マニュアル再考

ソフトのみのゲームが中古屋にはあるが、マニュアルのないゲームを売っちゃいかん

姉は先に帰ってしまったのである
彼は単に姉の友達とたまたま同席になっただけである

マニュアル軽視の現状に喝

 ゲームのマニュアル(説明書)は、あまりにも軽視されてはいないだろうか。
 マニュアルを見なくても遊べるゲームは良いゲームだろう、しかしだからといってマニュアルがクソミソでも構わないというモノではない。
 マニュアル無しのゲームの価値は半減といっても良い。その価値の落ち方は1割程度ではない。
 しかし、その軽んじられ方は甚だしく。複雑なゲームが増えているにもかかわらず、ますます悪いマニュアルが増えている。

操作方法説明は、インタフェースの出来のバロメーター

 コントローラのボタンに線を引いてボタンの名前だけを書くのは無駄。
 そもそも、ボタンの名前は本体やコントローラのマニュアルに書いてあるし、コントローラそのものにも書いてある。
 もう知っている情報を読まされるの位、イライラさせられる事は無い。
分離型
 プレイヤーは、2個所の情報を見比べながら読む事になり、直感的でない。

 もう一つの方式として、次の図を見てほしい。
一体型
 ボタンの位置と役割が関連づけて覚えられる。ゲームによっては操作が複雑で、この方式では難しい場合もあるが、ゲームメーカーの皆様には下の方式を極力採用してほしいものである。

 どちらにしろ、マニュアルのこの部分に気を使っていないゲームは、ゲーム本編でもインタフェースデザインに気を使っていないのは間違いない。

操作法分離の功罪

 ゲームのルールの中でも、特に操作法は頻繁に参照する必要のある情報である。
 そこで、各社色々な工夫を凝らしている。

 任天堂のNintendo64のゲームには、基本的な操作方法を書いたカードが付属していたが、これは非常に良い解決法といえる。
 ただし、カードを無くしやすい、上手く作らないと参照すべき情報が分散してしまう、内容物が増えると単純に邪魔、パッケージのコストが上がる等の問題点もある。
 そのせいか、GAME CUBEでは廃れてしまった。

 特に操作方法を頻繁に参照する必要があるのが、対戦格闘ゲームである。
 対戦格闘ゲームでは、特に慣れないうちは、非常に複雑なコマンドを参照しながら遊ぶのが普通である。
 しかも、対戦格闘ゲームではその名の通り対戦がメインであるため、操作方法を知りたい人間が複数となる率がきわめて高い。
 この結果起こるのは、対戦プレイヤー間でのマニュアルの取り合いである事は自明である。カードをつければ良いのだが、先ほどあげたような問題点もある。
 コマンド表が欲しいがため「だけ」に攻略本を購入した人も少なくないと思う。
 いくつかのゲームではこの問題に見事な解決法を提示している。マニュアルにコマンドを書くのはもちろん、パッケージの方にもコマンドを印刷しておくのである。
 特にCDやDVDの場合はパッケージが保管時に必要なので、まず無くさない。内容物が増える事も無い、実に優れた解決法と言える。
 しかし問題もある、というのもパッケージに印刷する関係上、情報量が制限されると言う事。コマンドの数にもよるが、キャラクター10人前後までが、この方式の限界と言える。

 そこで、最近はゲーム画面中に操作法を表示するという方法も取られている。
 任天堂ゼルダの伝説シリーズなんかが有名。
 コマンド表示の一種ではあるが、ボタンの機能の説明が画面に出ると言う点で違いがある。
 どちらかというとクイズゲームの選択肢に近いかもしれない。
 ただ、この方式はどうしても画面が狭くなってしまうこともあり、全面的に採用する事は困難である。

画面写真はヒントの宝庫

 マニュアルには画面写真が載っているのが普通だが、その写真の選択があまりにもテキトーなものがある。
 良いゲームのマニュアルの写真は、まず間違いなくゲームのヒントとなっている。
 例えば、パズルをちょうど解いている場面であるとか、敵に有効な魔法やアイテムを使っていたりコースのショートカットをしている場面であったり。

 コレはアドバタイズデモでも同じようにヒントを出せるしやるべきだが、マニュアルの方が説明との関連で使われるため、よりプレイヤーが能動的にヒントとして読む事ができる。

 マニュアルの画面写真は、攻略本の画面写真のつもりで気合いを入れて撮影してほしいものである。

ボタンは機能で解説すべし

 キーコンフィグ(操作設定)付きのゲームの場合、特にアクションゲームの場合ほとんどがそうだと思うが、最初のコントローラの説明の後は、ボタンの説明をする時に「Aボタン」というように、コントローラに書いてある名前で書いてはいけない。
 一見、Aボタンと書いてやった方が分かりやすいように思えるが、キーコンフィグ付けてるゲームでAボタンと書かれても困るのだ。
 設定によって、Aボタンがボムの時もあれば、ショットの時もある。
 マニュアルに「Aボタン」と書いて説明したいなら、キーコンフィグなどいらないような、完璧なボタン設定を搭載して臨んでほしいものである。
 ちなみに、格闘ゲームで言えば、SNK(プレイモアも相変わらず)は「Aボタン」と書いたダメな方、CAPCOMは「強パンチ」と書いた優等生である。多くは言わないが、マニュアルがダメなゲームは他のUIも推して知るべしである。

当たり前だが

 誤情報が載っているマニュアルなど言語道断である。
「このマニュアルのゲームは開発中のものを使っておりますので、製品版では一部異なる事があります」と、書いときゃナニやっても良いってもんじゃないぞ。

 説明文の誤字脱字は勿論、日本語としておかしいと言う事もかなり多い。子供の教育上非常に悪いので、頼むから「てにをは」ぐらいはきちんとした日本語を書いてくれ。

 ゲームの基本的なルールを書いていないという、マニュアルとして最悪とも言えるものも、実のところ少なくない。
 キャラクターやストーリーの説明をする前に、基本ルールをちゃんと説明することがマニュアルの役割。

 そこで結論。

マニュアルはゲームの一部である、あだや疎かにできない

追記

 ニンテンドウパワーの終了にも書いたノンパッケージの場合のマニュアル問題は、ダウンロード販売が一般化した2013年現在も、さほど改善していない。
 パッケージ版のマニュアルをPDF化したものが各社のサイト上で提供されている事が多いが、閲覧方法がまちまちであったり、ゲームから簡単に呼び出せなかったりする。
 操作方法とか分かんないなら攻略本買いなさいよ、という態度にも見える。
 ノンパッケージで売るのならば、マニュアルの根本的な再デザインが必要な筈だが、どうにもいいかげんなままだ。
 本文ではSNKはマニュアルの作りが良くないと書いているが、ネオジオで徹底されていたプレイ前に一通り操作方法を解説する手法は、思えば先見の明があった。

追記

 ダウンロード販売も一般化し、電子マニュアルはかなり充実してきた。
 ゲーム機の高解像度化もあるし、スマートフォンやタブレット端末による電子書籍の一般化も大きな要因だと思う。
 まず何しろ紙の印刷物は様々なコストがかかり過ぎて邪魔でしょうがない、作り手としてはもっと前から無くしたかったと思う。
 にもかかわらずマニュアルの電子化が遅れたのは、受け手にデータによる提供を許容するだけのリテラシーが育っていなかったのが一番大きい理由だろう。
 それまでは紙と電子と2種類用意する必要があり、マニュアル制作のコストが上がっていたことが、2013年追記の混乱を呼んでいた面がありそうだ。

 紙のマニュアルを用意する必要がなくなった現在、マニュアルの質のさらなる向上を期待したい。