クロス探偵物語

ジャケット
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対応機種・周辺機器
プレイステーション CD-ROM 2 + 1枚組
ジャンル
推理アドベンチャーゲーム
著作・制作
(c)Work Jam 1999

 「ゼロヨンチャンプ」シリーズの神長豊が設立したワークジャムで、自ら企画/脚本/監督を行った意欲作。
 脅威の速読み「マッハシーク」を搭載し、サターン版の前後編+ドラマCDの豪華ボリュームで送る、推理アドベンチャー。

 ピチカート・ファイヴの主題歌で始まる当たり、なんともオシャレ。
 シナリオは、テンポの良い軽いノリで進むが、引き締めるところでは引き締める、緩急のあるものとなっている。
 玉置一平の青年漫画系の絵は、嫌みの無い上質のものであるが、多少地味かもしれない。
 実際の生活では当たり前のことではあるのだが、登場人物が毎日服を替えているのに感心した、ちゃんとそれぞれのキャラクターの服の好みも分かる。

「マッハシーク」は、サターンだから速いんだろうと思っていたら、PSでも全く読み込みストレスが無い。
 読み込みが速いと言うより、要は先読みしているわけである。そのせいでフラグが立った時に読み込みが発生し、読み込み音でフラグが立ったことがばれるんだが、まぁそこはご愛嬌。
 音声がかなり多く使われているが、バンバン飛ばしても、もたつきが無い。
 一応言っておくと、声優は草尾毅、横山智佐という、それなりの人を揃えているので、飛ばしたくなる演技というわけではない。

 基本的なシステムは、非常にオーソドックスなコマンド選択+ポインタ方式で、3D移動シーンが挟まれている。
 選択しているコマンドが太字になるだけなので見にくいとか、画面上に右にあるものがコマンドの配置としては左にあるなど、疑問を感じる部分もあるが、ポインタの移動速度も丁度良く、おおむね操作性は良好。
 何しろ、読み込みストレスが皆無であるところが、操作性の向上に大きく貢献している。

 推理ものは、コマンド選択式になって「コマンド総当たり」という解法が一般的になってしまったところがあるが、本作は要所に文字入力シーンなどの、事実上総当たりでは解決不可能な部分を挟むことにより、プレイヤーがきちんと推理し確信を持って行動する必要性を生み出している。
 文字入力シーンも、少しの答えの揺らぎは許すような設計になっているので、言葉探しと言う推理の本質と異なる部分でもたつくことは少ない。たとえば「でんち」でも「かんでんち」「あるかりでんち」でも正解、と言う感じだ(ちなみに、この答えを入力する場面は無い)

 それなりに歯ごたえがある謎があるので、ちょっとつまずくこともあるのだが、説明書に書いてある「平均終了時間」をこえない限り、「やってやろう」という気が起きる。
 おそらくこの「平均終了時間」は、実際は平均は取っておらず、制作者の都合でちょうどいいぐらいのものを設定したものと思われる。非常にうまい仕掛けだ(ここでばらしちゃうと仕掛けにならんけど、あまりに感心したもんで、つい紹介)

 ひたすらボタンを押してシナリオを読んでいる時間が多いのだが、キャラクターひいては台詞の作りがうまいため、退屈しない。
 それだけを取ると首を傾げる長広舌も、全体としてはゲームの質を高めていると言えるだろう。ひたすら話を聞くだけの4話は、さすがにどうかと思う。CDにしてつけてるんだから、「4話はドラマCDを聞いてね」でいいような気すらする。
 逆に6話は3Dダンジョン中心で、シナリオは少なめ。
 という感じで全7話は、システム的にもシナリオ的にも、バラエティに富んだ内容となっている。

 フラグと言えば、フラグ管理に一部失敗しているところがあり、まだ発生していない事件の情報が突然出たりする部分があったのが残念。大いに混乱した。
 主人公の黒須剣がプレイヤーを置いてけぼりにして突っ走る部分もあるのが、キャラクターの表現としては正解のようでもあり、前述の「推理し確信して行動する」ゲームと矛盾して間違いのようでもあり。

 このゲームの評価が高かったこともあり、ワークジャムは後に「探偵 神宮寺三郎」シリーズの製作を行うことになる。
 神宮寺三郎シリーズもいいのだが、この「クロス探偵物語」の続編も期待したい。

 そこで結論。

「傑作です、ちゃんと推理できます」

2003-10-09