AppleScript StudioはAppleScriptがAppleScriptのままMacのアプリケーションを使えるように作ろうとして、しばらく開発してみて「よく考えたら、そんな労力を割く余裕はなかった、てゆーかまともにこれをサポートするのは辛すぎる」と気づいたプロジェクトだったと言えます。
気づいてすぐ反省すればいいものの、「うまくやれてるふりして放置した挙句頓挫する」というAppleのお家芸を披露してくれちゃいました。
Appleは理想的な環境を作ろうとして、実際は作れっこない砂のお城を詰んでは崩すということを良くやります。
理想的なことを語るもんだから、最初は開発者もときめいて「Appleさんならやってくれる!!」とか興奮しちゃうわけですけど、まぁ無理なもんは無理ですよね(注1)
AppleScriptObjCの場合、とにかく最小の労力でAppleScriptからOS X APIを使える方法を用意して、AppleScriptとして仕様を整えるとかしない、という割り切りで作られています。
むしろ、上記の特に:区切りメソッドのように、APIのアクセス方法はObjective-C記法に近づけていて、AppleScript的には少々異様です(注2)
その方が、OS X APIとAppleScriptでの書き方の2種類を覚える必要がないから、Objective-CとAppleScriptを両方使いたい人にとっても、今はAppleScriptだけ使っているけどObjective-C(やSwift)も使いたい、と思っている人にとっては楽という目算でしょう。
実際、個人的にはもちろんAppleという大会社であっても、二種類のアクセス方法を管理(テスト)するのは困難であった、ということです。
とはいえ今のところ、プレーンなままでは解決できない(あるいは解決策が冗長にすぎる)問題も多いようで、AppleScriptからはうまくアクセスできないAPIも多く存在しているようです。
ASOCはOS X10.6から存在しているのに、イマイチこなれていない感は否めません。
現状は、そのへんを吸収する拡張機能であるASObjCExtras.frameworkを追加しておく方が無難なようです。
Objective-CのオブジェクトとAppleScriptオブジェクト間の変換メソッドなど、便利な機能が豊富に用意されています(注3)
ASObjCExtrasでダウンロードできます。
ダウンロードページのあるMac OS X Automationは準オフィシャルなサイトなので、まずまず信頼していいでしょう。いやむしろ何かとフットワークの鈍いApple本体より信頼できるかもしれません。
日本語では、AS Hole(AppleScriptの穴) By Piyomaru Software » ASObjCExtras.frameworkで、かなり詳しく解説されています。
MacはObject Pascal→C→C++→Objective-C→Swiftと言語を渡り歩き、API、CPU、主な開発環境の全てにおいて、激しい変化の荒波を越えてきています。
そんなこともあってAppleの技術者は少々仕様が混沌としても気にしないし、実際Macアプリ開発者もその混沌を乗り越えているんで、割とみんな慣れちゃうもんだったりしますが…私は大抵挫折しています(笑)
荒れ狂う環境の中、AppleScriptは20年以上生き残っているんですから、Mac用開発言語としては一番の老舗と言え、Macの延べ開発者数としてはAppleScripterが一番多いかもしれませんね。
AppleScriptObjCとは直接関係ない感想になっちゃいましたが、ASOC自体はアプリケーションの制御自体を目的とするアプリケーションの開発には、なかなか便利そうです。
display dialog程度のインタフェースではなく、いくつかチェックボックスとかプルダウンメニューとかつけたいな、って感じのものを作るにはいい感じに思えます。
ここまでObjective-Cっぽくなってくると、アプリケーションの制御以外が目的なら、直接Objective-Cで書いた方が早い(速い)でしょうね。
Objective-Cが@とか[]がやたら出てきて気持ち悪いという人も、Swiftという選択肢が出てきましたしね。