FlashMXレビュー(総括)

レビューの方針

 Flashは多く普及していることからも分るように、いいところは非常に大きく、当然私もその辺りに魅力を感じて使っている訳だが、このレビューでは一切褒めない。
 逆に、使ってみると、つっこみどころ満載なので、これから数回にわたってつっこみまくる事にする。

 ActionScriptの仕様やバグについては極力つっこまない方針で行きたい。
 その辺に問題無い訳ではなくて、非常に問題が多い。
 スクリプトは過去の仕様を引きずって混沌とした状態になっている。
 アプリケーションはアホみたいに異常終了する。特に、アプリケーション終了時、キーボードショートカットの変更時。
 しかし、その辺りに手をつけると、大変なレポートになってしまうので、割愛。
 で、何を問題にするかとユーザーインタフェースを中心に取り上げたい。

 それから、全てFlashMXのMac OS X版についてのつっこみである事も言っておく。
 Windowsは、まぁ…OS自体からアレだし。

フォーカスの分りにくさ

 まず、問題なのがフォーカスの移動が不鮮明で、現在どこを編集しているかがはっきりしていないこと。

 例えば、ポインタの変化が、ポイントしている場所の変化やキーボードの状態に追従できていないこと。
 特にタイムラインの左側、レイヤーの部分でがひどい。区切り線の移動ポインタのまま、レイヤーがドラッグできる事も。
 Crlキーを押した時の、コンテクストメニューを表すポインタへの変更も、されたりされなかったり、変更されていてもちらついたりと散々。

 次に、GUI部品に対する操作がすぐに反映されなかったり、変更したにもかかわらず前に選択していた部品にフォーカスが残ったりすること。
 これはフラグ管理がずさんなのが原因と類推できる。
 例えば、選択可能なはずなのに選択できないボタンに良く遭遇する。パネルを閉じて開くとか、タイムラインやステージ上のアイテムを選択し直すとかすると、選択できるようになったりする。
 特にプロパティインスペクタにインスタンス名を入力した時点では確定されず、一旦パネルを閉じるとか、他のオブジェクトを選択するとかしないと値が設定されないのは、かなり深刻なバグと言っても構わないと思う。Return(かTab)を入力した時は確定して欲しい。

モード分けの無さ

 これも、フォーカスの分りにくさとも重なるのだが、1flaファイルに付き1ウインドウで、他は全てパネルになっていることが問題。
 このため、前面に編集パネルがあっても、裏のウインドウがフォーカスされていると言う状況が発生する。
 ちなみにここで言うパネルとは、常にウインドウの前に表示され、ウインドウの編集を補佐するツールボタンなどを置いておくもの。通常それ自身は編集対象にならない。常に浮いていることからフローティングパネルと言ったりもする。

 現在は、タイムライン・ステージ・アクション・実行・ライブラリ(ムービーエクスプローラ)のそれぞれに必要なメニューが分散しているため、メニュー項目を探すのが困難。
 キーボードショートカットの割り振りも、重なりを避けるために奇妙なものが増えている。
 それに、パネルのほとんどは、ステージ関連のもので、他の事をしている時には邪魔な限り。

 これらの不具合を解消するには、状況に応じたモードの切替えが必要だろう。
 具体的には、各状態用にウインドウを用意し、メニューとパネルを前面のウインドウに合わせて切り換えた方がいい。もう別のアプリケーションであると思える位すっぱりと。というか、アクションと実行は本当に別アプリケーションでも構わない。

 FlashMXが出た時点では無かったので、しょうがないっちゃーしょうがないんだが、ウインドウじゃないので、エクスポゼでアプリケーションのウインドウを並べる機能を使っても、何のメリットも無い。ステージ(とタイムライン)しか表示されません。…だから素直にウインドウ使おうやマクロメディアさんよー。

OSのインタフェースとの相違

 カラム表示のとき、カラムの順番の入れ替えや、大きさの変更ができない。又は、変更すると操作に不具合が出る。
 スプリッタをダブルクリックしても、一気に閉じたり開いたりする事がまず無い。
 当たり前にできると思っている事ができないのは、大きなストレスとなる。

 パネルをくっつけたり離したりって使い方が、Macっぽくない。Winっぽいかといわれるとその辺も微妙な気もするが。
 パネルをくっつけるのではなくて、パネルを独立させたまま整列させるのがMac的流儀だ。
 大体、くっつけるにしてもタブにして重ねるとかしないと、占有面積はほとんど減らないから意味ない。どーして、こんな意味無しインタフェースにつき合わなきゃならんのじゃ。

 ダイアログやパネルで、詳しい設定を行うためにパネルを展開するインタフェースは▼ボタンに統一し、左下に置くのを基本に。開いた時にボタンが下に移動したりしてはだめ。開いてすぐ閉じる時に、いちいちポインタを動かさなきゃいけない。…あのー、いちいち場所を動かす方が作るの面倒だと思うんですけど、なんで面倒な事してまで駄目なインタフェースにしたいの?こんなアホなインタフェースデザイナーに金払ってるんじゃお先真っ黒メディアよ、ホント。てかインタフェースデザイナーじゃなくて、プログラマがインタフェース作ってるでしょ。

 Macでは、キャンセルボタンは左、OK(決定)ボタンは右、そしてウインドウの下に配置を基本とする。
 設定パネルで、OKボタンが右上にあることが多いのだが、すげーWIN臭い。
 いやなんつーか、FlashMXを作った人、Mac使ったことありますか?

