量に項目がある場合、しばらくスクロールを続けるとスクロールが速くなるという仕組みが組み込まれている事も多い。
この工夫も善し悪しで、相当丁寧に調整しないと逆に使いにくくなってしまう。
アナログスティックを使える場合は、スティックの傾きでスクロール量を調節できる事が望ましい。
スクロールにかかる時間を減らすために、多くのゲームではLRトリガをページアップダウンに割り当ててある。
単純に画面に表示されるコマンド数で切り替えが行われるため、さほど検索が簡単になるわけではない。
また操作の直感性に欠ける。Rトリガを割り当てるべきなのは、アップかダウンかと問われれば、即座に答えられない事と思う。
(横書きの場合の)ページめくりと同様に、Lがページを戻す、Rがページを進める、という割り当てにするのが順当であろう。
ページ切り替え
ページ状にしてコマンドを増やすと言う手もある。
スクロールがその名の通り巻き物ならば、こちらは本である。
実際にこの方式は、巻き物が本になったような利便性の高さがあると言っても過言では無い。
利点は画面の面積を節約できる事。
多くのコマンドに素早くアクセスできる事。
欠点は一覧性が落ちること、操作が複雑になる事。
ページめくりは、文字の並びと同じ方向にするのが一番感覚的である。
ゲームで標準的な、左から右への横書きの場合は、Lがページを戻す、Rがページを進める、という割り当てにするのが順当であろう。
このページの[Prev.][Next]もその法則にしたがっている。
LRトリガでページめくりができる場合は、プレイヤーがその操作に気づかない可能性も大きいので、 画面に矢印とともにLRの表示をしておく事が大切である。
さらにLRトリガを使わない代用操作も用意しておくと万全と言える。
例えばカーソルが画面端にある場合、さらに画面外方向にカーソルを動かすと次のページに移動するといった操作である。
同じ操作には一貫した意味を持たせることが操作性の向上につながる。
これは同じゲーム内でも当然の事だが、LRによるページめくりは、多くのPRGで「キャラクター変更する」操作に使われているので、これに合わせるのが順当であろう(これについては、以前書いたボタンの共通機能も参照して欲しい。
階層になったコマンドの補助として使うのも、良い使い方と言える。
このページから次のページに移動するのに[エッセイ]リンクで一つ上の階層に戻ってタイトルを選択しても良いが、[Next]をクリックする方法も使えるという具合である。
ページが多い場合、次のページが何かを教える、全体における位置を表示するなどの工夫も必要になってくる。
根元を増やす
メニューを開くときのボタンをいくつかに分ける手もある。
ツリーの根元を増やせば、上に乗るコマンドもボタンの数に合わせて2倍3倍と増やせるわけである。
利点は、素早くコマンドの選択ができる事。コマンドに画面を占領されないこと。
欠点はボタンを覚えておく必要がある事。
例えば、多くのRPGではメニューボタンとマップボタンを持っている。
最初にメニューを開くボタンを間違えると、いちいちキャンセルして戻らなければいけないが、キーボードショートカットのように、よく使う機能を直接開けるボタンを用意するという方法ならば、メニューを開く根元の部分を増やしつ、操作性を落とす事を防げる。
エニックスドラゴンクエストシリーズの便利ボタンのように、使用頻度の高いコマンドを、直接ボタンに配置すると言う方法も、比較的良く使われている。
決定ボタンを複数に
決定ボタンを複数にする事で、コマンド数を増やす事もできる。
利点は、素早くコマンド選択ができる事。
欠点は、最後の選択に使うモノであるため、コマンドの数だけ、ボタンとコマンドの対応があり、操作が複雑化する事。
事実上、覚えておく事は不可能なので、最後のコマンドは画面上にボタンとの対応が表示されるとか、ボタン毎の機能を共通化するなどの工夫が必須である。
そのような工夫を行えば欠点はある程度解消されるが、面積を取ってしまうという別の欠点が出てくる。
多くのゲームでボタンに異なった機能を持たせているのは、決定ボタンとキャンセルボタンまでである。
逆に、決定ボタンとキャンセルボタンの機能分けならば、ほとんど全てのメニューで採用されているとも言える。
例えば、任天堂ゼルダの伝説シリーズでは、最後の決定ボタンによって、それに対応するボタンにアイテムが装備されるようになっていることで、アイテムを配置するボタンを選択する階層を省いている。
メニューでアイテムを選ぶ時にCボタン上(うえ)で選択すれば、今後そのアイテムを通常のシーンでCボタン上で利用できる。
まとめ
多くのゲームでは、このような方法をいくつか組み合わせる事でメニューの次元を増やし、大量のコマンドを整理している。
しかし、これらの次元を意識せず場当たり的にメニュー作っているようなゲームも少なくない。
メニューの作りが特に良くできているゲームを上げると、エニックスドラゴンクエストシリーズ、スクウェアファイナルファンタジーシリーズ、任天堂ゼルダの伝説シリーズがあげられる。
感動のストーリーとか、映像が凄いとか、パズルが面白いとか、そう言う事以前に、売れるゲームと言うのは、きちんとインタフェースが作ってあるのだ。
地味に思えるメニューの作りだが、売れないゲームは十中八九、メニューの作りが悪い。
そこで結論。
パッドと画面を上手く使うとメニューが整理できる