コマンド選択法
昨今のゲームで増加するコマンド、その選択方法を考える
増え続けるコマンド
大抵の操作はパソコンのOSよりもずっと快適に行えるようになっているが、ことコマンド選択操作に関しては、ゲームは劣っている部分も多い。
勿論ゲームとパソコンのOSとは役割が違うので同列に比べる事もできないが、最近の複雑化したゲームでは両者に共通する部分も少なくない。
手持ちのOSの操作と比べながら読んでいただくと、いろいろと納得できる部分があるだろう。
パソコンのGUIのOSは、そもそもCUIにおいてあった沢山のコマンドをどう整理するか、という方向から作られている事もあって、かなり多くのコマンドを使い分ける工夫がなされている。
ところがゲームの場合は、どんどん増えて行く一方のコマンドを場当たり的に追加していった、と言った雰囲気がある。
勿論パソコンゲームはこの限りではないが、コンシューマゲームは解像度や入力装置の問題からパソコンと同じ解法は取れないでいる。
今回は、コマンド選択方法をいくつかに分類してみよう。
ボタン=コマンド
一番基本的なのは、ボタン毎にコマンドを割り当てる方法である。
アクションゲームなどでは、AボタンがジャンプとBボタンがダッシュと言う具合で、リアルタイム性が重要なゲームでは必須の選択方法と言える。
アクションゲームでは今ひとつコマンド選択という雰囲気ではないが、クイズゲームの選択肢は、多くの場合方向キー選択+決定ではなく各選択肢がボタンに対応している。
クイズゲーム以外では、テクモキャプテン翼やエニックスヴァルキリープロファイルも、ボタン選択方式を採用している箇所がある。
また、任天堂ゼルダの伝説シリーズでは、アイテムを直接ボタンに割り振るシステムが採用されている作品が多い。
選択肢がボタンに対応しているならば、選択はボタンを一回押すだけで選択できる。
理屈の上では、方向キーやLRトリガも含めたボタンの数だけコマンドを増やせる。
問題点は、コマンドが多くなるとコマンドとボタンの対応が分かりにくくなること。
ボタンとコマンドの対応を覚えているならば誤操作はほどんど無いが、覚えてない場合は誤操作以前にまともに操作できない。
対戦格闘コマンド
つぎに、対戦格闘ゲームの様な、特定の順番に方向キーやボタンを押して選択する方法だ。
この選択方法は、非アクション系のゲームのコマンド選択にはなさそうだが、意外に多くのゲームで採用されている。
スクウェアファイナルファンタジーⅥ(のマッシュ)やSNK侍スピリッツ武士道列伝(RPG)などがある。
複雑なボタンの組み合わせは呪文詠唱の雰囲気が出るので個人的には悪くないとは思うが、出せない人はとことん出せないので全面的に採用しにくいのが残念なところ。
ただし、決定ボタン2回押し(マウスのダブルクリックのような感じ)という操作は、格闘ゲームとしては連続技にあたるものだが、これは比較的多くのゲームで使われている。
コマンド入力さえできればほぼ瞬時に選択可能であり、多くの選択肢を用意する事ができるのが強み。
選択時間
ごく特殊ではあるが、コマンドを決定した時間によって選択肢を分けると言う方式もある。
アクションゲームでは、ゴルフゲームで一般的なものであるが、非アクションのものとなると、なかなか思い付かない。
有名な所では、セガサクラ大戦で採用されているLIPSがそうだ。
タイトーたけしの挑戦状の地図を日に当てて待つのも、大きく分ければこのタイプと言える。
チュンソフト不思議のダンジョンシリーズでは「チョイ押し」という、押す時間が短い時に選択されるコマンドがある。
逆に、電源ボタン長押しでON/OFFというのはゲーム機に限らず、電化製品全般に見られる。
当たり前だが、選択に時間がかかるとか、正確な選択が難しいとかの問題がある。
ただし、ゲームではその問題点自体を面白さに変えてしまう事が可能である。
とはいえ、メニューには向かない方式である。
カーソル移動方式
最後に、方向キー(セレクトキー・LRトリガ・マウス)によるカーソル移動+決定ボタンという方式。
コマンド選択と聞いた時に、多くの人が思い浮かべる方式であろう。
利点は、誤選択がほとんどない事、コマンド一覧が表示されるので、コマンドに気づかないということは、まずあり得ないこと。
欠点は、コマンド数が増えると瞬時に選択できないコマンドが増える事。
まとめ
このあたりが、主な所であろうか(たぶん)
実際には、これらの組み合わせ、また折衷的な方式を使いって、コマンド選択のバリエーションを作っている。
例えば、「はい・いいえ」の選択は、カーソル移動方式と同時に、ボタン割り当て方式を採用している事が多く、キャンセルボタンを押す事が「いいえ」の選択と同じになっている。
これらの基本的な選択法を組み合わせて、最終的なコマンドを決定するわけだが、ゲーム本編に比べて、まだまだコマンド選択部分(メニュー)は改良の余地がある。
今回の話を基本として、今後しばらくは、メニューに関する話題を、やって行く予定。
そこで結論。
コマンド選択法は、まだまだ工夫の余地がある
追記
この後、プレイステーションのEyeToy、Nintendo DSのタッチパネル、Wiiのリモコン、Xboxのキネクトといった新たな入力機器が発売され、コントロールパッド以外の選択肢も現れた。
これらの機器によりジェスチャ的な入力によるコマンド選択という方法が開拓された。
ちなみに、ジェスチャによる入力そのものはパソコンのマウスによるものや、PDA(Palmなど)のタッチパネルで存在していた。
追記
むしろゲーム機以外のところで人気だったキネクトはに生産中止となった。
マイクロソフトは同様の機能の製品Azure Kinectの開発を続けてはいるが、ゲーム機での積極的な展開は今の所期待できない。
ソニーはモーションコントローラが付属したプレイステーションVRをに発売、面白いソフトも出てきているが、「バーチャルボーイよりは頑張ってる」ぐらいの展開で、VR + ジェスチャの時代にはもう一歩という感触だ。
任天堂はモーションコントローラをさらに強化したSwitchをに発売し、その機能を駆使したゲームも発売しているが、ジェスチャがコマンド選択の共通機能化しているというわけではない。
とはいえ、本格的VR時代にジェスチャは再度注目され、マイノリティ・リポートのトムクルーズみたいなことができるようになるだろう。
ゲーム機は今の所、ボタンレイアウトを考えるで語った通り、ボタンを増やすという方向で対応しているが、そろそろ限界という感じ。
そこで、任天堂ピカチュウげんきでちゅう、ビバリウムシーマン、SCEオペレーターズサイドと2000年前後にチラホラ現れた音声コマンド入力が注目される。
スマートフォンの音声アシスタントと、その応用であるスマートスピーカーの登場で、声でコンピュータを操作することに対する忌避感が薄れているので、ジェスチャの前に音声によるコマンド入力がゲーム機でも一般化しそうだ。