ニンテンドウパワーの終了

ロッピーでのニンテンドウパワーのサービス終了だそうだ

おなかはなぜかグフ
オタクであっても女子高生にキャプテンパワーは通じません

ニンテンドウパワーとは

 NINTENDO POWERとは、アメリカでの任天堂の広報誌(他)だが、ここで取り上げるのは、それとは違い、コンビニエンスストアのローソンに設置してあるゲームソフト書き換えシステムのことである。
 詳しくは、任天堂オンラインマガジンのニンテンドウパワー特集を参照して欲しい。

 パッケージ代がかからない、流通にかかる経費や時間がない、在庫不足や不良在庫の問題もなく、パッケージで家の中が狭くなることもない、ゴミも出ない、そして中古ソフト問題もない。

 斯様に夢のある、素晴らしいシステムが、なぜ大して知られもしないままにサービス終了となったか、その問題を検証する。

キャンペーン不足

 最初の頃は、ローソンでニンテンドウパワーのラインナップを解説した本(遊び方ブック)を売ってたのだが、Vol.2って出たんだろうか。
 私はVol.1しか持たないし、Vol.2は見たことない(実際存在しない)

 TVCMって打ったことがあるんだろうか、私は記憶に無い。
 ニンテンドウパワーが開始された1997と言えば、NINTENDO64やゲームボーイが主力商品であったとは言え、やる気があったのか疑わしいほどだ。
 たしか平成 新・鬼ヶ島とかのCMも、ROM版が出た時にしかやってなかったような気がする。

サービス開始時期の問題

 スーパーファミコンがデビューしたのが1990年、N64が1996年。
 そして、ニンテンドウパワーの開始が1997年、明らかに遅い。
 もちろん、サターンやプレイステーションも、1994年に発売されているので、バリバリの現役である(ちなみに、ドリームキャストは1998年デビュー)
 そんな時に、スーパーファミコンの新しいシステムである。「任天堂はN64に不安がある」という噂を作ってN64の足を引っ張っただけ、という評価もあながち外れて無い。
 個人的にはN64のニンテンドウパワーのサービスも始まると思っていたが、結局そんなことも無く。最初からロッピーのハードにスロットが備え付けられていたゲームボーイの書き換えサービスすら、始まったのは、2000年である。遅過ぎ。

設置場所問題

 デジキューブでゲームを買う人間がいる(不思議)ので悪くは無いのかもしれないが、コンビニってのはゲーム買いに来る人間が多い場所じゃ無い。
 私が書き換えをやった時に、店員がもたつかなかったことは無い上に、他の客が書き換えやってるの見たことない。
 中古ソフト問題の解消目的も、ニンテンドウパワーは持っていたと思われるので、中古ソフト屋に置けとまではいわないものの、おもちゃ売り場には無いとまずいんじゃないだろうか。
 それに、ロッピー=ニンテンドウパワーでは無いので、デジキューブに比べて露出度が物凄く低い。
 ローソンの端末でスーファミのゲーム売っていることに気付いている人は、ローソンの顧客の何割だろうか?
 少なくともデジキューブはゲームに興味があるコンビニ顧客全てが存在を認識できていると思える。
 ディスクシステムは、おもちゃ売り場に書き換えシステムがあったんだが。

SFメモリの価格の問題

 何も入ってないカセットに3980円出しますか?
 同じ値段で、何か簡単なやつでイイから、ゲームが入ってて欲しい。1本分(1000円)のクーポン券付きでも良い。
 ファミコンが売れてる頃、山内社長が声を大にして「お客はゲーム機(ハード)が欲しいのでは無くて、ゲーム(ソフト)で遊びたいのです。だから本体はできる限り安くします」なんてことを言ってたと記憶しているが、ぜんぜん生かされて無い。
 ディスクシステムは、発売当初、生ディスクはなくて、全てソフト入りで安価に売られていたのだが、うーむ。
 ゲームボーイのサービス開始には反省したのか、開始当初からスーパーマリオランド3入りのGBメモリを販売していた。

書き換え価格の問題

 旧作が1000円では、書き換えよりも、中古価格の方が安いのが当たり前だったりする。
 不思議のダンジョンシリーズなんかの人気作は、書き換えの方が安いが、面白くて繰り返し遊べるゲームは消さないから、SFメモリと書き換え代がかかってトントンの値段になってしまう。
 新作の場合、書き換え価格が2000円を超える。同じタイトルのROM版が書き換え価格の二倍弱で発売されているが、こちらは店頭での値引きありなので、結果はほとんど書き換えのお徳感が無い。
 2000円以上も出して買ったものを、なかなか消す気にはなれないので、結局SFメモリとセットってことになるが、SFメモリの値段を考慮すると、明らかに損である。
 マニュアルもパッケージも無い点で、かなり損した気分になる書き換えだが、価格そのものでも損するんだから、誰が好きこのんで書き換えるのか?

