リアル麻雀アドベンチャー「海へ」

対応機種・周辺機器
サターン
ジャンル
恋愛アドベンチャー
著作・制作
(c)セタ 1998

基本情報

 セタの人気シリーズ「スーパーリアル麻雀」のVとVIの7人のキャラクタを中心に、恋愛アドベンチャーとして再構成したソフト。
 一応7のキャラクタも、攻略対象ではないが顔出しはある。
 ときメモ以来加熱するギャルゲー時代に、スーパーリアル麻雀ファンの要求に応えたナイス企画といえよう。

ストーリー

 夏の1か月、夏の観光地に様々な理由で集まったヒロインたちと同じ宿に泊まり、「化石グランプリ」に参加して化石を掘りまくり、そして麻雀を離れた日常のヒロインたちとの恋。
 …えーと、突っ込みは皆様に任せます。
 さらにもう一つ言うと、このゲーム「全年齢対応」。
 脱衣麻雀から、脱衣と麻雀を取って化石を加えたこのゲームは…化石ゲーム?!

 シナリオは手塚一郎氏で、SCE/マトリックス 「アランドラ」の直後か平行でシナリオを書いていたと思うのだが、「海へ」はえらくハッチャケた愉快で奇想天外なシナリオになっている。
 賛否あるだろうが「画面に映ってないけど」とか、システムと絡めたお遊び台詞が多く、わりと面白い。

 ただ、台詞を書き過ぎな上に、「……。」を使い過ぎで、無駄にボタンを押させる。
 それに全編に「アベック」とか「ムフフな関係」とか、当時としても古くさい表現が目立つし、イマイチ主人公やヒロインたちに共感できない事が多い。
 とは言え、キャラクタは魅力的に描けてはいる。

グラフィック

 キャラクタデザインがスーパーリアル麻雀シリーズ本編の田中良氏ではないのは、大きなマイナスポイントだ。
 P's CLUB(スーパーリアル麻雀ファンクラブ)に入会しているようなコアなファンならば、逆に色々な人の描いたキャラクタに馴れているので、問題ないかもしれないが、一般にはパチモンな雰囲気は否めない。
 単体としてみると、このキャラクタデザインは、なんちゅーか普通のアニメ絵です。

 画面構成は、典型的アドベンチャーゲームで、背景+バストアップキャラが何人かに、下部に台詞が表示されるというもの。
 表情が分かりやすいよう頭身が低い(頭が大きい)キャラを使ったのだろうが、頑張ってハイレゾモードで絵が描けなかったもんかなぁ。ゲーム中のキャラが「高解像度ならなぁ」みたいな事を言っているのが自虐的だ。
 かなり多くの台詞に音声がついているが、音声は重要な台詞にだけ使い、容量をグラフィックに回してほしかった。システム的に、ほとんどの台詞は飛ばすことになるのだから。

 問題は、キャラクタの顔より、色の選択や服が今ひとつなことだ。リアル麻雀シリーズの尋常でないこだわりに対して、服の質感の差も無く、全体にリアリティに欠ける。
 ただ、割とこまめに女の子の服が変わるのは勿論、着せ替えイベントのようなものもあり、その点では楽しめる。
 一画面に収まらない画像は、方向キーでスクロール出来るようになってたりして、ギャルゲー的にちゃんとしてる。

システム

 月曜から金曜まで化石を掘り、土日にヒロインを追いかけ回す。
 この2つのモード、ほとんど完全にゲーム的繋がりはない。いやもうびっくりするほど別ゲーム。意味分からん、企画の露崎氏の趣味だけで化石をねじ込んだとしか思えん。
 ちなみに、掘り出した化石を組み合わせて役を作る麻雀的なゲームは、それなりに楽しい。
 てか、麻雀にしろよ麻雀に。麻雀好きの女の子と同じ旅館にひと月も泊まっておきながら、一度も雀卓囲まないのかよー!!化石なんか掘ってる場合かオレ!!!!

 朝昼夕の3つの時間帯毎にヒロインは移動する。シナリオに変化があっても、常に同じ時間帯の同じ場所に同じ人物がいるようになっている。このためまずは、ヒロインのスケジュールを全てチェックする事が、クリアまでの第一段階になる。
 女の子のいる場所にはマークがつく親切設計なので、居場所探しは難しくない。さらにその上で、マークのない場所にも仕掛けがあるので、ヒロインの行動をチェックした後のプレイでも、探索に飽きない作りとなっている。

 ほぼ、そのスケジュールに沿って、ストーカーのように追いかけ回せばシナリオは進行するが、一部そうでない部分もある。
 フラグ管理がとてつもなく大変だったと思うが、割とウマく処理されていて、会った事も無いのに突然知り合いになってたりするような、基本的なミスは無い。細かい部分で多少ミスはあるにしても、かなり頑張って自然に話を進めている、恐ろしいシナリオ量と緻密なフラグ管理だ。
 スーパーエンドという親密度が最高値になると見れるエンディングも用意されているそうだが、攻略本無しで見るのは、極めて困難。通常のハッピーエンドも含めて、親密度のハードルは落とした方が、余裕あるプレイが出来てよかったかと思う。

 選択肢入力のタイミングによる分岐もあり、セガ「サクラ大戦」のLISPの簡易版という感じのシステムもあるが、これは判定のタイミングが早すぎる。文字を表示して一拍置いてから入力を受け付ける位で丁度いいのに、事前に選択肢を知らないと選べない位早い。

 マニュアルを軽視しがちな昨今だが、ヒロインのプロフィール等、適切なヒントがあるのに感心。

 全キャラクタのハッピーエンドをみた後は、エキストラシナリオ用意するとか、既にクリアしたキャラクタは、少しずつシナリオが変わったりして、再プレイの意欲を落とさない工夫もある。
 一度見たシーンをばんばん飛ばせば、1プレイ2時間ほどという事もあり、繰り返しが苦痛でない。
 ただ多くのプレイヤーは、親密度が下がる行動をチェックして、保存した記録に戻ってやり直し、なんて事をやると思うのだが、ロード機能がタイトル画面にしかないので面倒。
 この際、チュンソフト「」のように、時間を戻すことができるシステムにしちゃっても良かったかと思う。

 ミニゲームが幾つかあるが、さほど出来も良くない。本編と関わるので化石掘りよりマシだが、主要なものでもないので、この際無い方がスッキリしてよかったろう。
 一番無い方がスッキリするのは、「リアル麻雀アドベンチャー」というタイトル部分だったりするのが、根本的な本作の痛さだ。

 色物に見えて、基本的な部分が意外にしっかり作られていて遊べるゲームになっている。やはり、ハード末期に出るゲームは侮れない。

 そこで結論。

「狙いを外しているが豪速球、意外に傑作だ」


2005-11-22