 タイトルバーのプロクシーアイコンが、うまく動作しない。
 Cmd+クリックで、ファイルの上層のフォルダが開けるはずなんだが、上手くいったりいかなかったり。
 少なくとも、ファイル名の部分では動作しないようだ。これは標準的な動作と異なる。

 OSに合わせるだけが良いとは思わないが、相当なメリットが無いとOSの標準と異なる操作を導入してはいけない。
 ましてや、メリットどころか悪くなるなんて、言語道断。

統一感の無さ

 先ほどの[OK]ボタンの話もそうだが、インタフェース作る時に、ガイドラインを作っていないようだ。

 階層(ツリー)構造が出るものって、レイヤーとアクションの左側とライブラリ、キーボードショートカットの変更、ムービーエクスプローラーがあるんだが、統一感ねぇー。全部同じようなデザインにしなさいよ。いちいち違う操作覚えなきゃいけないじゃないの。項目を展開するのに三角クリックだったりフォルダのダブルクリックだったりするのは面倒。
 フォルダのダブルクリックは[フォルダの展開]ではなく、[フォルダを開く]の意味で使われるべき。つまり、本来の役割としては、もう一つライブラリが開かなきゃいけない。
 その辺りも含めて、階層構造を表示するツールは、もう少しFinderに似せてください。
 Finderに似てると使い方も想像しやすくなるし、よく分かんないから使うの止めとこう、なんてな躊躇も無くなる。

 ヘルプボタンは[?]と[ヘルプ]の二種類を使わず、[?]に統一するべし。

不要な機能が多すぎる

 細かい機能が設定で選択できるようにしてあるが、多くはデフォルト以外は使い物にならないような不具合が含まれている。
 メニューにも似たような機能が多すぎる。
 また、似たような(もしくは全く同じ)機能が、あちこちのパネルに分散している。

 一見、親切に見えるが、提供する機能に自信がないから、ユーザーに選択権を渡して、お茶を濁しているにすぎない。
 良くできた機能というのは、ユーザーに選択の余地を残さない位よくできているもんだ。だいたい最終的には、ずっと機能の選択に時間もかけ頭脳も資金もつぎ込むことができるメーカーに比べて、単なる1ユーザーの方が正しい選択をする訳はないのだ。
 良くできた機能を沢山用意するくらいなら、そこそこの機能を一つ用意してくれた方が迷わなくていい。ユーザーに機能を選択すると言う、面倒な工程を押し付けないでくれ。
 沢山の機能があるのは、一見頑張っているように思えるが、実のところ必要な機能を取捨選択するという、デザインで一番重要な工程をすっ飛ばした、という手抜きだ。

未整理

 前に使ったメニューをまた使おうとしたのだが、いつまでたっても探し出せないって事が多い。
 これは、メニューが全く整理されていない事から来る。

 パネルも近い機能のものはまとめないと、パネルの数が多すぎて、何がなんだか分らない状態になっている。

 多くの場面で、特殊な操作がデフォルトで、多く使われる操作がオプションとなっている。例えば、[編集]-[同じ位置にペースト]しかなくても、困ることはないと思うのだが、ステージの左上にペーストされるという、いつ使えばいいのか甚だ疑問な項目がCmd+Vという超重要なショートカットキーを占有している。困ったことにこのショートカットは変更不可能。

感覚のずれ

 多くの場面で、こうなるだろうと思った事が、その通りに起こらない。

 1回の操作が1回のアンドゥで戻らない事が多い。内部的にはいくつかの操作の組み合わせなのかもしれないけれど、こっちはそんな事知ったこっちゃ無いので、感覚にずれが出て気持ち悪く、操作感が良くない。便利に利用しようにも、内部的な処理の順番が分ってないと役に立たないので、べつに便利でもない。
 例えば、フレームを移動して上書きをする場合、内部的には何やっているか知らないが、ユーザーとしてはドラッグ&ドロップの1アクションである。でもアンドゥして元に戻るには2回必要。

 ショートカットキーでパネルを開いたり閉じたりすると、ちゃんと働かないことがままある。どーも開いているか閉じているかのフラグがきちんと管理されてないようだ。
 特に、パネル群が複数になった時の動作が悲惨。全部のパネルをドッキングさせているとそれなり…かな?
 いやなんつーか、テキトーな作りにも程があります。

 ダブルクリック判定が粗い。
 例えば、ライブラリのフォルダの内容を展開しようとしてダブルクリック、勢い余ってトリプルクリックしたとする。このときトリプルクリックは、ダブルクリック2回と判定されてしまう。トリプルクリックに機能を割り当てていないのならば、トリプルでもダブルクリックと判定するべきでしょ。
 ダブルクリック2回に判定されてしまうため、ライブラリのフォルダは開いた直後に閉じる事となる。

ということで

 大体この辺りに書いた事を基本に、次回から場面毎の問題を丁寧に取り上げてみる。

 今日はここまで。


2004-03-12