 書き換えにも数分の時間かかるのも、意外に面倒というか手持ち無沙汰。
 色々考えるに、中古買った方が手軽。
 500円と画期的に安かったディスクシステムのように、専用ソフトは、容量の小さな実験作や追加データを中心に、手軽な値段で、どんどん投入すべきだったろう。
 さらに、データを購入したという形式では無く、所有権を購入したということにして、いったん消したデータも、所有権が残っているので、ローソンに持っていけば復活できるということにしてあったら、ガンガン書き換えて、ガンガン消せるのだが。

マニュアル問題

 データ書き換えであるので、当然マニュアルが付いてこない、30円(タダにしなさいよ、みみっちい)で印刷してくれるマニュアルは、1ページか2ページのお粗末なもので、パッケージ版のマニュアルにくらべると、そのグレードダウン感は、筆舌に尽くし難い。
 そんなわけで、以前販売していたソフトのニンテンドウパワー移植の際には、ゲーム内での遊び方説明を大幅に拡充する必要があるのだが、殆どはデータを移して動作確認をして終わりのようだ。
 せめて任天堂のサイトで公開しているPDFファイルは、パッケージ版と同じボリュームにして欲しいものだが。
 マニュアルはゲームの一部であるし、任天堂自身もそれを認識していないはずは無いのだが、ニンテンドウパワーでは、故意に無視した感もある。

参考マニュアル再考

ロッピーのインタフェース問題

 そもそも、ロッピーのインタフェースは良く無いのだが、ニンテンドウパワーに至っては、顧客を拒否した使いにくさだ。
 ロッピーにSFメモリ挿した時点で、ゲームの書き換えだって判るんだから、ゲーム書き換えの画面を表示して欲しい。
 それから、商品番号入力以外の選択方法が無いのもイタい、信じられないインタフェースのボロさだ。
 商品説明の画面を見て、商品番号をメモらなきゃならないのは、物凄くおかしい。
 そこに書き換えボタンがあって、それを押せるようにするのが当たり前のインタフェースだろうに。
 さらに、ロッピーで書き換えが終わるのでは無く、店員に渡して書き換え作業を行ってもらう必要がある。
 ディスクシステムは、店員に頼めば全てOKだったので、コンソール操作の善し悪しなんか関係なかったし、誰でも簡単に書き換えられた。

ソフトの質の問題

 どんな問題があっても、面白いソフトが1つあれば全てをひっくり返すことができるのが、ゲームの世界というものである。
 実は、ニンテンドウパワー用に、かなりの新作タイトルが出ていて、任天堂のスーファミラインナップの多くを占めるほどだったりする。
 しかし、ニンテンドウパワーの新作には、佳作はあっても、ゲームの歴史に名を残すほどの傑作名作は無い。
 名作のニンテンドウパワー移植にしても、開始時期が遅いのだから、欲しい名作なんか、大抵のユーザーは既に買ってる。
 そうなると、このシステムの存在価値そのものが怪しいと言わざるをえない。

しかし未来はここにある

 ニンテンドウパワーの評価をしてみると、ディスクシステムより失敗、サテラビューより成功、64DD(ランドネット)よりも勿論成功、と言った評価をすることができるだろう。
 ゲーム的には、サテラビューの試みの方が成功したと言える。
 そして、かなりの普及率を誇ったディスクシステムは一般的には失敗と思われている。ニンテンドウパワーは推して知るべし。

 組んだ相手がイマイチだった感もあるが、それにしても問題の多過ぎるシステムであったのは否めない。

 個人的には当時のロッピーの画面に表示されている受付嬢のヘボさが致命的だった気もする。

 しかし、ゲーム流通の未来は確実にノンパッケージ化に向かう、それは携帯電話+Javaから浸透していくのかもしれない。
 何度も果敢に流通を変えようとした任天堂は、いつかノンパッケージ商品で爆発する日が来ると睨んでいる。

 そこで結論。

それでも時代はノンパッケージに向かっている

追記 やはり未来はここにあった

 任天堂はゲームキューブで一時なりを潜めたものの、WiiとDSiで本格的なダウンロード販売を再開する(あえて再開と書きたい)
 ニンテンドーパワーでは店舗にあった書き換えシステムが、本体+インターネット(Wi-Fi)環境という家庭の機器へと変わっているのが大きな違いだ。
 DSについてはダウンロード販売の前に、店舗でのWi-Fiによる体験版や追加データダウンロードサービスを行うという前段階を周到に踏んでの、満を持した展開となっている。

 そして2013年現在、タイトルによってはパッケージ版とダウンロード版の売り上げが拮抗しているような状況が生まれている。
 また、ダウンロード専売の新作タイトルも増えてきているし、他社プラットフォームも含んだ過去の商品をエミュレータ環境で動かすという方法で、各社の資産を活かす事も行われている。
 インターネットが十分に普及してきた事と、ケータイアプリや音楽ダウンロードのようなデータ購入が一般化してきた事などの、周辺の状況の変化が大きい。
 まだ、ゲーム本体以外での課金のシステムなど、個々の問題が熟れている状況ではないが、もうノンパッケージ化自体を押しとどめる要素はない。
 今コンビニに行くと、任天堂・ソニー・Apple、その他ケータイ系のプリペイドカードが店舗の一角を占領して売られている。

追記

 もう読者に「ゲームのダウンロード販売って普通になったよね」と言っても、普通じゃなかった昔を思い出せない、ぐらい普及している。
 マニュアルに関しても、パッケージ版が最初から紙のマニュアルをほぼ無くしてソフトウェアマニュアルを充実させる事で、ダウンロード版との差異を最小限にしている。
 任天堂がニンテンドウパワーを開始した時期は遅かったし、それ自体は失敗だったかもしれないが、現在の状況を見れば「早くから手をつけていた」わけだし「ダウンロード販売は大成功している」とも言える。

 ただ、インタフェースの悪さについては流石にロッピーより数段マシとはいえ、任天堂もソニーも改善の余地が大きいUIだ。
 Google や Apple にしても抜群というわけでもないが、任天堂やソニーよりずっと使い勝手が良い。

 MSは…使った事ないんだよね。